2015年06月23日

内分泌検査|検体検査(血液検査)

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、内分泌検査について解説します。

〈目次〉

 

内分泌検査とはどんな検査か

内分泌検査とは血中のホルモンを測定して内分泌臓器の異常をチェックする検査である。内分泌疾患はホルモン欠乏症と、ホルモン過剰症をきたす病態に大別される。

ホルモン分泌は主にフィードバックシステムにより調節され、生体の恒常性維持を果たしている(図1)。主な内分泌腺とホルモンは表1に示したものがある。

図1下垂体-内分泌腺系のネガティブフィードバック機構

下垂体-内分泌腺系のネガティブフィードバック機構

表1内分泌腺と主なホルモン

内分泌腺と主なホルモン

 

これら内分泌腺の機能亢進あるいは低下によりホルモンは分泌が増大したり減少したりする。また、ホルモンが作用する受容体機能の異常により種々の症状を発症する。したがって、ホルモンの分泌や制御の異常を明らかにするため、ホルモン濃度を測定したり負荷試験を行い、病態の詳細を解明する。

 

内分泌検査の目的

内分泌腺機能亢進症の診断は、血中ホルモンの基礎値が上昇していることと、そのホルモン分泌を促す因子が低下していることから行われる。

逆に機能低下症では産生ホルモンは低下し、産生促進ホルモンは上昇する。関連ホルモンを定量することにより、検査したい内分泌腺の機能状態を把握することができる。

 

内分泌検査の実際

測定法

血中(尿中)ホルモンは極めて微量にしか存在しないため、検出感度の高い分析法により測定する。

  • 抗原抗体反応を利用した放射性同位元素標識免疫測定法(radio imunnoassay;RIA)や酵素標識免疫測定法(enzyme immunoassay;EIA)が用いられている(図2)。
  • RIAは特殊設備や放射性同位元素廃棄方法に問題があるため、近年では標識物質に蛍光物質や化学発光物質を用いる方法が主流になった。

図2標識抗原抗体反応(サンドイッチ法の例)

標識抗原抗体反応

 

甲状腺疾患の内分泌検査

スクリーニングには、甲状腺刺激ホルモン(thyroid releasing hormone;TSH)、遊離サイロキシン(free thyroxine;F-T4)、遊離トリヨードサイロニン(free triiodothyronine;F-T3)、が検
査される。

  • 甲状腺ホルモンにはトリヨードサイロニン(triiodothyronine;T3)とサイロキシン(thyroxine;T4)とがあり、多くは甲状腺ホルモン結合蛋白(thyroxinebinding
    globlin;TBG)に結合している。しかし、組織で活性を示すのは遊離のホルモンであるため、現在は遊離型のT3、T4が測定されている。
  • T3、T4は下垂体前葉からのTSHで調節されているため、同時にTSH濃度を測定する。
  • 原発性甲状腺機能低下症はTSH濃度の上昇、T3、T4の低下により診断される。
  • 自己免疫性の甲状腺破壊(橋本病)の場合には、自己抗体である抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体を測定する。
  • 甲状腺機能亢進症ではTSH濃度が低下、T3、T4は増加する。
  • 甲状腺機能亢進症で頻度が高いのがバセドウ病(グレーブス病)であり、抗TSH受容体抗体が陽性になることが多い。
  • 甲状腺機能亢進症(F-T4が高値)であるにもかかわらずTSHが抑制されていないTSH不適合分泌症候群(The syndrome of inappriate secretion of TSH;SITSH)状態を呈することがある。代表的疾患はRTH、TSH産生腫瘍、TRβ遺伝子異常などがある。
    〈注意〉
    自己抗体や投与薬物の影響で一過性に見かけ上のSITSHのような検査所見が得られることがあるので注意が必要である。
  • 粘液水腫は慢性甲状腺機能低下症が進展して発症する。
  • クレチン病は新生児・乳幼児における甲状腺形成不全による機能低下が原因である。

