尿検査|検体検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、尿検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

尿検査とはどんな検査か

尿検査とは尿中の成分を検査することにより腎・尿路系、もしくは腎前性疾患を推測する検査である。

 

尿生成の大きな目的は、体内の老廃物を体外に排泄することである。尿中に排泄される成分や量は、病気になると変化することが多く、物理・化学的性状、形態を調べることによって各種疾患の診断、予後の推定や治療法の選択に重要な指標となる。

 

尿検査の目的

尿中に含まれる蛋白・代謝の終末産物や中間代謝物、諸種の有機・無機塩類、電解質、解毒物質、微量のビタミン、ホルモン、尿中有形成分の出現状況を検査することで、腎・尿路系の疾患
のみならず、心、肝、内分泌その他諸器官の機能や病態を知ることができる。

 

尿は採取が容易であり、患者に苦痛を与えることなく繰り返し検査でき、利用価値が大きいので臨床上きわめて重要である。

 

尿検査の採尿における注意点

  • 一般定性検査や形態学的検査は、早朝尿または随時尿を用い、中間尿を採取する。中間尿とは、初尿および後尿を採取せず、中間の部分を採取した尿である。
  • 尿を放置すると、表1に示したように成分変化が生じるので、採尿後は速やかに検査室へ提出して検査する。
  • 検査項目によっては、遮光保存して提出しなければならない検査もある。

表1尿の放置による成分変化

尿の放置による成分変化

 

*尿試験紙法で測定される項目

 

尿検査の実際

尿の検査は表2に示すようなものがある。

 

表2主な尿検査一覧

主な尿検査一覧

 

一般検査

1)尿量

  • 健常人は、1 日1,000 ~ 1,500mLで、夜間は昼間の1 / 3~1 / 4くらいである。3,000mL以上を多尿、500mL以下を乏尿、100mL以下を無尿という。

2)外観

  • 健常人の尿は、淡黄色・透明で、これは尿路系で産生されるウロクロムによる。

3)尿比重

  • 屈折計法、尿比重計法(浮秤法)もあるが現在は自動化測定に対応した試験紙法が多く用いられている。
  • 正常値:健常者の24時間尿の比重は1.015~1.025であるが、飲水や発汗、下痢で1.002~1.045の間を変動する。

 

尿簡易検査(試験紙法)

  • 尿に試験紙を浸して色調変化をみるだけで簡単に結果が得られる“dip&read”方式の尿簡易検査により、多項目検査が同時に検査できる。
  • 尿試験紙は、短冊状のプラスチック片に試薬を含ませ、乾燥させた濾紙(反応部分)を貼りつけたものである。

<操作法>

 

  1. 尿に試験紙を浸し、ただちに引き上げる。
  2. 試験紙に付いた余分の尿を、尿容器の辺縁もしくは濾紙などで取り除く。
  3. 決められた判定時間で試験紙の呈色度を色調表と比較し判定する。
  • 判定は試験紙容器に貼りつけられた色調表と比較する方法で、目視と自動機器で自動読み取りする方法とがある。

1)pH

  • 健常者の尿は弱酸性(pH6.0くらい)で生体のpH状況、食事の内容などによりpH4.5~6.5の間を変動する。

2)蛋白

  • pH指示薬であるテトラブロムフェノールブルー(TBPB)を用い、指示薬が蛋白と結合すると変色すること(蛋白誤差)を利用している。

<注意>主にアルブミンが検出され、ベンスジョーンズ蛋白、グロブリンなどは検出しにくい。

 

3)糖

  • ブドウ糖酸化酵素でブドウ糖を分解し生成されるH2O2をペルオキシダーゼと色原体を用いた方法で測定する。

<注意>測定されるのはブドウ糖だけであり、他の糖質は検出されない。

 

4)ウロビリノーゲン

  • エールリッヒのアルデヒド反応を用いている。

5)ビリルビン

  • 酸性の条件下で、ビリルビンがジアゾニウム塩とカップリングして赤色のアゾ色素を形成することを利用している。

6)ケトン体

  • アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸を総称してケトン体といい、糖尿病患者の病態把握、コントロールの指標として用いられる。
  • アルカリの条件下で、ニトロプルシドナトリウムがケトン体と反応して紫色の化合物を形成することを利用している。

