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2017年02月26日

黄疸に関するQ&A

症状に関するQ&A

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

今回は「黄疸」に関するQ&Aです。

岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授

 

黄疸の患者からの訴え

  • 「身体が黄色っぽいといわれました」
  • 「白目が黄色く見えます」

 

黄疸に関連する症状〉

黄疸に関連する症状

 

〈目次〉

 

黄疸って何ですか?

「何となく身体が黄色がかって見える」「白目の部分が黄色に見える」など、皮膚眼球結膜(眼球の白い部分)が黄色に着色している状態を、黄疸(おうだん)といいます。外からは見えませんが、臓器も黄色に着色します。

これは、血液中のビリルビンという物質が増加したために起こる症状です。ビリルビン濃度が異常に高くなると、ビリルビンが組織に沈着します。ビリルビンは黄色の色素なので、皮膚などが黄色に見えるのです。

 

ビリルビンって何?

赤血球は、約120日の寿命を終えると脾臓で破壊されます。この時に赤血球のヘモグロビンのヘムの部分から鉄が取れ、ビリルビンが生成します。

つまり、ビリルビンはヘモグロビンの一部が代謝されてできるわけです。

図1ビリルビンの代謝

ビリルビンの代謝

 

その後ビリルビンはどうなるの?

ビリルビンは、脾臓から血液の流れに乗って肝臓に運ばれ、肝細胞で代謝されます。

図2ビリルビンの排泄

ビリルビンの排泄

肝臓は有害物を排泄する働きを持っています。最初に生じたビリルビンは、「非抱合型(ひほうごうがた)ビリルビン」(間接型ビリルビン)といい、これは人体にとって有害な物質です。

そこで肝臓は、非抱合型(間接型)ビリルビンを身体の外に出すために、グルクロン酸と結合させます。グルクロン酸と結合したビリルビンは、水に溶けやすく毒性の少ない「抱合型ビリルビン」(直接型ビリルビン)に変わります。

この抱合型(直接型)ビリルビンは、肝細胞から分泌される胆汁の中に排泄され、胆嚢、胆管を通って胆汁とともに十二指腸管内に到達します。

その後、腸管内で細菌によって加水分解されてグロクロン酸が外れ、ウロビリノーゲンになり、さらに酸化されてウロビリンとして便とともに出ていきます。便の色は、このウロビリンの色なのです。

 

尿が黄色いのもビリルビンに関係がありますか?

尿が黄色いのもビリルビンに関係があります。

ウロビリノーゲンの一部は、腸管粘膜から再吸収され、門脈を通って再び肝臓に運ばれ、肝細胞に取り込まれます。肝細胞に取り込まれなかったウロビリノーゲンは、その後静脈を通って腎臓に運ばれ、尿中にウロビリンとして排出されます。だから、尿も黄色いのです。

 

どんな時に黄疸が現れるの?

その後ビリルビンはどうなるの?>、<尿が黄色いのもビリルビンに関係がありますか?>で述べたように、赤血球から生じたビリルビンは、便や尿に排泄されるため、血液中の値は一定以下に保たれます。

しかし、この過程のどこかに異常があると、血液中のビリルビンが増加して黄疸が起きます。

主な原因は3つあります。

1つはビリルビンが過剰に作られる時、つまり赤血球の破壊(溶血〔ようけつ〕)が亢進した場合です。これを溶血性黄疸、または肝前性黄疸といいます。

もう1つは、肝臓の処理能力に何らかの障害が起き、ビリルビンをうまく胆汁中に排泄できない場合です。これを肝細胞性黄疸といいます。

さらに、胆汁が十二指腸に排出されるまでのルートである胆道のどこかに通過障害があり、腸管へのビリルビンの排泄が妨げられる場合があげられます。これを閉塞(へいそく)性黄疸といいます。

 

用語解説体質性黄疸

肝細胞のビリルビン処理に関係する酵素が生まれつき欠損しているために発生する黄疸で、多くは家族性に発生します。非抱合型(間接型)ビリルビンの取り込みや肝細胞内での輸送に障害があるGilbert病、抱合型(直接型)ビリルビンの胆汁中への排泄に問題があると考えられているDubin-Johnson症候群などが知られています。

 

どんな時に赤血球の破壊が亢進するの?