 

性ホルモン

性腺機能の診断には、各種性ホルモン濃度を測定する。

  • 黄体形成ホルモン(luteinizing hormone;LH)、卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone;FSH)は男子性機能の精巣、女子性機能の卵巣を調節する下垂体ホルモンであり、これら性腺機能障害の診断に用いる。
  • 乳汁分泌刺激ホルモンであるプロラクチン(prolactin;PRL)は妊娠、産褥期に血中濃度が高くなるが、妊娠、産褥期以外に高値となる場合は異常である。
  • PRLの分泌が過剰になると、高率に性腺機能低下症が起こる。
  • 性ステロイドホルモンには、精巣で産生されるテストステロンと、卵巣から分泌され、エストロゲンの一種であるエストラジオールがある。
    また、卵巣および胎盤で産生されるプロゲステロンは、卵巣、胎盤機能の指標となる。
  • プロゲステロンの主要尿中代謝産物であるプレグナンジオールは、プロゲステロン産生と関連する。

 

副腎皮質の内分泌検査

副腎皮質の機能異常はコルチゾール、アルドステロンを測定して診断する。

  • コルチゾールは副腎皮質から分泌される糖質コルチコイドの主要ホルモンであり、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone;ACTH)によって分泌が調節されている。コルチゾールは糖代謝、脂質代謝、蛋白質代謝、電解質代謝などに関与し、生命維持に不可欠である。
    〈注意〉コルチゾール濃度は日内変動が大きく、健常者では、早朝に10~15 μg/dLのピーク値を示し、夕方は朝の値の約1 / 2となり、深夜には2 μg/dL以下の最低値になる。
  • クッシング症候群は、ACTH産生過剰(下垂体腺腫)による慢性コルチゾール過剰状態を示す。
  • クッシング症候群は午後9時の血中コルチゾールの高値を確認したあと、午後11時にデキサメタゾンを投与して、翌朝に血中コルチゾールの高値が持続すれば診断される。
  • コルチゾールは肝、腎で代謝され、グルクロン酸抱合、硫酸塩として尿中に排泄される。
  • 17 -Hydroxycorticosteroids(OHCS)はコルチゾール分泌量の20〜30%を占め、この測定は、直接的には副腎皮質機能を、間接的にはACTHの作用を知ることができる。
  • 尿中17 -Ketosteroids(KS)はコルチゾール由来は約20%で、大部分は副腎および性腺からのアンドロゲンに由来する。
  • アルドステロンは最も重要な鉱質コルチコイドであり、遠位尿細管に作用してNa+、OH−を再吸収し、K+とH+を排泄させる。
  • アルドステロンの分泌調節は、レニン-アンジオテンシン系とACTHにより行われ、血漿レニン活性と合わせて測定することにより種々の疾患を鑑別する。
  • アジソン病は原発性慢性副腎皮質機能低下症で、結核や自己免疫が原因となる。

 

副腎髄質ホルモンの分泌異常

副腎髄質機能障害はカテコールアミンを測定して診断する。

  • カテコールアミンにはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンが含まれる。
  • 褐色細胞腫ではカテコールアミンが多量に産生・分泌され、尿中および血中カテコールアミンが異常高値となる。
  • 神経芽腫は小児に好発するカテコールアミン産生性の腫瘍であり、カテコールアミンの分解産物である尿中バニリルマンデル酸(vanilly lmandelic acid;VMA)が測定される。

 

