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2018年02月25日

経鼻胃管 | ドレーン・カテーテル・チューブ管理

ドレーン・カテーテル・チューブ管理

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。
今回は経鼻胃管について説明します。

《経鼻胃管の概要》

主な適応
胃・十二指腸潰瘍や胃癌からの出血に対する内視鏡的治療後(止血の確認)
胃癌で幽門狭窄時(通過障害)、胃拡張での術前処置、上部消化管手術後の急性胃拡張・胃排出障害による嘔吐、腸閉塞で嘔吐を繰り返すもの
目的
胃内容物の性状確認(インフォメーション)と胃内容物の体外への誘導(減圧、ドレナージ)
合併症
挿入時:嘔吐による誤嚥、気管内への迷入
留置中:患者不快、嚥下障害による誤嚥、消化管の出血・穿孔、鼻翼固定部の圧迫壊死
抜去のめやす
排液の性状と量を継時的に観察し、性状が胆汁や血液を混じなくなること、および量のめやすとして200mL/日程度を下回ること
観察ポイント
挿入中:排液の性状・量、患者の症状を観察する。排出不良時はルートの屈曲や排液バックの位置をまず確認する
挿入中:定期的に固定部の皮膚トラブルを確認し、固定位置を変更する
ケアのポイント
挿入前:皮膚や髭の状態、口腔内環境、テープの耐性およびベットサイド環境などを考慮して、固定法や挿入後の管理方法を選ぶ
口腔ケア:絶飲食になると、口腔ケアがおろそかになりやすい。保清・保湿を保つようにする

経鼻胃管の挿入経路

〈目次〉

 

経鼻胃管の定義

経鼻胃管とは、鼻から胃に挿入する塩化ビニルやシリコンゴムなどでできたやわらかいチューブの総称である。

Nasogastric tube(NG tube、英語):ナゾガストリックチューブ、エヌジーチューブ、Magen Sonde(独語):マーゲンゾンデなどと呼ばれることが多いが、本稿では“経鼻胃管”と表記する。

経鼻胃管には、単腔構造のレビン1と2腔・3腔型構造のサンプ型(図1)がある。

図1サンプ型ドレーン

サンプ型ドレーン

 

経鼻胃管の目的と適応

1目的

経鼻胃管の主な目的は、①胃内容物の性状確認(インフォメーション)と②胃内容物の体外への誘導(減圧、ドレナージ)である。

 

胃内容物の性状確認(インフォメーション)

貯留した胃内容物が血液か、食物残渣か、胆汁を混じた腸液か、などの情報を得ることができる。胃・十二指腸潰瘍や胃癌からの出血に対する内視鏡的治療後に、その止血効果の確認などに用いられる。

 

胃内容物の体外への誘導(ドレナージ)

胃内容物を体外に誘導して胃内の減圧を図ることで、嘔吐を軽減し、さらに嘔吐による誤嚥を予防する目的にも使われる。

胃癌による幽門狭窄のための通過障害・胃拡張に対する術前処置として用いられる。また、上部消化管手術後の急性胃拡張や術後の胃排出障害による嘔吐、あるいは、腸閉塞のうち嘔吐を繰り返すものなどに用いられる。

 

2適応

以前は食道癌、胃癌などの手術後に胃内の減圧を図り、縫合不全を予防し、腸管運動の早期回復をめざして術後数日間経鼻胃管を留置したり2、これに持続陰圧をかけることが行われていた。

しかし、複数のメタ解析や前向き研究により食道切除3、内視鏡下手術を含む胃切除4-6、膵頭十二指腸切除7、および緊急開腹手術8を含む多くの開腹手術9でも、術後の予防的な経鼻胃管挿入は「肺合併症」「消化管の縫合不全」「創離開」などの術後合併症を減少させないことが明らかになった。

また、術後排ガスまでの時間、経口摂取時期、術後在院日数などを短縮させないことが証明され、最近はこれら手術後の予防的経鼻胃管は推奨されていない10

 