7)潜血

<注意>5 ~ 15 個/μLの赤血球が尿に存在すれば陽性になる。

 

8)亜硝酸塩

  • 細菌の硝酸塩還元能を利用している。
  • 105/mL以上の細菌が尿に存在すれば陽性になる。

9)白血球

  • 白血球エステラーゼ活性を、アゾカップリング反応を利用して検出している。

<注意> 10~25個/μL の白血球が尿に存在すれば陽性になる。

 

<試験紙法における一般的注意>

 

  • 検尿には、原則として新鮮な検体を清潔な容器にとって検査する。
  • 試薬が溶出して正確な結果が得られなくなるので試験紙を尿中につけすぎない。
  • 定性試験としての感度はよいが、定量性には乏しい。特に目視での判定では個人差が大きい。
  • 試験紙の試験部分には手を触れてはいけない。
  • 試薬を入れた容器は常に密栓し、湿気、高温、直射日光を避けて冷暗所で保存する。
  • 保存中に変色した試験紙は使用しない。
  • 判読時間は厳守し、判定は明るい昼色蛍光灯下で行う。
  • 多項目試験紙では各反応部分の試薬が流出して他を汚染するとよくないので、尿に浸した後はなるべく水平に保持して判定する。
  • 試験紙法では、測定原理上、種々の偽陽性、偽陰性になることがある(表3)。

表3試験紙法の偽陽性と偽陰性

試験紙法の偽陽性と偽陰性

 

試験紙法以外の定性検査

1)蛋白

  • スルホサリチル酸法は蛋白と反応して沈殿するため、尿中の蛋白測定に利用されている。
  • 熱凝固反応を利用した煮沸法は感度が最も鈍いので、陽性の場合は確実に蛋白尿と断定してよい。

2)インジカン

  • インドキシル硫酸のことで腸閉塞、腸結核、腹膜炎などで陽性になる。
  • 紫色採尿バッグ症候群とは、尿道カテーテルを長期留置している患者で、採尿(蓄尿)バッグが紫色になる現象である。尿中のインジカンが細菌によって色素になり、採尿バッグに付着して紫色になる。

3)ポルフィリン体

  • フィッシャーのブルグッシュ変法により測定される。
  • ポルフィリン体は、骨髄の赤芽球や肝におけるヘム生合成過程の中間代謝産物であり、増加する疾患にポルフィリン症、ポルフィリン尿症がある。

<注意>ポルフィリン体は、光で分解しやすいので、遮光して4℃に保存し、できるだけ速やかに提出する。

 

4)ベンスジョーンズ蛋白(Bence Jones protein)

  • 骨髄で生成される免疫グロブリンのL鎖が2つ結合した異常蛋白である。
  • 多発性骨髄腫、骨肉腫、リンパ性白血病アミロイドーシスなどで尿中に出現する。
  • 56〜63℃で一度凝固した後、100℃付近で再溶解する特徴を持つ。
  • 試験紙法では検出されにくいので、一般検査として熱凝固試験を行う。確定診断は免疫電気泳動法により行う。

5)バニルマンデル酸(vanillylmandelic acid;VMA)

  • ジアゾカップリング反応を利用した方法で測定する。
  • カテコールアミンの代謝産物であるVMAは、神経芽細胞腫、褐色細胞腫の診断に重要である。

 

機能検査

1)フィッシュバーグの濃縮試験

  • 腎臓での尿の濃縮能を検査する。
  • 濃縮試験は主として遠位尿細管の再吸収能力を示す。
  • 水分をとらせずに、排泄された尿比重あるいは尿浸透圧を測定する。
  • 3回の採取尿のうち1回でも比重が1.025以上または浸透圧が850 mOsm/Kg・H2O以上であれば尿濃縮力は正常である。
  • フィッシュバーグの濃縮試験の検査手順を図1に示す。

<注意>随時尿でも1.025以上または浸透圧が850mOsm/Kg・H2Oであれば腎の濃縮能は正常と考えてよい。

 

図1フィッシュバーグの濃縮試験の検査手順

フィッシュバーグの濃縮試験の検査手順

 

2)PSP排泄試験(フェノールスルホンフタレイン試験)

