ガス交換がうまくできないと体はどうなる?|ガス交換に関するQ&A(2)

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。

 

[前回]

ガス交換ってどんなもの?|ガス交換に関するQ&A(1)

 

今回は「ガス交換」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

酸素はどうやって全身に運ばれているの?

酸素を全身の細胞に届ける役割を担っているのが、赤血球の血色素であるヘモグロビンです。ヘモグロビンは、ヘムという色素とグロビンというタンパク質からできています。ヘムの主成分である鉄分(ヘム鉄)は酸素とくっつき、酸素ヘモグロビンとして全身を巡ります。

 

酸素ヘモグロビンは、緊急に酸素を必要とする場面に遭遇すると、簡単に酸素を切り離すことができるようになっており、この仕組みを利用して細胞に酸素を受け渡しています。緊急の場面とは、低酸素状態、二酸化炭素の高濃度状態、pHが低い状態、高体温時などです。

 

酸素と結合している酸素ヘモグロビンの割合を示すものが酸素飽和度(SaO)です。正常値は95〜100%で、サチュレーションともいいます。正確な測定は血液ガス分析で行いますが、パルスオキシメータの測定端子を指先につけ、10秒程度で簡単に測定することもできます。

 

MEMO低酸素血症(ていさんそけっしょう)

動脈血中の酸素が不足し、酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下になった状態。様々な原因で低酸素血症が現れ、長く続くと正常な活動ができなくなります。症状は、軽い場合には頻脈、精神障害、呼吸促迫の三大症状のほか、血圧が上昇し、チアノーゼが現れることもあります。貧血がある場合には還元ヘモグロビン量が少なくなるため、チアノーゼは現れにくくなります。重度になると、意識不明、痙攣、血圧下降、徐脈などが現れ、放置すると死に至ります。

 

二酸化炭素はどうやって体外に運び出されるの?

血液中の二酸化炭素は、約90%が炭酸水素イオン(HCO)として血漿けっしょう)中に存在しており、酸素を切り離した還元ヘモグロビンと結びついている二酸化炭素は、残りのごくわずかです。

 

二酸化炭素の運搬に赤血球は係わっていないのでしょうか。二酸化炭素が水と反応し、炭酸水素イオンと水素イオン(H)に解離する時に、赤血球内の炭酸脱水酵素(たんさんだっすいこうそ)が重要な役割を果たしています。炭酸水素イオンとして血漿中を移動した二酸化炭素は、肺胞で水(HO)と二酸化炭素(CO)になり、呼気として体外に排出されます

 

二酸化炭素が排出されないとどんなことが起こるの?

ガス交換に障害が起きて二酸化炭素の排出がスムーズにできなくなると、血液中の二酸化炭素が増えていきます。すると、血液のpHは次第に酸性に傾いていきます。これは、次のようなメカニズムで起こります。

 

正常な状態では、血液中の二酸化炭素は、赤血球内にある炭酸脱水酵素の働きで水(HO)と反応し、炭酸水素イオン(HCO)と水素イオン(H)に解離します。つまり、二酸化炭素は炭酸水素イオンの形で肺に運ばれ、肺で再び二酸化炭素と水になり、体外へ排出されるのです。

 

二酸化炭素の排出が正常に行われている時、血液のpHは7.40±0.05という狭い範囲で弱アルカリ性に保たれます。これは、この範囲内でしか代謝を促進する酵素が働かないからです。

 

二酸化炭素の排出がうまくいかなくなると、血液中に炭酸水素イオンとともに水素イオンが増えてきます。水素イオンが増えると、血液は酸性方向に傾いてきます。これがアシドーシスです。

 

反対に、二酸化炭素分圧が低下するとアルカローシスになります。

 

ガス交換の障害により、血液のpHが7.35以下になった状態を呼吸性アシドーシスといいます。呼吸性アシドーシスを起こす原因疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、重度の肺炎、肺水腫、喘息などがあります。

 

MEMOpH(ピーエイチ、ペーハー)

物質の酸性、アルカリ性の度合いを示す数値をpH(水素イオン指数)といいます。

 

通常、0〜14までの値で表し、純水はpH=7.00で中性です。pH<7.00は酸性、pH>7.00はアルカリ性です。

 

MEMOアシドーシスとアルカローシス

アシドーシスは血液が酸性に傾くこと(pH<7.35)、アルカローシスは血液がアルカリ性に傾くこと(pH>7.45)です。

 

アシドーシスは頻脈、血圧の上昇、心拍数の増加、浮腫などを起こします。アルカローシスは心拍数の減少、血圧の低下、血流の減少などを起こします。

 

ガス交換がうまくできないと体はどうなる?

肺でのガス交換に支障が生じると、酸素摂取がうまくできなくなります。この状態を肺胞換気障害といい、代表的な疾患に慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)(COPD)があります。

 

ガス交換がうまくできなくなる原因は、肺胞や気管支の障害です。肺胞がダメージを受けると肺胞の収縮が悪くなり、二酸化炭素が溜まっていくため、酸素の取り込みが悪くなります。また、空気の通り道である気管支が狭窄すると、肺の残気量が増え、酸素が十分に入ってこなくなります。

 

通常、血液中のヘモグロビンは肺で酸素と結びつき、細胞で酸素を離して還元ヘモグロビンになります。そして、再び肺で酸素と結びつき、全身を巡ります。

 

しかし、肺でのガス交換がスムーズに行えないと、還元ヘモグロビンが増えて細胞は酸素不足に陥ります。この状態をチアノーゼといいます。

 

MEMO慢性閉塞性肺疾患(COPD)

COPDは、 Chronic Obstructive Pulmonary Disease の略。以前は慢性気管支炎、肺気腫という病名で診断されていましたが、実際にはこの2つの病気が混在しているケースが多く、明確に区分するのが困難なため、最近ではこれらを合わせてCOPDと呼びます。肺への空気の流れが悪くなり、や痰、息切れなどを起こします。

 

MEMOチアノーゼ

皮膚や粘膜の色が青紫色に見える状態です。表在毛細血管内の還元ヘモグロビンが5g/dL以上になると、チアノーゼが生じます。耳朶(じだ)、尖(びせん)、頬、指先、口唇など、血管が皮膚や粘膜の直下にある部分でみられます。

 

COLUMN酸素投与が必要な場合

大気中には約21%の酸素が存在します。通常の換気とガス交換を行うことができれば、体内の酸素は不足することはありません。しかし、大気中の酸素濃度で酸素が補えない場合には、酸素投与が行われます。

 

呼吸筋の障害によって呼吸運動が制限され、体に必要な酸素が取り込めず、呼吸困難を起こした場合には酸素投与が必要です。

 

また、肺炎、喘息、肺腫瘍、肺癌などの病変により、気道や気管支が狭窄したり、肺胞の面積が減少したり、肺の伸縮性が減少すると、呼吸中枢の興奮によって呼吸困難が生じます。このような場合にも、酸素投与を行います。

 

※編集部註※

 

当記事は、2016年05月02日に公開した時点で、低酸素血症の値に誤りがございました。
2018年7月17日に正しい情報に修正いたしました。訂正してお詫び申し上げます。
(誤)酸素分圧(PaO2)が85mmHg以下になった状態。
(正)酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下になった状態。

 

[次回]

呼吸困難はなぜ起きるの?|ガス交換に関するQ&A(3)

 

⇒〔解剖生理Q&A記事一覧〕を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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