2018年06月17日

肝膿瘍ドレナージ

ドレーン・カテーテル・チューブ管理 完全ガイド

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。
今回は肝膿瘍ドレナージについて説明します。

窪田敬一
獨協医科大学医学部第二外科教授

 

《肝膿瘍ドレナージの概要》

主な適応
細菌性肝膿瘍、アメーバ性肝膿瘍
目的
膿性排液のドレナージ、肝膿瘍の治療に伴う起因菌の同定や抗菌薬の選択、(必要時)洗浄
合併症
出血、気胸敗血症、腹膜炎、胸水、膿胸
抜去のめやす
排液量・性状、炎症反応と造影CTなどの画像検査で総合的に判断する
観察ポイント
排液・バイタル : 排液の性状・量の変化と同時に、バイタルサインの変化を観察する
呼吸状態 : 気胸や胸水を併発することがあるため、同時に呼吸状態も観察する
ケアのポイント
排液減少 : 敗血症を防ぐため、閉塞や逸脱が疑われる場合は医師によるドレーンの洗浄や造影検査を検討する
事故抜去 : 肝膿瘍の場合、発熱による不穏行動が生じやすいため、固定方法を工夫する

肝膿瘍ドレナージ

〈目次〉

 

肝膿瘍ドレナージの定義

肝膿瘍治療に伴う起因菌の同定や抗菌薬の選択のために、膿瘍内容の穿刺・採取や、それに引き続きドレーンを挿入する。

炎症反応高値や全身状態不良などの重症例や大きな膿瘍は、早急にドレーンの挿入が必要である。

 

肝膿瘍ドレナージの適応と禁忌

1肝膿瘍の病態

肝膿瘍とは、細菌やアメーバなどが肝臓に侵入し、肝組織の融解を伴う限局性の化膿巣である。

起炎菌が「細菌性」か「アメーバ性」かを鑑別することは、治療法選択の点で重要である。

 

①細菌性肝膿瘍

細菌性肝膿瘍の感染経路は、①経胆道性、②経門脈性(虫垂炎、大腸憩室炎など)、③経動脈性(敗血症)、④直接波及(胆囊炎など)、⑤医原性、⑥特発性などがある。

その頻度は、胆道と消化管の外科的吻合術後に発生する①経胆道性が多い。肝臓癌に対するラジオ波治療後などの⑤医原性も多い。

起炎菌は、大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌などである。

 

②アメーバ性肝膿瘍

アメーバ性肝膿瘍は、赤痢アメーバが原因である。以前は輸入感染症とされてきたが、最近は日和見感染や性行為感染によるものもある。

 

2肝膿瘍の診断

症状は発熱や倦怠感である。血液検査では、白血球数(whiteblood cell count:WBC)やC反応性タンパク(C-reactive protein:CRP)などの炎症反応の上昇が認められることが多い。肝胆道系酵素の上昇は軽度の場合もしばしばある。

複数発生の例もあり、他の肝腫瘍との鑑別の点から、診断は造影CT・MRIが重要である(図1図2)。

アメーバー性肝膿瘍の診断は膿瘍内容や糞便中の赤痢アメーバの証明か、血清免疫学的検査による。

図1造影CT画像による肝膿瘍の診断

造影CT画像による肝膿瘍の診断

 

図2MRI画像による肝膿瘍の診断

MRI画像による肝膿瘍の診断

 

 

3肝膿瘍の治療

細菌性肝膿瘍では、原因菌に感受性のある抗菌薬の投与が必須である。そのためには膿瘍内容液や血液からの細菌の同定が必要だが、大腸菌、クレブシエラを目標菌とした経験的な投与を行う場合も多い。

アメーバ性肝膿瘍の治療は、メトロニダゾールの投与が中心となる。

 

4禁忌

凝固薬内服中の患者は、休薬後の実施が望ましい。しかし、緊急で実施せざる得ない場合もある。

 