  • PSPを静脈注射して、その排泄機能を調べる。
  • 近位尿細管の機能を調べる検査である。
  • 正常は15分値が25〜50%、120分値が55〜85%。15分値が25%以下の場合、腎機能障害が考えられる。
  • PSP試験の検査手順を図2に示す。

<注意> 

 

体腔に貯留液(胸水、腹水)がある場合ここにPSPが入ってしまうために、排泄が遅延する。排尿したものはすべてを検査室に提出する。

 

図2PSP試験の検査手順

PSP試験の検査手順

 

沈渣

1)検査法

  • 尿沈渣の標本作製の手順を図3に示す。

図3尿沈渣標本作成の手順

尿沈渣標本作成の手順

 

高橋正宣、伊藤機一:図説尿沈渣教本、p.37、宇宙堂八木書店、1979

 

2)尿沈渣成分(表4

  • 赤血球:腎・尿路系の出血、炎症、結石、腫瘍のとき認められる。
  • 白血球:腎・尿路系の炎症のとき認められる。
  • 円柱:尿細管の病変、障害部位を知るのに重要である。円柱の細いのは、近位尿細管、中ぐらいのものは遠位尿細管、幅広のものは集合管で生成されたもので、硝子、赤血球、白血球円柱は急性病変を、顆粒、脂肪、蝋様円柱は慢性腎臓病変を意味する。

表4尿沈渣成分

尿沈渣成分

 

尿検査に関するQ&A

Q1.生理中ですが、尿一般を検査できますか?

A.生理中または前後2〜3日は、血液の混入による影響で、潜血反応が陽性となります。このため、生理中であることをコメントするか、できれば生理が終了してから検査するようにしてください。

 

Q2.蓄尿で尿一般、尿沈渣を検査できますか?

A.蓄尿では、検査できません。蓄尿は、尿を長時間ためておくので、その間に尿中の細菌により尿素が分解されてアンモニアが発生します。そのアンモニアによってpHがアルカリ性に傾き、また細菌により糖が分解され陰性化するなどの変化が起こります。

 

尿沈渣では赤血球の老化・溶血、白血球・上皮細胞の退行変性、細菌増殖、塩類・結晶の析出、円柱の溶解などが起こるため観察困難となります。したがって、尿一般、尿沈渣の検査は、早朝尿あるいは随時尿を使用します。検査室では採尿後2〜4時間以内に検査しています。

 

Q3.尿定性検査で潜血反応が陽性なのに尿沈渣には、赤血球が認められないことがあるのですか?

A.このようなことは、ミオグロビン尿、ヘモグロビン尿で生じます。ミオグロビン尿は、筋肉の筋細胞が急激な大量損傷を起こし、ミオグロビンが尿中に大量に排泄されます。このミオグロビンは、ヘム蛋白質であり、1つのヘムを含んでいます。分子量がヘモグロビンの約1/4と小さいため、尿中に出現します。ミオグロビンは、偽ペルオキシダーゼ反応により試験紙法では潜血(+)となりますが、尿沈渣に赤血球は認められません。

 

また、ヘモグロビン尿は、血管内で溶血が起こり、遊離したヘモグロビンがハプトグロビンとの結合能を越えた場合に糸球体から濾過されます。そして尿細管での再吸収能を超すと尿中に排泄されてヘモグロビン尿となり、偽ペルオキシダーゼ反応のために潜血(+)となり、尿沈渣に赤血球は認められません。

 

Q4.尿定性検査で亜硝酸塩(細菌の有無)が陰性なのに、尿沈渣に細菌が多く認められることがあるのですか?

A.亜硝酸塩の検出の原理は、細菌により硝酸塩が還元されて生じた亜硝酸塩が、試験紙に含まれているアミン化合物とのジアゾカップリング反応により検出されます。

 

しかし、①硝酸塩を多く含む食物(特に野菜)を摂取していない、②細菌が膀胱内に4時間以下の貯留の尿(亜硝酸塩が十分産生できない)、③グラム陰性桿菌以外の細菌の存在などでは、定性検査が陰性になることがあります。

 

略語

 

  • PSP:phenol sulfonphthalein(フェノールスルホンフタレイン)
  • TBPB:tetrabromophenol blue(テトラブロムフェノールブルー)
  • VMA:vanillyl mandelic acid(バニルマンデル酸)

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

この記事をシェアしよう

看護知識トップへ