皮膚生検・手術と創傷管理

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚生検・手術と創傷管理について解説します。

 

深水秀一
浜松医科大学附属病院形成外科

 

 

Minimum Essentials

1皮膚への手術的操作には愛護的操作が必要とされる。そのため、手術器械や縫合用の針や糸は繊細な構造となっている。

2きれいな傷跡を得るためには、縫合手技はもとより、ドレッシングを含めた術後ケアも重要である。

3術後の出血や感染を早期に発見して対処する創傷管理が必要とされる。

 

皮膚への手術的操作

皮膚生検

皮膚病変の診断を目的として組織を採取する手技であり、病変の一部だけを採取する切開生検と、病変全体を切除する切除生検がある。

 

切開生検にはメスの代わりにトレパンとよばれる円筒形の器具がしばしば用いられる(パンチバイオプシー)。切除生検は病変が小さい場合や、腫瘍の最深部までの長さを知りたい場合に用いられる。

 

手術

皮膚に関する手術の対象疾患は、腫瘍、深い熱傷・皮膚潰瘍、炎症(膿瘍・の異常)などである。組織欠損は通常縫縮されるが、欠損が大きい場合は皮弁や遊離植皮によって再建される。

 

 

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手術器械

皮膚生検や手術に用いられる器械を図1に示す。

 

図1 手術器械

a:メスホルダーとb、c:メス刃。

替え刃メスやディスポーザブルメスが頻用される。先端が尖った11番メス(b)か小円形の15番メス(c)が使われる。

メスホルダー

先端が尖った11番メス

小円形の15番メス

d:トレパン。

生検に使用される。

トレパン

e、f:剪刀(せんとう)(ハサミ)。

細いほうから鋭剪刀(直・曲)(眼科用剪刀)、鈍剪刀(直・曲)(形成剪刀)、クーパー剪刀(外科剪刀)などが使われる。

鈍曲剪刀

鋭直剪刀

g、h:鑷子(せっし)(ピンセット)。

組織障害を最小限にするため、アドソン型鑷子(g)など小さめの鑷子(有鉤、無鉤)やフック鑷子(h)が使われる。

アドソン型鑷子

フック鑷子

i:鉗子(かんし)。

出血部位を挟んだり、組織の把持や剝離の目的で用いる。モスキートペアンとよばれる小さめの鈎なしが頻用される。

鉗子

j:縫合糸・針。

通常の皮膚縫合では5-0や6-0といった細いナイロン糸が用いられる。粘膜や皮下および真皮埋没縫合では吸収糸が使用される。針は、皮膚縫合では強彎の角針、粘膜縫合では裂けるのを防ぐため丸針が使われることが多い。

縫合糸・針

k:持針器。

針付き縫合糸を使用することが多く、へガール型持針器が頻用される。

持針器

l、m:採皮用器械(ダーマトーム)。

特殊な器械であるが、フリーハンド型、ドラム型、電動型(l)、または気道型の4種類がある。採皮した皮膚を1.5~6倍の網状に引き伸ばすためメッシュダーマトーム(m)が使われる。

採皮用器械(ダーマトーム)

採皮用器械(ダーマトーム)

 

 

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手術の手順

消毒と局所麻酔

アルコール綿または清拭によって皮膚面の汚れを落としたあと、イソジン®やマスキン®、粘膜の場合は逆性石鹼を用いて術野の消毒を行う。

 

切除範囲を皮膚ペンやピオクタニンでマーキングして、手足の指以外の部位ではアドレナリンを添加した0.5~1%のキシロカイン®で局所麻酔を行う。

 

指趾では血流障害を防止するため、アドレナリンを含まない1%キシロカイン®で伝達麻酔(ブロック)を行う。

 

皮膚切開と止血

予定した切開線に沿ってメスで皮切し、病変を摘出する。

 

熱傷や皮膚潰瘍の場合には鋭匙(えいひ)やカミソリなどでデブリードマンを行う。出血点はモスキートペアンで挟んで糸で結紮したり、電気メスやバイポーラ鑷子(せっし)で電気凝固する。

 

縫合

必要に応じて鋭的、鈍的に皮下を剝離したあと、創縁を挫滅しないようにフック鑷子やスキンフック(単鋭鈎)、有鉤鑷子で把持しながら皮下または真皮埋没縫合を行う。創縁がやや隆起して密着していることが重要である。

 

皮膚縫合は、5-0や6-0のナイロン糸で創縁の段差を揃えるように緩く結紮する。創縁が合っていれば、ステリストリップTMなどのテープで固定しても良い。

 

ドレッシング

ドレッシングにはハイドロコロイドや半透過膜(フィルム)などの貼付材料を用いても良いが、滲出液が多い場合は、ガーゼを置いて軽く圧迫を加えたほうが良い。湿潤を保つためと癒着防止のため、メッシュガーゼ(ソフラチュール®、トレックス®ガーゼなど)やワセリン系軟膏を外用することもある。

 

固定用のテープは、接触皮膚炎を避けるため優肌絆®やマイクロポアTMなど肌に優しいテープを長めに切って使用する。強固に圧迫が必要な場合や可動部位では伸縮性のあるテープが用いられるが、テープかぶれには注意が必要である。

 

遊離植皮を行った場合には、術後最低3~5日以上は植皮片がずれたり、血腫をつくったり、過圧迫による血流障害を起こしたりしないよう、固定には細心の注意が必要である。

 

 

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術後のケア

創部の処置

縫合された創は、清潔で湿潤環境にあれば48時間以内に上皮が再生して創面がシールされるので、ドレッシングを除去して開放創としても問題ない。筆者は、止血など圧迫を必要とする症例以外は、この時点でドレッシングを除去してシャワー浴を許可している。

 

固定のテープを剝がすときには、創が離開しないように両側から中央に向かってテープを剝がす。

 

疼痛

術後の疼痛は手術当日が最大であり、その後減少していく。疼痛が持続する場合は、血腫や感染の可能性が高いため、患者にその旨を説明して受診してもらう。

 

入院患者など、毎日皮膚の評価が可能な場合は、疼痛、腫脹、発赤、熱感を評価して異常所見を早期に発見する。

 

手術部位感染

手術部位感染(surgical site infection:SSI)は通常術後30日以内に起きる。皮膚と皮下組織だけの浅いものから、筋膜や筋肉に至る深いものまで種々の深度で起こる可能性がある。

一般的にどのような患者がSSIの合併リスクが高いか知っておくと、早期発見から適切な時期の介入が開始できる。

 

SSIの危険因子についてはさまざまな報告があるが、一般的には肥満、糖尿病、栄養失調、ヘマトクリット値の低下、腹水ステロイド薬の使用、高年齢・低年齢、他部位の感染などである。なお、手術時の抗菌薬の予防的投与は、手術開始後30分以内が推奨されている。

 

血流障害

術後創縁の緊張が強いと、血流障害によって皮膚の壊死を招くことがある。また、皮弁の血流障害も起こりうる。皮膚の血流を定期的にモニタリングすることは、術後管理において重要である。

 

 

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引用・参考文献

1)冨田浩一:皮膚生検・手術と創傷管理。皮膚科エキスパートナーシング(瀧川雅浩ほか編)、p.34-37、南江堂、東京、2002
2)Scotts NA:創感染:診断と管理。創傷管理の必須知識(渡辺 晧ほか監訳)、p.231-252、エルゼビア・ジャパン、東京、2008


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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