全身療法とその他の治療法|皮膚科の治療②

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は全身療法とその他の治療法について解説します。

 

五十嵐敦之
NTT東日本関東病院

 

 

Minimum Essentials

1ステロイド内服療法では全身的副作用に注意する。

 

全身療法とは

全身療法に用いる代表的薬剤には以下のようなものがある。

 

ステロイド薬

ステロイド薬は強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を有し、各種疾患に用いられる。

全身性エリテマトーデス皮膚筋炎などの膠原病や天疱瘡、類天疱瘡などの水疱症をはじめとする自己免疫疾患のほか、自家感作性皮膚炎、重症の接触皮膚炎、薬疹などに幅広く用いられる。

 

内服と点滴ないし静注があり、投与量は疾患の重症度により異なる。

投与方法としては、副腎からのステロイドの生理的分泌は朝増えるという生体リズムに合わせ、朝に多く投与するのが基本であるが、等分投与でよいという考えもある。

 

通常のステロイド内服療法で効果不十分の場合、メチルプレドニゾロン1, 000mgを3日間点滴するステロイドパルス療法がある。

 

施行にあたっては消化管出血、精神症状、感染症などに注意する。

 

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は皮膚科では蕁麻疹湿疹・皮膚炎群に用いられることが多いが、後者では外用療法の補助的療法という位置づけとなる。

 

第一世代抗ヒスタミン薬は脂溶性を有するため血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)を通過しやすく、中枢神経の受容体にも結合するため、眠気、倦怠感、めまいなどの中枢神経系副作用がある。また、抗コリン作用のため口渇、粘膜乾燥、尿閉、便秘などの副作用も出やすい。

 

ケトチフェン以降の第二世代抗ヒスタミン薬は受容体選択性が高く、BBB も通過しにくくなっているため、抗コリン作用や眠気などの副作用が少なくなっている。

 

抗菌薬

ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系などさまざまなものがある。

 

抗菌薬は原因菌およびその薬剤感受性、疾患の種類と重症度、患者の年齢、全身状態、合併症などから適切な薬剤とその投与量、投与経路を決定する。菌交代症や耐性菌化を防ぐため、投与期間は必要限度内に留めるべきである。

 

抗真菌薬

内服抗真菌薬としてイトラコナゾール、テルビナフィンが、白癬や角質増殖型足白癬などの難治性疾患に用いられる。

 

イトラコナゾールはカンジダ症にも有用性が高いが、薬物相互作用に注意する。これらの薬剤の使用にあたっては定期的な血液検査が望まれる。

 

抗ウイルス薬

帯状疱疹水痘、単純ヘルペスなどのヘルペスウイルス感染症に対し、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ビダラビンなどの抗ヘルペス薬が用いられる。

 

その他

シクロスポリン

カルシニューリン阻害薬で、乾癬アトピー性皮膚炎に用いられるが、後者では使用期間が最長12週までと制限されている。血圧上昇、腎機能障害、多毛、歯肉肥厚などの副作用に注意する。

 

エトレチナート

乾癬、魚鱗癬群(ぎょりんせんぐん)、掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)、ダリエ(Darier)病、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、毛孔性紅色粃糠(ひこう)疹などに用いられる。表皮細胞に対する増殖抑制・分化誘導作用と、免疫系細胞に対する抗炎症・免疫変調作用を有する。

 

皮膚菲薄化、脱毛、爪囲炎、爪脆弱化、口唇炎、口角炎、鼻腔内乾燥、嗄声、過骨症および骨端の早期閉鎖、関節痛、脂質代謝障害、肝機能障害、催奇形性など種々の副作用がある。

 

ジアフェニルスルホン

元来ハンセン(Hansen)病の治療薬であったが、ジューリング(Duhring)疱疹状皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡など、多くの皮膚疾患での有用性が確かめられている。

 

メトヘモグロビン血症などの血液障害、肝機能障害、重症薬疹などの副作用がある。

 

生物学的製剤

乾癬に用いられる抗TNF-α抗体、抗IL-12/23抗体、抗IL-17抗体のほか、悪性黒色腫に用いられる抗体製剤もあるが高価である。

 

 

目次に戻る

その他の治療法

手術療法

おもに皮膚腫瘍に対し、切除、縫縮術が行われるほか、皮膚欠損創や熱傷に対しては植皮術なども行われる。

 

光線療法

紫外線療法がおもに行われる。長波長紫外線(UVA)を用いたものでは、ソラレンを内服もしくは外用しながら行うPUVA 療法が行われる。

 

最近では、中波長紫外線(UVB)のうち311nmにピークをもつランプを用いたナローバンドUVB療法が広く行われている。さらには高出力のエキシマランプによる治療もある。乾癬、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、皮膚悪性リンパ腫などの治療に用いられる。

 

レーザー療法

メラニン色素をターゲットとしたQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザー、ヘモグロビンをターゲットとした色素レーザーのほか、熱作用により非特異的に組織を破壊する炭酸ガスレーザーなどが用いられている。

 

液体窒素療法

液体窒素にて組織を凍結させ壊死脱落させる治療法で、ウイルス性疣贅や脂漏性角化症、血管拡張性肉芽腫などが対象となる。綿球やスプレーを用いて行う。

 

 

目次に戻る

引用・参考文献

1)Finlay AY et al:“Fingertip unit” in dermatology.Lancet 2:155, 1989
2)大谷道輝:特集/ ジェネリック・ガイド ステロイド外用剤.MB Derma 113:71-74、2006


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

SNSシェア

看護知識トップへ