3ドレーンの選択

サンプ型ドレーン:二重管構造で内腔が閉塞しにくいため、胃内容の吸引、とりわけ持続吸引に適している。

レビン型ドレーン:単管構造で、薬剤や栄養剤の注入に適している。本書ではドレナージに主眼を置いているため、経鼻胃管を介しての薬剤投与や経管栄養に関しては他書に譲る。

 

経鼻胃管の挿入方法と留置部位

1挿入方法

挿入は鼻腔を通して行われる。

経鼻胃管挿入時に最も注意しなければならないことは、挿入中に胃内容物の嘔吐によって起こる「誤嚥」である。

  1. 体位は、嘔吐による誤嚥を防ぐため、仰臥位ではやや頭高位に、可能なら上半身を起こして座位に近い体位が望ましい。
  2. 鼻腔内に潤滑剤(局所麻酔薬を含むものも多い)を十分に塗布し、顔面に対し直角に近い角度で、下鼻道に沿ってゆっくりていねいに経鼻胃管を挿入する11図2)。
  3. 15cmほどで胃管先端が咽頭に達する。この時点で何回か唾液を飲み込んでもらい、嚥下にタイミングをあわせて胃管をゆっくり進めることで気管内への迷入を防ぐ。
  4. 鼻腔から約50cmまで挿入できれば、胃管先端は胃内に到達している。ここで胃内容物が吸引されることを確認し、さらに腹部X線にて胃管先端の位置を確認する。

図2経鼻胃管挿入時の角度

経鼻胃管挿入時の角度

 

2留置部位

通常、仰臥位では胃底部背側が最も低位であり、胃内容物はここにたまりやすい。胃管先端が胃底部にあることが望ましい(図3)。

図3経鼻胃管の留置部位

経鼻胃管の留置部位

 

経鼻胃管の合併症

1経鼻胃管挿入時の合併症

挿入時の嘔吐による誤嚥

胃管先端が咽頭を越えるところで嘔吐が起こることが多い(図4)。大量の胃内容物が貯留していることが多いため激しい嘔吐になり、誤嚥を起こしやすい。

図4嘔吐反射を引き起こしやすい部位

嘔吐反射を引き起こしやすい部位

 

挿入にあたっては患者体位に十分配慮し、嘔吐に備えて近くに排液盆などを用意する。医療者も患者も、嘔吐が起こりやすいことを認識すべきである。

仰臥位で嘔吐が起こった場合は、ただちに顔面を左右どちらかに向けさせる。意識レベルの低下した患者では、嘔吐、誤嚥に関して特に注意を要する。

 

胃管の気管内への迷入

高齢者や、鎮静状態などの意識障害患者では、嚥下機能と咳嗽反射がともに低下しており、胃管が誤って気管内に入りやすく、その際に咳嗽が起こらないことも珍しくない。

気管内に胃管が迷入すると、嗄声が起こること、胃内容物が吸引できないことなどで診断はつく。

「注射器で空気を注入し、その空気音を心窩部で聴取できれば胃管が胃内にある」と判断することは推奨されない12。気管末梢まで迷入した胃管に空気を注入しても、心窩部で同じような空気音が聴取されることが知られているからである。

胃管が長時間にわたって気管内に留置されると、誤嚥が起こりやすくなり、きわめて危険である。その意味でも腹部X線画像による胃管の位置確認は必須である。

 

2経鼻胃管留置中の合併症

咽頭の異物感による患者不快、嚥下障害による誤嚥

咽頭を通過するドレナージ用の胃管は、通常12~14Frの太さがある。そのため、患者の咽頭不快はもちろんのこと、咽頭喉頭の異物として嚥下機能を障害し、ドレナージ不良の場合には胃内容物が逆流しやすくなり、誤嚥が起こりやすくなる。

 

胃管先端による消化管の出血・穿孔13

胃管留置が長期化すると、胃管先端の胃壁への圧迫のため出血や穿孔が起こることがある。

 

鼻翼固定部の圧迫壊死

経鼻胃管の固定が長期間鼻翼の1か所になされると、圧迫壊死に陥るので注意を要する。

 

経鼻胃管の利点と欠点

経鼻胃管は比較的容易に挿入することができ、胃内容物に関する性状確認と胃内の減圧・体外への誘導の両方に有効である。

しかし、胃管挿入操作時から留置中に至るまで、誤嚥の危険が常に存在することをよく理解し、胃管留置による得失を十分に考慮して選択すべき治療である。

 

