末梢血液検査|検体検査(血液検査)

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、末梢血液検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

 

末梢血液検査とはどんな検査か

末梢血液検査とは、末梢血液の中の赤血球白血球血小板の3系統の血球について調べる検査である。これらの血球数を算定し、赤血球に関連したヘモグロビン濃度ヘマトクリット値を検査するCBC(complete blood count;全血球計算値)と、白血球の種類を分類し細胞の形態を観察する白血球分類とに分けられる。また、網赤血球数を測定する。

 

基準値表1に示す。

 

表1末梢血血液基準値

末梢血血液基準値

 

末梢血液検査の目的

  • CBCは健康診断や診療におけるスクリーニング検査の1つである。
  • 赤血球数は貧血や赤血球増加症の診断や治療効果の判定のために検査される。
  • 白血球数感染症の診断や経過観察を行うのに有用であり、白血球分類(好中球好酸球、好塩基球、単球、リンパ球)は感染症の種類やアレルギー性疾患あるいは白血病などの診断や治療効果判定のために検査する。
  • 血小板数出血傾向の検出に有用である。
  • 網赤血球数は骨髄における赤血球産生の指標となり、貧血の治療効果判定に有用である。

 

末梢血液検査の実際

CBC

  • CBCはほとんどの検査室で、自動血球計数器を用いて測定している。年々精度や正確性を向上させる改良が行われているが、疾患や人為的な要因でいろいろな誤差を生じることがあるので気をつけなければならない。
  • CBC測定値の誤差原因を表2に示す。

〈注意点〉

 

  • 自動血球計数器は白血球、赤血球、血小板の3系統の細胞の粒子数を細胞数として計測している(図1)。正常な状態では問題はないが、何らかの原因により大きさの異なった異常な細胞が出現すると偽低値や偽高値を示すことが起こる。

表2自動血球計数測定値の誤差原因

自動血球計数測定値の誤差原因

 

図1自動血球計数装置の原理

自動血球計数装置の原理

 

廣澤信作:検査とその異常、<古澤新平、長澤俊郎、檀和夫編著:図解血液学テキスト>、p61、中外医学社、2001より転載

 

白血球分類

  • 白血球分類は、自動白血球分類装置と塗抹標本を用いて顕微鏡で分類観察する目視法とがある。
  • 自動白血球分類装置は、正常白血球5分類のほかに芽球、幼若顆粒球、血小板凝集、赤血球形態、赤芽球など各種の異常を検知する総合自動分類装置がある。赤血球、白血球、血小板から得られる電気信号やレーザー測光、さらには化学的染色法の情報を用いてスキャッタ図を描き、正常細胞5分類と異常細胞の表示を行う(図2図3)。

図2光学的測定方式

光学的測定方式

 

西村敏治:最新型総合血液分析装置の機能、臨床病理レビュー、特集第126号、p13、2003より転載

 

図3電気抵抗方式の原理

電気抵抗方式の原理

 

久保田浩、巽典之:自動測定法の実際、血液検査実践マニュアル、検査と技術、増刊号、Vol.28,No.7、p690、2000より転載

 

〈注意点〉

 

  • 自動白血球分類装置はスクリーニング用なので白血球分類が正常のときは、そのデータを報告するが、異常細胞を検知すると技師が目視法で確認している。

 

網赤血球数

  • 網赤血球数の測定は、自動血球計数器によるフローサイトメトリー法と超生体染色を施した後に算定する視算法がある。

 

末梢血液検査前後の看護の手順

〈採血時の注意〉

 

  • 検体は静脈血を使用する。抗凝固剤としては、血球の形態や血球数に変化を起こさないEDTA塩が用いられる。
  • 迅速に採血し、抗凝固剤とゆっくり十分に混和して凝固しないように気をつけなければいけない。
  • 採血後ただちに測定することが望ましい。室温で4時間以内に測定する。すぐに検査できないときは冷蔵庫保存がよい。血球算定では12時間ぐらいは影響がないが、自動装置による白血球分類では、冷蔵庫保存でも6時間以内に分析することが望ましい。

