最終更新日 2018/02/21

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは・・・

鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ、iron-deficiency anemia)とは、ヘモグロビンの構成要素の1つである鉄の欠乏で起こる貧血である。貧血の中で最も頻度が高く、約70%を占める。

 

原因

鉄欠乏の原因は(1)鉄の喪失(月経過多、消化管出血)、(2)鉄需要の増大(成長の著しい小児、妊娠中)、(3)鉄摂取量の不足(偏食、全摘後や萎縮性胃炎に伴う鉄吸収障害)のいずれかである。

 

臨床所見

貧血に共通する自覚症状(倦怠感・易疲労感、めまい・立ちくらみ、頭痛、眠気・集中力の低下、頻脈動悸息切れ)、他覚所見(皮膚および結膜の蒼白、心雑音〈収縮期駆出性雑音〉)がみられる。鉄欠乏性貧血に特徴的な症状・所見として、の変形(さじ状爪)や口腔・舌・咽頭粘膜の萎縮性炎症、氷食症(氷の大量摂取)がある。

 

検査所見

小球性貧血を呈し、血清鉄は低下、総鉄結合能は増加する。鉄の貯蔵に役立つタンパク質であるフェリチンは低下する。血小板数は軽度高値を示すことが多い。

 

鑑別診断

小球性貧血を呈する他の疾患として、慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease; ACD)、サラセミア、鉄芽球性貧血などがある。このうちACDは、感染症関節リウマチなどの慢性炎症性疾患・悪性腫瘍などに伴ってみられ、MCV(平均赤血球容積)低値および血清鉄低値を呈する点が鉄欠乏性貧血に類似するが、総鉄結合能の高値やフェリチン低値は認めない。

 

治療

鉄欠乏性貧血では、鉄欠乏の原因を突き止めてその治療を行うことが極めて重要である。

 

鉄欠乏性貧血の治療としては、鉄剤の投与を行う。鉄剤は原則として経口投与を行う。空腹時内服の方が鉄吸収はよいが、消化器系の副作用(嘔気・嘔吐腹痛など)が問題になる場合には食後投与とする。薬剤を変更しても消化器系副作用が強い、消化管に病変があり経口吸収が不良などの場合には鉄の経静脈投与を行う。

 

投与開始約1週間で網状赤血球増加、数週でヘモグロビン増加がみられるが、貯蔵鉄の正常化(フェリチンの正常化)まで数カ月は鉄剤投与を継続する。

 

食事に関しては、肉や魚など動物性食品中の鉄は、植物性食品中の鉄よりも吸収されやすいため、できるだけ動植物性食品から鉄を摂取することが推奨される。

執筆: 梶原道子

東京医科歯科大学医学部附属病院  輸血・細胞治療センター 副センター長/講師

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