ケアのポイント

1挿入前のアセスメント(表1

表1経鼻胃管ケアの主なポイント

挿入前
以下の点を考慮し、固定法や挿入後の管理方法を選定
① 患者アセスメント:皮膚、髭、口腔内環境、テープかぶれなど
② ベッドサイド環境:患者の動線を考慮
挿入時
● 嘔吐・誤嚥を防ぐための体位の調整、嚥下の練習
● 誤嚥時の備え:膿盆、吸引器・吸引カテーテルなど
● 留置確認の準備:カテーテルチップ注射器など
挿入後(留置中)
● 排液および患者の観察:排液の性状・量、患者状態など
● ルート管理:ルートの閉塞・屈曲、排液バック・空気腔、患者の体位などの確認
● 固定部ケア:固定位置のずれ、皮膚トラブルの予防・観察、事故抜去・圧集中の予防
●口腔ケア:保清・保湿の励行
● 臭気対策:患者に配慮した換気・消臭
インフォームド・コンセント

経鼻胃管の挿入目的がインフォメーションであっても減圧であっても、多くの症例で数日以上の長期的な留置を強いられる。そこで、患者の苦痛ができる限り少ない状態で挿入目的が達成されるよう、事前のアセスメントと環境整備が重要である。

患者の皮膚や髭の状態、口腔内環境、テープなどの固定具に対する耐性、また患者の動線をふまえたベットサイド環境などを考慮し、固定方法(図56)や挿入後の管理方法を選定する。

 

図5合併症を防ぐ固定のコツ

合併症を防ぐ固定のコツ

 

図6経鼻胃管の固定方法

経鼻胃管の固定方法

 

2挿入時の介助

挿入時の嘔吐、それに伴う誤嚥を予防するため、可能であれば半座位から座位をとれるよう、ベッドギャッジアップや姿勢支持を介助する。

また、咽頭に達した際スムーズに胃管が進むように、嚥下動作の協力を得る。事前に手順を説明し、唾液を飲み込む感覚を練習しておくことも効果的である。

嘔吐が生じた際に迅速に対応できるように、あらかじめ膿盆や吸引器・吸引カテーテルなどを使える状態でベッドサイドに準備しておく。

挿入後、経鼻胃管が適正位置に挿入されていることを確認するため、胃内容物を吸引するためのカテーテルチップ注射器を準備する。

 

2挿入後のケア

①排液・患者状態の観察

排液の性状(図7)・量、患者の症状を定期的に確認する。

図7経鼻胃管でみられる排液の性状(一例)

経鼻胃管でみられる排液の性状(一例)

 

②ルート管理

経鼻胃管から流出してくる内容物は、胃液・胆汁・血液・食物残渣など粘性・凝固性があり、ドレーンを閉塞させる可能性がある。そのため、ドレーンをミルキング図8)や吸引し、状況の確認、閉塞の予防・解除を行う。

図8経鼻胃管のミルキング

経鼻胃管のミルキング

 

サンプ型ドレーン(図1)の構造を理解し、正常にドレナージされるよう排液バック(ボトル)・空気腔の位置を確認する。空気腔は胃より高い位置に固定し、排液バックは胃より低い所に設置する(図9)。

図9ベッドサイドでの経鼻胃管の設置方法

ベッドサイドでの経鼻胃管の設置方法

 

ドレナージルートの屈曲・排液バックの位置などの単純な理由で排出不良となるケースが多いため、排出改善を試みる際は患者への侵襲が少ない方法から試行していくよう考慮する。

患者の姿勢で排液流出が左右される場合は、排出しやすい体位をとり、定期的に吸引することもよい。

閉塞により排液が滞る場合は、空気や微温湯を少量注入し開通する方法もあるが、ある程度圧力をかけて改善がなければ無理強いはしない。必要であれば、X線撮影による位置の確認や抜去、再挿入を行う。

 

