最終更新日 2023/09/28

肝硬変

肝硬変とは・・・

肝硬変(かんこうへん、cirrhosis)とは、肝臓が炎症を繰り返し、線維組織(コラーゲン)が増える病気である。それにより、肝臓の機能が低下し、さまざまな症状や合併症が現れる。

 

【症状】
肝硬変は肝臓の機能の程度により、肝臓の機能が保たれている「代償期」と、肝機能の低下が進んだ「非代償期」とに分けられる。

 

代償期には臨床症状がほとんどない。しかし、非代償期になると肝性脳症、黄疸腹水、浮腫、出血傾向など肝不全に起因するさまざまな症状が出現する。
身体所見としては、黄疸、クモ状血管腫、女性化乳房、脾腫、手掌紅斑などがみられる。

 

肝硬変の重症度の判定にはChild-Pugh分類(表1)を用いる。5項目の合計点数から、3段階に分類する。

 

表1Child-Pugh分類

Child-Pugh分類

グレードA(軽度):5~6点(代償性)
グレードB(中等度):7~9点(非代償性)
グレードC(高度):10~15点(非代償性)


【診断・検査】
確定診断のためには肝生検による組織学的診断が必要になるが、侵襲的な検査である。そのため、基本的には血液検査や、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査などの非侵襲的な検査を組み合わせて診断する。

 

(1)血液検査
血液検査では主に以下の項目の評価を行う。
血清ビリルビン:基準値は0.2~1.2mg/dL。黄疸を表す指標で、肝機能の低下が起こると、値が上昇する。
血清アルブミン:基準値は3.8~5.3g/dL。肝障害や栄養状態の指標で、肝硬変の場合は、3.5g/dL以下となる場合が多い。
血小板:肝臓の線維化を表す指標で、10万/μL以下が肝硬変の目安とされている。
凝固能:血液が凝固するまでの時間を測定するPT(プロトロンビン値)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)がある。どちらも、肝機能が低下していると血液が凝固するまでに時間がかかる。
アンモニア:基準値は30~130μg/dL。肝障害があると血液中にアンモニアが貯まる。
肝線維化マーカー:肝臓の線維化の指標としては、M2BPGi(Mac-2 binding protein glycosylation isomer;Mac-2結合タンパク糖鎖修飾異性体)が使用されている。数値が高くなると、肝硬変が疑われる。

 

(2)腹部超音波検査や腹部CT検査、腹部MRI検査
肝臓の外観や門脈血流の評価、腹水の評価を行うために、腹部超音波検査や腹部CT検査、腹部MRI検査を行う。

 

ほかに、必要であれば食道静脈瘤の評価のため上部内視鏡検査を行う場合もある。

 

【治療法】
肝硬変そのものを治療する薬剤はない。そのため治療は肝硬変の原因となる肝疾患の治療や肝硬変に関連する合併症の管理が主となる。具体的には、腹水に対する利尿薬内服、肝性脳症を引き起こす便秘の予防などの対症療法や基礎疾患の治療である。

 

また、重度の肝硬変の場合や合併症が進行した場合は、肝移植を行う場合もある。

 

【原因】
肝炎ウイルス感染(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)
・アルコール性肝硬変
・自己免疫性(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎)
・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
・薬剤性肝障害

 

【予防】
まずは飲酒量を適量にし、運動を行うなど、生活習慣病に対する予防が大切になる。また、B型肝炎ウイルスに対するワクチン接種も大切になる。

 

 

【引用・参考文献】

1)日本消化器病学会・日本肝臓学会.肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版).

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