肝膿瘍ドレナージの挿入経路と留置部位

  1. X線透視の台上で施行する。被曝を避けるため、医師および介助する看護師はX線防護服を着用する。
  2. 穿刺ガイドを表示させた超音波で穿刺部位やルートを決め、穿刺部を消毒する。穿刺ルートは肝内の脈管を避け、胸腔を通らないようにする。肝表面に露出する膿瘍でも正常肝実質を通して穿刺することが重要である。
  3. 超音波ガイドで決めた穿刺点を、メピバカイン塩酸塩(2%カルボカイン®)で穿刺方向に腹膜まで局所麻酔をする。カテーテルの径に合わせ、皮膚をメスで切開し、皮下を剥離しておく。
  4. 超音波ガイド下に、18G穿刺針にて膿瘍腔内まで穿刺針の先端を進める。
  5. 穿刺針の内筒を抜き、注射器で内容を吸引し、膿瘍内容を確認する。
  6. ガイドワイヤー(0.035インチのラジフォーカス®ガイドワイヤー)を、X線透視下に膿瘍内腔に十分挿入する。
  7. 透視下に穿刺針を抜去し、ガイドワイヤーに沿わせて7Frのダイレーターで穿刺経路を拡張する。その後、7Frの糸付きρ型カテーテル(図3)を膿瘍内腔まで十分挿入する。
  8. 糸付きρ型カテーテルの糸を引き固定したあと、膿瘍内容を可及的に吸引する。この内容は細菌培養に提出する。
  9. 内容が引けなくなったところで、少量のアミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン注射液(30%ウログラフィン®、60%製剤を倍希釈)の膿瘍腔を造影する。透視下にドレナージが良好な位置にカテーテルを動かし、造影剤が吸引できるかを確認する(図4)。
  10. 糸付きρ型カテーテルを3-0ナイロン糸で皮膚に固定する(図5-①)。カテーテルは排液バックに接続し、皮膚固定部が直接引っ張られないように絆創膏固定を併用する(図5-②)。
  11. 固定後のカテーテルの位置を再確認し、X線画像を1枚撮影する。同時に気胸になっていないことを確認する。

図3糸付きρ型カテーテル

糸付きρ型カテーテル

 

図4ドレーン造影

ドレーン造影

 

図5肝膿瘍ドレナージの固定方法

肝膿瘍ドレナージの固定方法

 

肝膿瘍ドレナージの挿入後の検査と観察

CT検査で膿瘍のサイズの変化、ドレーンの位置やドレナージされていない膿瘍腔がないことを確認する(図6)。ドレナージされていない膿瘍腔にはガイドワイヤーを用いて適切な部位にドレーンを誘導したり、新たに別のドレーンを挿入する。

図6肝膿瘍のドレナージ後のCT画像

肝膿瘍のドレナージ後のCT画像

 

ドレーンの造影検査は、十分に炎症反応が沈静化した場合や、排液が急に減少した場合に施行する(図4)。造影検査では、膿瘍の縮小や膿瘍腔と胆管との交通の有無を確認できる。

抗菌薬の中止やドレーンの抜去のタイミングは、炎症反応と造影CTなどの画像検査で判断している(図6)。抜去時は、瘻孔からの出血や抜去後の貧血の進行に注意が必要である。

 

肝膿瘍ドレナージの合併症

1出血

穿刺による肝表面、肝内血管からの出血は、正常の肝実質を通す適切な穿刺経路の選択と、穿刺時の患者による息止めなどの手際のよいドレーン留置操作で予防する。胸壁、腹壁などの動静脈にも配慮する。

腸管穿孔、気胸などの可能性もある。

 

2敗血症・腹膜炎

敗血症や腹膜炎の予防には、穿刺~ドレーン留置まで、できるだけ膿瘍の内圧を上げず、穿刺経路から腹腔内への内容液の流出を抑えるように心がける。

 

3胸水・膿胸

穿刺経路が胸腔を通った場合や横隔膜下に膿瘍内容が漏れた場合には、胸水が貯留することがある。また、それらの排液が胸腔内に出ると膿胸となり、適切な排液や胸腔ドレナージが必要となる。

