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2016年12月25日

運動障害に関するQ&A

症状に関するQ&A

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

今回は「運動障害」に関するQ&Aです。

岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授

 

運動障害に関連する症状〉

運動障害に関連する症状

 

〈目次〉

 

運動障害って何ですか?

運動障害は、「運動麻痺」と「運動失調」に分けられます。それぞれ症状やメカニズムが異なるので、分けて説明します。

運動麻痺は、筋肉あるいはそれに命令を送る大脳皮質や脊髄、末梢神経の障害により、自分の意思で筋肉を動かせなくなった状態をいいます。

これに対して運動失調は、運動に関わる筋肉の動きを調整する機能が失われ、スムーズな運動が障害された状態を指します。

 

どうやって体を動かしているの?

まず、筋肉が動くメカニズムを理解しましょう。

身体を動かそうという意思が生じると、これが大脳皮質の運動野に伝わり、行おうとする運動に必要な筋肉を支配している運動ニューロンを興奮させます。

この興奮は、脊髄(脳神経の場合は脳幹)で次の運動ニューロンに伝わります(この運動野の運動ニューロンから脳幹・脊髄の運動ニューロンまでの経路を、錐体路〔すいたいろ〕といいます)。脊髄の運動ニューロンの運動神経線維は脊髄を出て末梢神経になり、支配している筋肉に神経筋接合部で命令を伝えます(図1)。

この時、神経線維の末端からはアセチルコリンが分泌されます。アセチルコリンは筋肉にある受容体に結合し、筋肉の収縮を起こします。これによって身体が動くのです。

 

図1体を動かす仕組み

体を動かす仕組み

 

 

脊髄の運動ニューロンは、運動野の運動ニューロン以外に、大脳基底核や小脳の神経細胞からも信号を受け取っており、これは目的の運動をスムーズに行うために重要です。

また、筋肉の収縮の様子は、筋肉にある筋紡錘(きんぼうすい)という構造によって感知され、その情報を受け取る神経細胞と脊髄の運動ニューロンとの間には連絡があります。この連絡により、例えば物をつかむ時、つかむ物の硬さや重さに応じて指の力の入れ具合を変える—といったように、目的の運動に応じた筋肉の収縮の調節が可能になります。

このほか、歩く時には意識しなくても腕が振られるといった自動的な運動には、大脳皮質の運動補足野という部分が関係しています。泳ぐ、自転車をこぐといった学習された運動プログラムは、この運動補足野に記憶されると考えられています。

 

運動麻痺の原因になる疾患は?

運動野の運動ニューロンから筋肉に至るルートのどこかに障害があると、運動ニューロンの命令が筋肉に伝わらなくなり、運動麻痺が起こります。

代表的なものは、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、脳腫瘍などによる錐体路の圧迫です。

ダメージを受けた箇所により、麻痺が現れる部位が異なります。

交通事故や転落などの外傷による脊椎損傷では、損傷される脊髄の位置によって麻痺の範囲が決まります。

頸椎捻挫(ねんざ)で上部の頸髄が損傷すると全身麻痺(四肢麻痺)、腰髄より下の損傷では下肢の麻痺が起こります(下肢麻痺、単麻痺)。末梢神経が切断された時は、切断された神経の支配する筋肉に麻痺が現れます(単麻痺)。筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患では、運動ニューロンが徐々に変性していき、それに応じて次第に麻痺が進行していきます。

また、重症筋無力症では、神経筋接合部で筋肉に命令を伝えるアセチルコリンに対する抗体ができます。これが筋肉のアセチルコリン受容体とくっついて、アセチルコリンの結合を妨害するために神経からの命令が筋肉に伝わらなくなり、麻痺が起こります。

 

脳血管障害では、どうして片麻痺が起こるの?

片麻痺とは、片側の上肢や下肢が麻痺することをいいます。脳血管障害では、しばしば病変部と反対側の上肢や下肢に片麻痺が起こります。

これは、脳出血や脳梗塞の好発部位である大脳基底核や視床のすぐ近くに運動野の運動ニューロンから出た運動神経(錐体路)の通り道である内包(ないほう)が位置しているためです。

運動神経は内包を通った後、延髄の錐体で大部分が交叉して脊髄に至ります(図2)。そのため、内包が血腫で圧迫されたり、壊死や浮腫によって障害を受けると、ダメージを受けた部位と反対側に麻痺が現れるのです。

 

図2脳血管障害で片麻痺が起こる仕組み

脳血管障害で片麻痺が起こる仕組み

 

顔の筋肉や眼の運動が障害されるメカニズムは?

