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2017年04月09日

褥瘡に関するQ&A

症状に関するQ&A

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

今回は「褥瘡」に関するQ&Aです。

岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授

 

〈褥瘡に関連する症状〉

褥瘡に関連する症状

 

〈目次〉

 

褥瘡って何ですか?

持続的な圧迫を受けることによって生じる、皮膚と骨の間にある組織の障害を、褥瘡(じょくそう)といいます。圧迫が原因であるということがポイントです。

 

褥瘡ができるメカニズムは?

皮膚組織が持続的に圧迫されると、血流が悪くなって皮下組織が虚血状態に陥ります。そこに、皮膚の損傷を起こしやすくする様々な要因が絡み合い、虚血に陥った組織が障害され、褥瘡が発生します。

軽度の褥瘡は、皮膚の赤み〔発赤(はっせき)〕として観察されます。続いて水疱(すいほう)ができ、びらんを起こします。さらに圧迫が続くと、皮下組織、筋肉と組織の損傷が深くなり、壊死に陥った組織が脱落して潰瘍を形成します(図1参照)。

図1褥瘡発生のメカニズム

褥瘡発生のメカニズム

 

圧迫以外の褥瘡の発生に係わる要因は何?

健康な人は、寝ている時にも無意識のうちに姿勢や体位を変え、同じ部位が圧迫されないようにしています。ずっと同じ部位が圧迫されていると、痛みを感じるからです。

ところが、何らかの障害があって体位を変えることができなかったり、痛みが起こらなかったりすると、同じ部位が圧迫され続けることになり、褥瘡の原因になります。

例えば、運動障害があると、痛みを知覚しても身体を動かすことができません。知覚障害がある場合は、痛みそのものを感じることができなくなります。ほかには、脳卒中で昏睡に陥ったり、手術が長びいて麻酔をした状態が続いた場合など、意識障害がある時などが考えられます。

また、汗、尿や便の失禁などによって皮膚がふやけた状態〔浸軟(しんなん)〕になると、圧迫や、衣類・シーツのシワなどによる摩擦を受けた時に皮膚が損傷しやすくなります。

仙骨部に褥瘡が好発するのは、ここが皮下脂肪が少なく圧迫を受けやすい部位であると同時に、浸軟が起こりやすい部位であることが関係しています。高齢者は、加齢によって皮膚が萎縮したり皮下脂肪が減少したりし、弾力性が低下して皮膚や皮下組織が弱っています。そこにオムツを着用すると、尿や汗で濡れて皮膚が柔らかくなります。さらに圧や摩擦がかかると、軽い圧迫でも褥瘡ができてしまいます。

 

COLUMN皮膚・排泄ケア認定看護師

高度な実践能力を有する認定看護師の1つに皮膚・排泄ケア認定看護師があります。褥瘡や人工肛門などの瘻孔といった身体に生じるあらゆる傷と失禁が皮膚・排泄ケア認定看護師の対象になります。

5年以上の実務経験(うち3年以上の認定分野での実務経験がある)を含む人が、6カ月600時間以上の認定看護師教育課程を修了し、筆記試験による認定審査に合格すると取得することができます。

日本看護協会が定める認定看護の分野は、2016年1月現在、全部で21あり、ほかには救急看護、感染管理ホスピスケア、がん化学療法看護、糖尿病看護などがあります。

 

全身状態では、どんなことが褥瘡の発生に関係するの?

特に重要なのは、栄養状態です。栄養状態が悪いと、皮膚や皮下組織の抵抗性が弱まって褥瘡ができやすく、また、いったん褥瘡ができると非常に治りにくくなります。貧血は組織の酸素不足を招き、浮腫があると圧迫に対する組織の抵抗性が弱まります。糖尿病では、動脈硬化症が進行するので、血流が悪くなります。また、長期間にわたってステロイドを使用していると、皮膚が薄くなって細胞の増殖力が弱まり、褥瘡が発生しやすくなります。

 

褥瘡ができやすいのはどんな部位?

褥瘡は、体重による圧迫を受けやすく、皮下脂肪が少なく、皮膚のすぐ下に骨がある部位に好発します。仙骨部は、非常に褥瘡ができやすいところです。そのほかには、踵(かかと)や後頭部などにもしばしば褥瘡が発生します。

 

褥瘡はどうやってアセスメントするの?