その他

ホルモンの分泌や制御の異常を明らかにするためには、負荷試験がしばしば行われる。

  • 経口的糖負荷試験糖尿病の診断に用いるが、先端巨大症の成長ホルモン(growth hormone;GH)反応検査にも使われる。
  • TRH負荷試験:健常者では、チロトロピン放出ホルモン(thirotropin releasing hormone;TRH)はすみやかにTSHとPRLの分泌を促進するため、下垂体TSH分泌細胞の障害やPRL分泌腫瘍の診断に役立つ。
  • GnRH負荷試験:ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotoropin-releasing hormone;GnRH)はLHの分泌を促進し、下垂体ゴナドトロピン分泌細胞の機能を調べるために行われる。
  • ACTH負荷試験:原発性副腎不全であるアジソン病では、ACTHに対するコルチゾールの反応が低い。
  • デキサメタゾン抑制試験:健常者では、コルチゾールの類似物であるデキサメタゾンは、下垂体におけるACTHの合成を抑制し、その結果、コルチゾールの産生も抑制されるので、クッシング症候群の診断に用いられる。

 

内分泌検査の注意点

  • ホルモンの分泌や合成は種々の要因に影響され、ストレス、睡眠、血圧、性周期、妊娠、加齢、体位、水分・塩分摂取などの影響を受ける。したがって、ホルモン濃度測定にあたっての注意としては、各種ホルモン分泌への影響を十分考慮して行う必要がある。
  • 視床下部ペプチドや神経伝達物質は、刺激性あるいは抑制性にホルモン合成や放出に影響する。
  • ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)など多くのホルモンは拍動性に分泌される。
  • ACTH、コルチゾール、プロラクチン、TSH、成長ホルモン(GH)などは日内変動を示す。
  • ストレスの結果、ACTH、GH、プロラクチンなどは合成・分泌が増加する。
  • 他のホルモンや薬物が正常の内分泌反応を修飾することがある。
  • これらの結果、血中ホルモン濃度は変動するため、血中ホルモン濃度の測定が1回だけだと正しい判断ができないこともあり得る。
  • ホルモンに対する自己抗体などが存在すると、検査データが臨床症状と異なる場合がある。

 

内分泌検査に関するQ&A

Q1.ホルモンとはどんなものですか?

A.ホルモンは特定の臓器で産生される物質(ステロイドやペプチド)で、主として血液中に分泌されて、特定の標的臓器に存在する受容体に結合して活動性を調節します。ホルモンのバランスが崩れると生体の恒常性が保たれなくなり、様々な症状が現れます。

 

Q2.どのようなときに検査をするのですか?

A.内分泌疾患は病気が進行すると特徴的な病態を示しますので、疑われる特定のホルモン検査を行います。しかし、発症の初期の「疲れやすい」、「体がだるい」などの症状で病院を受診されます。このようなときには内分泌疾患を疑い、体液中のホルモンを測定することが大切です。

 

Q3.ホルモンはどのくらいの量があるのですか?

A.ホルモンはとても微量で作用します。血液中ではμ(10-6)、n(10-9)、p(10-12)mol/Lという濃度で存在しています。たとえば、甲状腺ホルモンの血中基準値は、遊離T3では1. 7~3 .7pg/mL、遊離T4では0. 7~1. 5ng/dLです。

※血中基準値 アボットジャパンARCHITECT® CLIA(2STEP)法参考基準値より

 

Q4.微量なホルモンをどのような方法で測定しているのですか?

A.以前は放射性同位元素(RI)である125Ⅰ、131Ⅰなどを標識物質に利用した免疫測定法(ラジオイムノアッセイ:RIA)が主流でしたが、1990年代になると、非放射性イムノアッセイとして、蛍光物質や化学発光物質を用いる標識抗原抗体反応が開発され、10-18mol/Lという微量濃度の測定が可能になりました。また、カテコールアミンなどは高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)という方法で測定されます。
抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法が最初に開発されたのはBersonとYalowによるインスリンのRIA法です。

略語

  • ADH:antidiuretic hormone(抗利尿ホルモン
  • ANP:atrial natriuretic peptide(心房性ナトリウム利尿ペプチド)
  • BNP:brain natriuretic peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド
  • CRH:corticotropin-releasing hormone(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)
  • GHRH:growth hormone releasing hormone(成長ホルモン放出ホルモン)
  • hCG:human chorionic gonadotropin(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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