顔の筋肉や眼の運動は、脊髄を通らずに脳から直接出ていく脳神経によって行われます。

顔の筋肉のうち、表情に関係する筋肉は顔面神経、咀嚼(そしゃく)運動に関係する筋肉は三叉神経、舌の動きに関係する筋肉は舌下神経が支配しています。眼の動きを支配しているのは動眼神経、滑車(かっしゃ)神経、外転神経です。従って、これらの脳神経が障害されると、顔の筋肉や眼の動き、舌の動きに障害が出ます。

 

麻痺にはどんなタイプがあるの?

麻痺は、麻痺に陥った筋肉の緊張のタイプによって2つに分けることができます。

1つは、麻痺した筋肉を動かそうとしても全く抵抗が起こらない弛緩(しかん)性麻痺で、筋肉の緊張は失われています。

もう1つは、麻痺した筋肉を急に伸ばそうとすると抵抗が生じる、痙縮(けいしゅく)という現象がみられる痙性(けいせい)麻痺です。痙性麻痺では、筋肉の緊張は亢進しています。

両者の違いは、筋肉を動かす経路のどこが障害されるのかによって生じます。

筋肉は、脊髄での反射により、引っ張られると自動的に収縮し、適度な緊張を保つことができます。この脊髄の反射を伸張性反射といい、過度に伸張反射が起こらないように錐体外路系(用語解説参照)によって調節されています。脊髄の運動ニューロンよりも上位、すなわち脳が障害される場合は、錐体路だけでなく、錐体外路も障害されることが多いため、伸張反射の抑制が失われた結果、痙性麻痺が起こります。

これに対してより下位の筋肉や末梢神経、脊髄の運動ニューロンの障害では、伸張反射そのものが障害されてしまうため、筋肉を伸ばそうとした時に収縮は起こらず、弛緩性の麻痺になります。

痙縮と同じく筋肉の緊張が亢進した、固縮(こしゅく)と呼ばれる状態があります。痙縮が急速に筋肉を伸ばそうとする時にだけ抵抗が起こるのに対し、固縮ではゆっくり伸ばそうとする時にも強い抵抗が生じます。

麻痺のために筋肉を動かさずにいると関節や筋肉が線維化して固くなり、同じ位置から全く動かせなくなってしまいます。この状態を、拘縮(こうしゅく)といいます。

 

<用語解説>錐体外路

運動野の運動ニューロンから脊髄の運動ニューロンに、ダイレクトに命令が伝わる経路が錐体路です。

脊髄の運動ニューロンは、これ以外に、大脳皮質の運動前野や体性感覚野(反対側の皮膚感覚と深部感覚を受ける感覚野)から大脳基底核や脳幹部の神経核(神経細胞の塊、神経興奮の伝達の中継点)を経由する経路、小脳から脳幹部の神経核を経由する経路とも連絡しています。

この錐体路以外の経路を、錐体外路(すいたいがいろ)と呼びます。

錐体外路の機能は、随意運動を行う時に、眼や耳などの感覚器からの情報を受け、これに基づいて脊髄の運動ニューロンの興奮を調節し、感覚と運動の統合と協調を行うことです。

錐体外路の障害の典型的な症状はパーキンソン病にみることができます。

パーキンソン病では、筋肉緊張の亢進による仮面のように表情のない顔つき、姿勢反射の異常による特徴的な前屈姿勢、丸薬を丸めるような手の振戦、小刻みな硬い動きによる歩行がみられます。

 

錐体路と錐体外路

 

運動麻痺はどうやってアセスメントするの?

まず、筋肉とそれを支配する神経の関係を頭に入れておきましょう。そのうえで、麻痺の部位(上肢か下肢か、片麻痺か全麻痺かなど)、麻痺の性質(痙性麻痺か、弛緩性麻痺か)、麻痺の程度(少しは動くのか、全く動かないのか)などを観察し、障害が起きている場所を推測します。

顔面神経麻痺では、口角が垂れ(口角下垂/こうかくかすい)、水を飲もうとすると端からこぼれてしまいます。瞼が開きにくいのも特徴です。

病的な反射の出現の有無についても観察します。

代表的なのは、バビンスキー反射の出現です。足底の外側部を踵のほうから小指の方向にこすると、正常では親指が足底側に曲がります。これに対し、バビンスキー反射では逆に背屈します。錐体路障害で下肢が麻痺した場合などにみられます。

四肢の麻痺の程度は、徒手筋力テストなどを用い、客観的に表します。

 

運動麻痺のケアは?