褥瘡を見つけたら、深さ、感染の有無、壊死組織の有無を正しくアセスメントすることが重要です。褥瘡は、深さによってステージ1〜4の4つのグレードに分類されます(表1参照)。

表1NPUAPの分類

NPUAPの分類

感染の有無は、浸出液の量や周囲の発赤や熱感の有無から判断します。壊死組織が残っていると治癒が妨げられます。そのため、壊死組織がある場合には、圧をかけて洗い流したり、広範な場合は医師に切除を依頼します。より詳細なアセスメントには、日本褥瘡学会が開発した褥瘡状態判定スケールDESIGN-Rがよく用いられます。
また、治癒の過程のどの時期にあるかについてもアセスメントします。
褥瘡の治癒の過程は以下のように分類できます。

  • 黒色期:皮膚と皮下組織が壊死している状態
  • 黄色期:組織が壊死し、不良肉芽組織や膿などが現れた状態。多量の浸出液があり、感染の危険が高い時期
  • 赤色期:壊死組織が除かれ、下から肉芽組織が盛り上がってくる。治癒が近い
  • 白色期:赤い肉芽組織が欠落した組織を埋め、表皮形成が始まる。この表皮は周囲の皮膚より白っぽいのが特徴

 

用語解説DESIGN-R

DESIGN-Rは、褥瘡の深さ(Depth)、滲出液(Exudate)、サイズ(Size)、炎症・感染(inflammation/infection)、肉芽組織(Granulationtissue)、壊死組織(Necrotictissue)、ポケット(Pocket)のぞれぞれの項目に沿って評価するもので、各項目で小文字は軽度、大文字は重度を表します。また、各項目の評価をスコア化し、大きいほど重症であることを意味しています。
DESIGN-Rを用いることによって、ケアや治療の効果を客観的に評価することが可能になります。

表2DESIGN-R

DESIGN

 

褥瘡のケアはどうするの?

褥瘡は治療よりも、褥瘡を作らないこと、すなわち予防が何よりも大切です。褥瘡のなりやすさをスケール(ブレーデンスケール)を利用して定期的にアセスメントし、リスクに応じた予防的ケアを実施します。

褥瘡発生の最も重要な要因は、圧迫です。そのため、エアマットレスを使用したりして除圧します。衣類やシーツの素材や、シワによる摩擦にも気をつけましょう。

また、ベッドをギャッチアップしている時には、身体がずり落ちないように、角度に注意しましょう。一般に、30度が適切だとされています。

皮膚を清潔に保ち、尿や便で汚れやすい部位は特に清潔ケアを心がけます。

万が一、褥瘡を作ってしまったら、その状態に応じたケアを行います。創面の壊死組織を生理食塩水で洗い流し、創面を適切な被覆(ひふく)剤で覆い、湿潤環境を保ちます。ポケットを作っている場合には、ポケットの部分に壊死組織が残らないよう注意します。感染を起こしていない場合には、肉芽組織の増殖の妨げとなるため、消毒薬は使いません。ただし、浸潤環境が菌の増殖を促進し、治りが悪いようであれば、抗菌薬を内服することがあります。

また、褥瘡への感染防止も大切です。褥瘡が感染源になって骨への感染や敗血症を起こしてしまう場合もあるので、感染の兆候には十分に注意し、予防につなげます。創部のケアとともに、栄養状態や循環の改善に目を向けることも必要です。

 

用語解説ブレーデン・スケール

ブレーデン・スケール(Braden Scale)は、1986年、米国のブレーデン博士が開発した褥瘡発生予測に使用されるスケール(尺度)です。知覚の認知、皮膚の湿潤、活動性、可動性(体位を変える能力)、栄養、摩擦とズレの6項目について、1〜3ないし4点で採点します。その合計点数から、褥瘡発生の危険の高い人を予測するものです。点数が低いほど状態が悪く、褥瘡が発生しやすい状況にあります。日中のほとんどをベッドで過ごすようになったら、1度ブレーデン・スケールを用いて褥瘡発生の危険性を採点してみましょう。急性期は48時間、慢性期は2週間、高齢者は最初の4週間は毎週、その後は3か月に1回の頻度で採点します。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック』 (監修)岡田忍/2016年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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