 

肝膿瘍ドレナージの利点と欠点

利点 : 肝膿瘍からの敗血症や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)などの合併症を早期に回避できる。また、起因菌などの原因検索が可能であり、適切な抗菌薬が選択できる。ドレーン造影により胆道との関係がわかる、などが挙げられる。

欠点 : ドレーン挿入に伴う局所の腹膜炎や、膿胸などの合併症が避けられない場合がある。

 

肝膿瘍ドレナージのケアのポイント

看護師が肝膿瘍ドレナージを管理するうえで最も大切なことは、ドレーン挿入の目的を把握することである。肝膿瘍は、敗血症、細菌性ショック、DICに移行し、致命的になることがある。そのため、病態を把握すると同時に、症状のアセスメントを行い、早期に患者の状態変化に対応することが求められる。

 

1穿刺による合併症の理解

穿刺当日は、穿刺に伴う穿刺ルートや肝実質・膿瘍からの「出血」が生じる場合がある(皮下や肝表面から生じる場合もある)。多くは自然に止血するが、ドレーンからの排液の性状・量の変化と同時に、バイタルサインの変化を観察する必要がある。

穿刺部位によっては、「気胸」や「胸水」を併発することがあるため、同時に呼吸状態を観察する必要がある。

 

2ドレーン留置中の観察

ドレナージ施行直後は、排液は少ないものの翌朝までは膿汁や血液まじりの排液が認められる。術後半日でまったく排液がなかったり、濃い血性の場合などは異常と考える。

ドレーン留置中は、定期的に排液の性状・量、発熱や体温などのバイタルサインを観察し、血液検査で白血球やCRPの変化をみることが重要である。

 

3ドレナージ管理のポイント(表1

表1患者の行動に合わせたドレーン管理のポイント

患者の行動に合わせたドレーン管理のポイント

 

肝膿瘍ドレナージは、体内にドレーンを留置することになるため、留置中の閉塞と脱落に注意をする。

 

①ドレーン閉塞の予防・対処

ドレーン閉塞により敗血症を引き起こす可能性があるため、排液量が急激に減少したときは、閉塞を疑い、必要であればドレーン洗浄や造影検査を実施する。

ドレーン洗浄は、排液の性状をみて実施を決める。濃厚な排液でドレーンが閉塞する可能性がある場合には、医師による生理食塩水を用いた1日1~2回の洗浄を施行する。ドレナージ直後や排液量が多い場合には洗浄は不要である。

ドレーンの屈曲による閉塞を防ぐため、ドレーンにねじれがないこと、ドレーンの固定の向きを適切にするなどの工夫も必要になる。特に、臥床時だけでなく、歩行時にも自然に排液が流出、落下するように固定する。

 

②ドレーン抜去の予防・対処

体動時にドレーンや排液バックが牽引されないように、固定糸が確実であるか確認すると同時に、患者の行動に合わせた固定の方法を考える。

患者の不穏行動による抜去が生じる可能性もあるため、患者の状態を総合的にアセスメントしながらドレーン管理をする必要がある。特に、肝膿瘍ドレーンを挿入する患者は、炎症反応が高値で発熱していることが多いため、患者の不穏行動が生じやすいことを理解してアセスメントする。

万が一、ドレーンが抜去した場合、肝膿瘍ドレーンは治療的ドレーンであり、再留置が必要になることが多い。早急に医師へ報告し、再留置などの対処を行う。

 


[Profile]
橋本雅司
国家公務員共済組合連合会虎の門病院消化器外科部長

江利山衣子
国家公務員共済組合連合会虎の門病院看護部看護師長

 

*略歴は掲載時のものです。


[引用・参考文献]

  • (1)炭山嘉伸:特集これだけは見逃すな!ドレーンの異常、とりあえず20を制覇しよう.消化器外科ナーシング2009;14(3):14-47.

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社

著作権について

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