 

末梢血液検査において注意すべきこと(異常の場合)

1)貧血と赤血球増加症

  • 貧血の場合、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値が必ずしも並行して変動しないので、赤血球指数を用いて分類する(表3)。赤血球増加症は表4に示す。

表3赤血球指数と貧血

赤血球指数と貧血

 

表4赤血球増加症

赤血球増加症

 

 

2)白血球増加と減少

  • 各種白血球の増加する疾患と減少する疾患を表5に示す。

表5白血球分画の異常

白血球分画の異常

 

3)血小板増加と減少

  • 血小板が増加する疾患・状態と減少する主な疾患・状態を表6に示す。

表6血小板が増加・減少する疾患

血小板が増加・減少する疾患

 

4)網赤血球増加と減少

  • 網赤血球は骨髄の造血能をみる指標として用いられる。
  • 増加の場合は骨髄に造血機能亢進があることを示し、減少の場合は造血機能低下が考えられる。
  • 網赤血球が増減する主な疾患を表7に示す。

表7網赤血球の増加・減少する疾患

網赤血球の増加・減少する疾患

 

末梢血液検査に関する事例

点滴をしている静脈からの採血が考えられた例

前回値は白血球数6000/μL、赤血球数420×104/μL、Hb14.2g/dL、血小板数25.3×104/μLであったが、今回提出された検体では白血球数4000/μL、赤血球数310×104/μL、Hb10.5g/dL、血小板数18.0×104/μLと明らかに低値であった。経験から、点滴をしている静脈からの採血と考え、担当医に連絡し、再度採血をやり直した。

 

点滴をしている側の腕から採血すると血液が希釈されるので、やむを得ず採血が必要なときは点滴をしている側と反対の腕から採血するように注意する。

 

抗凝固剤との混和不十分な例

白血病で治療中、白血球数が1000/μL以下であったが、急に3700/μLとなった。塗抹標本で確認すると、白血球数は著減しており多数のフィブリンが析出していた。フィブリン塊を白血球と誤って算定して偽高値となった例である。採血に時間がかかったときや抗凝固剤と混和が不十分な検体は、血液が凝固し、特に血小板数や白血球数に影響が出るので気をつけなければいけない。

 

血小板のみが低値を示した例

1週間前は血小板数が21.8×104/μLであったのに今回9.6×104/μLと低値だった。白血球数や赤血球数に著変はみられない。塗抹標本で確認すると大小の血小板の凝集塊がみられ、EDTA塩による偽性血小板減少だった。自動血球計数器で血小板を測定すると、凝集した血小板は数えないので血小板減少となる。この現象はEDTA塩添加末梢血液検体の0.06〜0.13%にみられ、性差、年齢差、疾患特異性がない。出血傾向のない患者や、容態に変化がみられないのに血小板数が低値になったときは疑うべきである。

 

患者を取り違えて採血した例

昨日はMCV(平均赤血球容積)が85.3fLで、今日は95.5fLであった。通常、個人でのMCVの変動は少ないので、前回値と比較して大きく変動しているときは患者の取り違えが考えられる。最近はバーコード・リーダーによって検体を識別するので、測定時の取り違えはないが、採血時に患者の取り違えをしないように注意しなければいけない。

 

こんなことも起こります

高度の貧血の患者のデータが昨日より強くなりました。医師は腑に落ちないようで、再度採血を行い、検査を依頼しました。再検査すると前日と同じようなデータです。さて、これは何が原因でしょうか?

 

この異常データの原因は、シリンジ採血で多量の血液を採血している間に、貧血が強いので血球が下に沈み、上の部分を採血管に注入したので誤ったデータとなったのです。再採血では血球算定用にのみ採血したのでこのようなことは起こらず、良いデータが得られました。思いがけないことも起こります。

 

末梢血液検査に関するQ&A

Q1.ヘマトクリット値は自動血球算定装置の中の遠心器が計るのですか?

