アルブミン(albumin、ALB)の読み方|栄養状態を読む検査

『エキスパートナース』2015年10月号より転載。
アルブミンの読み方について解説します。

 

菅野光俊
信州大学医学部附属病院臨床検査部技師長

 

アルブミンの基準範囲

  • 4.1-5.1g/dL

低下↓に注意!
脱水時は上昇↑する

 

アルブミンはどんなときに見る?

  • 栄養状態のアセスメントがしたいとき
  • 以下の疾患・状態が疑われるとき

慢性肝障害、炎症性疾患、悪性腫瘍、出血など

 

 

〈目次〉

 

アルブミンとは、アルブミンの読み方

臨床検査にはさまざまな項目が存在し、各種臓器の障害を特異的に検出することができる検査項目が多数存在します。臓器ごとの判断だけでなく、全身状態の変化を反映する検査項目があれば非常に有用です。

 

全身状態を総合的に判断するのに最も適していると思われる項目がアルブミンです。多くの場合、値が低下すれば患者は悪化している、上昇すれば回復していると考えられます。

 

血清アルブミン値の変化は、「供給」「産生」「組織体液分布」「異化・代謝」により生じ、肝臓で産生されたアルブミンが血中に入る量(図1-赤部分)と、血管外に出るか血管内で消費される量(図1-青部分)の差によって決まります。ただし血中の水分量にも依存するため考慮する必要があります。

 

図1血清アルブミンの変動メカニズム

血清アルブミンの変動メカニズム

 

病態に関係するこれらの量の増減を考えるには、後述する関連検査項目を総合的に解釈する必要があります。

 

 

(手順1)低値か高値かをチェックする

1低値であれば、まず5つの原因を想定する

低下する原因は、大きく分けると5つに分類できます(図2)。

 

図2アルブミン低下の原因

アルブミン低下の原因

 

「①タンパク摂取不足」「②タンパク合成障害」はアルブミンの合成に関与し、「③タンパクの異化亢進」「④タンパクの体外喪失」「⑤タンパクの体腔内漏出」はタンパクの消費に関与しています。合成と消費のバランスによって血清アルブミンの値が決まります。

 

低アルブミン血症を認めたとき、どの病態が考えられるかを検討する際にはアルブミンの値だけでは考えることはできず、複数の検査項目をあわせて検討することにより、病態に近づくことができます。

 

2高値の場合は、脱水を疑って対応する

血清アルブミン値が高値になるのは、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられます。なお、アルブミンが高値の場合は、尿素窒素(UN)、Na、Clが高値となることが多いです。

 

脱水により起こる症状(口渇、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、嘔気)などをあわせて見て脱水と判断し、水分摂取量と尿量のチェック(in-outバランス)などの対応をとりましょう。

 

(手順2)低アルブミン血症の場合、他の検査値を併用して原因を絞り込む

低アルブミン血症を認めたとき、「合成が低下している」のか、「消費が亢進している」のかを検討します。

 

1原因が「合成の低下」かを鑑別する

「①タンパク摂取不足」を疑い、貧血をチェック

食事が摂れない場合は、鉄の摂取不足にもなり、鉄欠乏性貧血を認めます。鉄の欠乏により、ヘモグロビン(鉄を材料として合成される)の含有量の少ない赤血球が産生され小球性貧血となると、ヘモグロビン(Hb)の低下と平均赤血球容積(MCV)の低下として現れます。

 

また、ビタミンB12や葉酸の不足により大球性貧血(核の成熟が障害され、巨大な赤芽球が生成されるのが特徴)となり、Hbの低下とMCV上昇を認めます。

 

これらは食事が摂れない場合だけでなく、消化吸収障害でも見られます。下痢、脂肪便、体重減少、るい痩、貧血などの症状が見られることが多いです。消化・吸収障害を鑑別するには、糞便中脂肪の検査が有用です。

 

「②タンパク合成障害」を疑い、肝機能の低下をチェック

合成が低下している場合、アルブミンと同じく肝臓で産生されている、コリンエステラーゼ(ChE)や総コレステロール(TC)も低下します。

 

肝障害がある場合は、アルブミン、ChE、TCの低下だけでなく、血小板の低下やALT、ビリルビンの上昇を伴うことがあります。血小板の低下は、肝硬変などにより門脈圧が亢進し、それに伴う脾静脈圧亢進と血流のうっ滞から脾臓が腫大し、脾機能亢進により血小板をはじめとする血球減少が起こるためです。ALTの上昇は肝細胞の破壊、ビリルビンの上昇は肝代謝能の低下によります。

 

2原因が「消費の亢進」かを鑑別する

「③タンパクの異化亢進」を疑い、炎症徴候をチェック

消費の亢進(侵襲に対する異化亢進)が起こっていないかどうかは、始めに炎症の有無と程度を検討します。CRP値で判断します。炎症があると肝臓でのCRPの産生が増加する一方、アルブミンの合成は低下し、局所での消費が亢進します。

 

「④タンパクの体外喪失」を疑い、あわせて失われる要素をチェック

次に体外への喪失を検討します。

 

腎臓から尿中への喪失は尿タンパクの有無をみます。尿中に大量にタンパクが失われている場合は、ネフローゼ症候群を考慮します。その場合、TCの高値を伴います。皮膚からの喪失、特に熱傷の場合は皮膚から水分が多く失われます。高ナトリウム血症がある場合には皮膚からの喪失を疑います。

 

出血がある場合は正球性の貧血を認めるため、Hbは低値になります。

 

「⑤タンパクの体腔内漏出」の可能性も考慮

胸水・腹水に漏出することでアルブミンが低下することもあります。

 

***

 

以上のように低アルブミン血症を認めた場合、複数の検査データを総合的に解釈することが1つの病態に近づくことになります。そのためにはここに解説した、1つひとつの検査データが変化するメカニズムを理解しておく必要があります。

 

(手順3)病態の改善・悪化を、検査値の推移から推測していく

病態が悪化すれば、アルブミンも低下していく

ほとんどの疾患の活動性が上昇すれば、血清アルブミンが減少する病態を含んでいるので、病態が悪化すればアルブミンは低下します。

 

逆にアルブミンが上昇すれば、疾患の活動性が低下したと考えて患者は回復していると判断します。

 

ただし、前述の通り血清アルブミン値は水分量の影響を受けるので、トレンド(傾向)で判断する必要があります。

 


[参考文献]

 

  • (1)久保田聖子,日高恵以子:栄養状態はどうか.本田孝行編:ワンランク上の検査値の読み方・考え方─ルーチン検査から病態変化を見抜く─第2版.総合医学社,東京,2014:41-48.
  • (2)平千明,松田和之:患者の全身状態の経過はどうか.本田孝行編:ワンランク上の検査値の読み方・考え方─ルーチン検査から病態変化を見抜く─第2版.総合医学社,東京,2014:49-53.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有©2015照林社

 

P.21~「アルブミン」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2015年10月号/ 照林社

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