サルコイドーシス|肉芽腫①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はサルコイドーシスについて解説します。

 

犬塚 学
犬塚皮膚科クリニック院長

 

 

Minimum Essentials

1皮膚のほかに肺、眼、肝臓心臓、神経など複数の臓器に肉芽腫を生じる原因不明の疾患である。

2皮膚症状は、多彩な臨床像を示し組織学的に非乾酪性肉芽腫を呈す特異疹と、結節性紅斑に代表される非特異疹に分けられる。肺、眼、肝臓、心臓、神経などに皮膚外病変を生じる。

3皮膚症状にはステロイド薬の外用や局注が行われる。内臓病変がある場合はステロイド剤の全身投与の適応となる。

4治療により、または自然に軽快することが多く、数ヵ月〜数年以内に寛解することがしばしばある。しかし肺、心臓、中枢神経に病変がある場合は死亡することもある。

 

サルコイドーシスとは

定義・概念

皮膚を含む複数の臓器に肉芽腫を生じる、原因不明の疾患である。

 

原因・病態

この疾患を発症しやすい遺伝傾向をもつ人が、環境中の因子や病原体に接触することをきっかけに細胞性免疫反応を引き起こし、肉芽腫を形成すると考えられている。現在までのところ、サルコイドーシスを引き起こす特定の抗原は同定されていない。

 

また、サルコイドーシス患者は全身性エリテマトーデスや自己免疫性の甲状腺疾患を発症しやすいことが知られているため、外来因子だけでなく自己抗原が発症に関与しているかもしれない。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

サルコイドーシスは多臓器疾患であり、皮膚以外に肺、眼、肝臓、心臓、神経などに病変を生じうる。

 

皮膚症状

皮膚症状は組織学的に、非乾酪性肉芽腫を呈する特異疹とそれ以外の非特異疹に分けられる。

 

乾酪性肉芽腫と非乾酪性肉芽腫

乾酪性肉芽腫は結核の特徴的な病変である。肉芽腫の中心部は壊死を起こしてカッテージチーズ状に見えるため、乾酪壊死とよばれる。一方非乾酪性肉芽腫は、結核の肉芽種と異なり壊死を伴わないため、非乾酪性という。

 

特異疹のもっともよくみられる臨床像は、赤褐色で鱗屑を伴わない丘疹または局面で、顔(特に、口唇、眼瞼)、外傷や瘢痕部位に好発する(図1)。しかし皮疹の色は時にピンク色や紫色を呈するなどさまざまである。

 

図1 顔の赤褐色局面

顔の赤褐色局面


また、鱗屑などの表皮の変化を示さないことが多いものの、時に乾癬様の局面を呈することがあるなどかなり多彩である(図2)。

 

図2 上腕の乾癬様局面

上腕の乾癬様局面

 

さらには口腔内や舌など粘膜に発疹を生じることもある。lupus pernioとよばれる皮疹は、浸潤を触れる紫色がかった丘疹、結節または局面で、おもに鼻、頰、、手に生じる。このタイプの皮疹は難治で瘢痕化することがしばしばあり、肺病変や囊胞性骨病変に伴うことが多い(図3)。

 

図3 顔の瘢痕化した局面

顔の瘢痕化した局面


このほかによくみられる特異疹としては、皮下結節、魚鱗性様皮疹、色素脱失、皮膚潰瘍(図4)、瘢痕性脱毛などがある。

 

図4 下腿の皮膚潰瘍

下腿の皮膚潰瘍

 

非特異疹としてもっともよくみられるのは結節性紅斑である。これは下腿伸側に好発する圧痛を伴う浸潤性紅斑で、発熱、肺門部リンパ節腫脹、ぶどう膜炎、多発関節炎などの急性期症状を伴うことが多い。

 

皮膚外症状

(1)肺
サルコイドーシスの病変が現れる可能性がもっとも高い臓器が肺である。呼吸苦、、胸痛、喘鳴などの症状がなくても、胸部X線で半数以上に両側肺門リンパ節腫脹を認める。肺実質の浸潤影を認めることもある。

 

(2)眼
3分の1の患者にぶどう膜炎、角膜炎、緑内障、涙腺炎などの眼病変を伴う。眼病変があっても無症状のことがあり、放置すれば視力障害をきたす恐れがあるため、サルコイドーシスと診断されたら眼科受診は必須である。

 

(3)その他の臓器
サルコイドーシスの肉芽腫は肝臓、脾臓、骨、筋肉、中枢および末梢神経、心臓を含むあらゆる臓器に生じうる。たとえば顔面神経が侵されればベル(Bell)麻痺が生じうるし、心臓が侵されれば不整脈心不全を起こすことがある。

 

検査

サルコイドーシスの肉芽腫はアンジオテンシン変換酵素(ACE)を産生するので、患者の半数以上で血清ACEレベルが上昇する。しかし、血清ACEレベルのサルコイドーシスの診断に関する感度と特異度はともに低いため、血清ACEレベルのみでサルコイドーシスを診断することはできない。

 

それ以外によくみられる検査値異常には、血沈上昇、白血球(とくにリンパ球)減少、高γ ‐グロブリン血症、高カルシウム血症、ツベルクリン反応の陰性化などがある。

 

胸部X線検査で肺実質に病変が認められない患者でも、その3分の1に呼吸機能検査で異常が認められる。単純X線検査、CT検査に加え、PET検査が内臓病変の検出に有用である。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

サルコイドーシスは自然に軽快することも多いため、すべての患者が治療を要するわけではない。範囲の限られた皮膚症状のみであれば、ステロイド薬の外用や局注が行われる。

 

皮膚症状が広範囲に及ぶ場合や症状のある内臓病変がある場合は、ステロイド薬全身投与の適応となる。

 

合併症とその治療

皮膚外症状の出現に注意する。サルコイドーシスを疑ったら、呼吸器内科、眼科へのコンサルトを行う。

 

治療経過・期間の見通しと予後

サルコイドーシスの肉芽腫性炎症は、治療により、または自然に軽快することが多く、予後は比較的良い。数ヵ月〜数年以内に寛解することがしばしばである。

 

サルコイドーシス患者の死亡原因の4分の3は肺病変であり、残りの死因のほとんどは心臓と中枢神経の病変による。

 

看護の役割

治療における看護

皮膚病変の観察に加えて、眼症状(眼球結膜充血、眼痛、羞明、霧視)、呼吸器症状(呼吸苦、咳、胸痛、喘鳴)、神経症状(頭痛顔面神経麻痺、痙攣)および不整脈の出現に注意する。顔の皮疹に対する心理的ケアも重要である。

 

フォローアップ

ステロイド薬を内服している場合は、それに伴う副作用(易感染性、糖尿病骨粗鬆症、食欲亢進満月様顔貌など)の出現に留意する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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