③固定部ケア

経鼻胃管が適切な挿入位置で維持されているか定期的に確認するため、挿入時にドレーンにマーキングし、挿入距離を記録に残しておく。

固定方法(図6)は各種あるが、ドレーンの長期接触による鼻翼の皮膚損傷や、固定テープによる皮膚障害が生じる可能性があるため、定期的に観察および固定位置の変更を行う。

事故抜去や固定位置への圧力の集中を避けるために、ルートの途中で衣服の襟元などに留めておくのもよい(更衣の際は注意する)。

 

④口腔ケア

経鼻胃管を挿入される場合、絶食または絶飲食になるケースが多い。経口摂取されなくなると特に口腔ケアがおろそかになりがち(患者本人も)であるが、保清・保湿ができるよう患者に合ったケアを励行する。

 

⑤臭気対策

胃内容物の臭気が口腔や排液バックから広がるため、換気・消臭などに配慮できるとよい。

臭気による患者の心身ダメージも大きく、臭気対策のための行動が患者の気分を害する場合もあるため、方法やタイミングを考慮する。

 

⑥インフォームド・コンセント

経鼻胃管管理のすべての過程でいえることだが、患者に対して適切なインフォームド・コンセントをしなければならない。

患者は消化管に何らかのトラブルを生じ、すでに心身ともに悪条件にあるなかで、さらに侵襲を伴う医療行為を長期的に強いられる。この点を常に念頭においてケアにあたる必要がある。

 

Column:看護師として、患者として

今回の執筆依頼にあたり、奇しくも自分の身に起こった出来事が参考になろうかと振り返った。筆者が体験した緊急開腹洗浄ドレナージ・ストーマ造設術後の経過・状況の一部を紹介する。

***

◆31歳、直腸癌に対し腹腔鏡下直腸低位前方切除術施行。術後5日目、急激な下腹部痛に見舞われ、縫合不全による急性腹膜炎の診断により緊急開腹洗浄ドレナージおよびストーマ造設術を施行した。

◆ドレナージ術後1日目:創痛強く、鎮痛薬・鎮静薬を使用し、離床は何とか歩行で自室から出る程度。吻合部・横隔膜下に計4本のドレーンが挿入され、それに伴う疼痛・不快感・呼吸抑制感が強い。

◆ドレナージ術後2日目:離床不全、腹膜炎の影響などで腸管蠕動回復遅延状態になる。嘔気、腹部膨満、呼吸困難は増強。主治医の指示にて経鼻胃管挿入となる。胃内容物が300mLほど吸引され一時的に症状軽減したが、根本的には改善せず。経鼻胃管挿入による不快感・呼吸苦が増強。5分おきにナースコールし苦痛を訴える。鎮静薬を点滴しいったん落ち着くが、苦痛が再燃増悪。「早く抜いて!苦しい!息ができない。もうおなかの管も全部苦しい!自分で抜くよ」などと訴え不穏状態となり、経鼻胃管挿入後1時間で抜去となる。

◆術後直後より本人を含めた疼痛コントロール、離床計画が練られ、日に日に状況は改善する。その後も医療チームから適切かつ献身的な治療・看護を受け無事退院。3か月後に人工肛門も閉鎖され、臨床現場に復帰した。

***

看護師である患者として術前から術後にかけても、現状を冷静に理解し行動する準備はしていたが、看護師としても患者としても耐えがたい場面に遭遇することになった(一部記憶にすらない)。看護師は医療者としての冷静な観察力・判断力・行動力をもつと同時に、患者の気持ちをとらえ支える人間性を備えなければならない。ときに、このいわば相反した特性を同時に発揮しなければならない。図らずもこの貴重な体験をし、患者を看護する難しさと重要性を再認識した。

どんな医療行為であっても、患者にとっては大きな負担であり不安も大きい。それを理解し、適時、的確なインフォームド・コンセントを行い、かかわっていく必要がある。

(宇佐美航)

 


[Profile]
高木正和
静岡県立総合病院副院長/消化器外科部長
宇佐美航
静岡県立総合病院看護部手術室

*略歴は掲載時のものです。

 


[引用・参考文献]


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

[出典]『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』(編著)窪田敬一/2015年7月刊行

ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版

著作権について

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