赤血球の破壊が亢進する代表的なケースは、溶血性貧血です。

溶血性貧血では、赤血球に異常があるなどの理由で赤血球がどんどん破壊されてビリルビンが生成されます。その結果、グロクロン酸抱合が追いつかず、肝細胞に取り込まれなかったビリルビンが血液中に増加して皮膚や臓器に沈着し、黄疸が起こります。同時に、胆汁中に排泄される抱合型(直接型)ビリルビンの量も増加し、便や尿の色が濃くなります。

新生児黄疸も同じようなメカニズムが関与しています。

赤ちゃんの胎児型ヘモグロビンが、出生後、大人と同じヘモグロビンに変わる過程で赤血球の破壊が起こり、ビリルビンが過剰に産生されます。さらに新生児は、肝臓の処理能力も未熟なため、黄疸が起こります。従って、新生児の黄疸は生理的で、一時的なものだといえます。

しかし、お母さんと赤ちゃんの血液型が合わない(母児血液型不適合)の場合には、お母さんの抗体によって赤ちゃんの赤血球の破壊が生理的な範囲を超えて起こり、大量の非抱合型ビリルビンが生じます。これが大脳基底核の神経細胞に沈着すると、核黄疸を発症します。過去には脳性麻痺の原因になることもありましたが、現在では血漿交換や光線療法によって発症を未然に防ぐことができるようになりました。

 

COLUMN血液脳関門

成人の黄疸では、神経細胞にビリルビンが沈着することはありません。しかし、重症の新生児黄疸では、大脳基底核の神経細胞にビリルビンが沈着する核黄疸を起こす危険があります。

これは、新生児期には、血液脳関門(けつえきのうかんもん)という血液から神経細胞への物質の移動を制限するバリアが未完成であるためです。

脳の血管は、脳表を覆う軟膜とともに脳内に入るため、周囲を軟膜に覆われています。また、軟膜のない部分では神経膠(しんけいこう)細胞の突起が血管の周囲をびっしりと取り囲んでいます。

そのため、ほかの部位の血管に比べ、血液中の物質が組織に簡単には移行しないように、また万が一移行した場合でも神経細胞が直接物質にさらされることのないようになっています。

 

肝臓の処理の障害って、どういうこと?

肝細胞でのビリルビン処理は、①非抱合型(間接型)ビリルビンを肝細胞の中に取り込む、②グルクロン酸と結合させて抱合型(直接型)ビリルビンに変える、③抱合型(直接型)ビリルビンを胆汁中に排泄する—の3つのステップに分けられます。

肝臓に障害がある場合はこの3つすべてが障害されますが、特に余力のない③が最も強い影響を受けるため、抱合型(直接型)ビリルビンを排出できなくなります。

図3肝細胞でのビリルビン処理

肝細胞でのビリルビン処理

肝細胞の障害が進行すると、①や②も障害されて非抱合型(間接型)ビリルビンも増加します。代表的な疾患が急性ウイルス肝炎です。

肝硬変では、肝細胞の障害が進行して代償(だいしょう)能力を超えると、黄疸が現れます。

 

胆道の通過障害でどうして黄疸が起きるの?

胆道のどこかが閉塞すると、胆汁が消化管に出ていかず、血液中に胆汁の抱合型ビリルビンが逆流して黄疸が現れます。ウロビリンが便中に排出されないため、灰白便(かいはくべん)という白っぽい便になります。血液中に逆流した抱合型ビリルビンは、尿中に排出されます。

考えられる疾患としては、胆石、膵癌、胆管癌、先天性胆道閉塞などがあげられます。

 

黄疸の有無はどうやって観察するの?

軽度の黄疸は、全身の皮膚を見ただけでは分からないことが多く、患者自身も気づかないことが少なくありません。そのため、通常黄疸があるかどうかの判断は、眼球結膜を見て行います。

原因疾患によって起こる黄疸以外の症状、貧血の有無、発熱、便や尿の色などもチェックします。

ミカンを食べ過ぎると、掌が黄色くなることがあります。これは柑皮症(かんぴしょう)といって単に取りすぎた橙色の色素が沈着したもので、病気ではありません。

 

黄疸の原因はどうやって判断するの?

黄疸の背後には様々な疾患が潜んでいて、それによって増加するビリルビンのタイプが異なります。

そのため、血液を採取して抱合型ビリルビンと非抱合型ビリルビンの比を調べたり、肝機能検査などのほかの血液検査や、尿検査などを参考にして原因を調べます。また、超音波やX線による画像検査を行って腫瘍や胆石の有無を検査します。症状、既往歴とこれらの検査結果から、総合的に黄疸の原因を判断し、それに応じた治療を行います。

 

黄疸が現れている時のケアは?

特に閉塞性黄疸では、ビリルビンが末端神経を刺激し、多くに皮膚のかゆみが生じます。また、粘膜も傷つきやすくなるため、を切る、皮膚を清潔に保つ、軟膏を塗るといったケアをします。

肝硬変や溶血性黄疸(溶血性貧血)の時は、安静を保つとともに、食事指導が重要になります。

また、閉塞性黄疸の治療では、ドレーンを入れて胆汁を外に出して黄疸を軽減させる、経皮経肝的胆道ドレナージ(PTCD)を行うことがあります。この場合は、ドレーン管理や感染予防などに注意します。

黄疸の中には、母児血液型不適合妊娠によるもののように、発症を予測して適切な対応を取ることによって防止できるものもあります。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

⇒〔症状に関するQ&A一覧〕を見る

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック』 (監修)岡田忍/2016年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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