A.いいえ。自動血球算定装置の中に遠心器は入っていません。赤血球数とMCVを機械が算定しヘマトクリット値を計算します。また、直接ヘマトクリット値を算定する装置もあります。

 

Q2.ヘパリンで採血したのですが、血液検査データに影響がありますか?

A.1時間以内なら大丈夫です。へパリン血では時間が経つと血小板が凝集するので低値になります。白血球数は血小板の凝集塊を数え入れてしまうので高値になります。赤血球数、ヘモグロビン濃度に影響はありません。

 

白血球分類はヘパリンによって細胞が破壊してしまうため検査できません。抗凝固剤はEDTA塩が最適です。

 

Q3.EDTA塩で血小板が凝集する患者の真の血小板数を測定したいのですが、どうしたらよいですか?

A.抗凝固剤を使わずに採血したらすぐに機械で測定することが最良です。ヘパリンまたはクエン酸塩添加血液で算定することもできますが、凝集塊がみられ正確な測定ができない場合もあります。

 

Q4.白血球分類の結果で桿状核球と分節核球の分類がないデータがあります。どうしてですか?

A.自動血球分類装置では桿状球と分節核球の区別ができないので好中球として報告しています。また、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5分類が正常の場合はそのまま報告しますが、芽球や幼若顆粒球などのメッセージがあるときは目視法で確認しています。一般的な検査室では、血液疾患患者やそれらが疑われる場合は自動分類装置の結果が正常でも必ず目視法で鏡検しています。

 

Q5.白血球数が67,000/μLもあるので白血病でしょうか?

A.細菌感染症の患者でも60,000~70,000/μLぐらいまで増加することがあります。白血病では種類にもよりますが、多いと100万/μLぐらいまで増加し、逆に1,000/μLほどに減少することもあります。

 

Q6.細菌感染症や炎症があると、白血球数が非常に多いときと、逆に少ないときがあるのですがどうしてですか?

A.好中球増加症は、骨髄から末梢血液への好中球移動が亢進するか、血管の中の辺縁プールから循環プールへの好中球移動が亢進するか、末梢血液から組織への遊出減少などにより起こります(図4)。辺縁プールから循環プールへの好中球の移動は2~3分で起こり、骨髄から末梢血液への好中球の移動は2~3時間かかります。でも好中球産生は2~3日かかるのです。

 

一般的な感染症では、辺縁プールから循環プールへの好中球の移動によって末梢血液の白血球数は増加しますが、重症の感染症では辺縁プールの白血球も循環プールを経て組織へ移動してしまいます。骨髄で好中球を産生するのに時間がかかるため、このような時期は白血球数が低値になるのです。

 

図4好中球増加の機序

好中球増加の機序

 

北川誠一:白血球の異常、<池田康夫、押味和夫編:標準血液病学>、p79、医学書院、2000

 

略語

 

  • CBC:complete blood count(全血球計算値)
  • EDTA:ethylene diamine tetraacetic acid(エチレンジアミンテトラ酢酸)
  • G-CSF:granulocyte colony-stimulation factor(顆粒球コロニー刺激因子)
  • Hb:hemoglobin(ヘモグロビン)
  • Ht:hematocrit(ヘマトクリット)
  • MCH:mean corpuscular hemoglobin(平均赤血球血色素量)
  • MCHC:mean corpuscular hemoglobin concentration(平均赤血球血色素濃度)
  • MCV:mean corpuscular volume(平均赤血球容積)
  • MDS:myelodysplasic syndrome(骨髄異形成症候群
  • PLT:platelet(血小板)
  • RBC:red blood cell(赤血球)
  • SLE:systemic lupus erythematosus(全身性エリテマトーデス
  • WBC:white blood cell(白血球)

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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