麻痺のある患者は、程度の差はあっても身体が動かないことへの不安やストレスを抱えています。努力してリハビリテーションをしてもなかなか回復しないケースや、ALSのように麻痺が進行していく病気もあります。

そのため、精神的ケアがとても大切です。

また、麻痺した筋肉を動かさないままでいると拘縮が起きるので、予防が重要です。特に、尖足(せんそく/つま先立ちの状態のまま足の関節が固まってしまう)になると、歩行することができなくなります。

拘縮を防止するためには、膝を曲げる、足首を動かすなどの他動運動を行います。動かしていない時は、良肢位を保持するようにしましょう。様々な補助具を利用するなどして残された機能をフルに発揮し、できるだけ自立した生活ができるような援助をすることが大切です。

 

運動失調って何ですか?

運動失調とは、随意運動をスムーズに行うことができない状態をいいます。

随意運動がスムーズに行えるのは、視覚や平衡感覚など感覚神経から送られてくる情報と、筋肉を動かすという命令とがうまく統合され、随意運動にかかわる複数の筋肉が協調して動くことができるからです。

例えば、物をつかもうとする時には、意識しなくても対象物まですっと手を伸ばし、それをつかむことができます。これは、目から入った対象物までの距離や手の位置に関する情報が、間接的に腕や手の筋肉の動きを司る運動ニューロンにも伝えられ、それによって対象物の位置でちょうど手を止め、次に対象物をつかむように腕や手の筋肉が協調して動くからです。

運動の統合・協調に重要なのが、小脳と錐体外路(用語解説参照)です。

錐体外路と小脳は、感覚器からの情報を受け、これに基づいて脊髄の運動ニューロンの興奮を調節することで、運動の統合と協調を行っています。従って、この部位が障害を受けるとスムーズな運動ができなくなり、運動失調が起こります。やり方はわかっているし麻痺もないのに、うまくできない状態です。

なお、運動のやり方そのものを忘れてしまうことを「失行」といい、これは、運動の学習・記憶に関係するより高次の機能を司る連合野の障害によって起こります。

 

運動失調の原因になる疾患は?

小脳の機能が障害された時に、最も顕著に運動失調がみられます。運動失調の原因になる疾患としては、小脳出血や梗塞、外傷、腫瘍、脊髄小脳変性症などがあげられます。

錐体外路の障害の代表は、パーキンソン病です。パーキンソン病では、中脳の黒質(こくしつ)の神経細胞が減っていき、この細胞が作る神経伝達物質であるドパミンの減少がみられます。

 

運動失調ではどんな症状がみられるの?

小脳や錐体外路の障害では、以下のような特徴的な症状がみられます。

測定障害 距離感をつかめない現象をいいます。物をつかもうとする時に、目標を行き過ぎたり、手前をつかんだりしてしまいます。小脳の障害で起こります。
運動分解 2つの運動を一連の動作として行うことができず、1つの運動を行ってから次の運動を行うというように運動が分解されてしまいます。小脳の障害による運動失調に特徴的です。
体幹失調 何か支えがないと、眼を開けていても絶えず身体の軸が揺れることで、小脳の障害で起こります。
ロンベルグ徴候 眼を開けていると起立していられるが、目をつむると倒れてしまうものです。小脳ではなく、深部感覚(運動によって起こる筋肉が緊張しているという感覚)がうまく伝わらないことに原因があると考えられています。

 

運動失調のアセスメントは?

運動失調のアセスメントでは、『運動失調ではどんな症状がみられるの?』で述べた症状の有無を観察します。検査方法としては、指(しび)試験や踵膝(しょうしつ)試験があります(図3)。

図3指鼻試験と踵膝試験

指鼻試験と踵膝試験

 

指鼻試験とは、患者に人差し指で検査者の指に触ってもらった後、自分の鼻を触ってもらい、その運動を観察する方法です。小脳疾患による運動分解があると、検査者の指から鼻まで指を移動させる間に向きをかえることができず、途中で手を止めて指の向きを変えてから自分の鼻まで持っていきます。

また、踵膝試験は、仰臥位になり、検査をする足の踵を反対側の膝にのせ、トントンとたたいてからすねの上を滑り下ろすものです。失調があると、踵を膝の上に乗せることができず、膝を飛び越してしまったり、すねから外れたりします。

これらのほかに、小脳・錐体外路が障害された時に起こる特徴的な症状として、振戦(しんせん)があげられます。振戦は運動失調には含まれませんが、運動失調があると一緒にみられることが多い症状です。どこが障害されるかによって振戦のタイプが異なるので、運動失調のアセスメントを行う際には、振戦の有無やタイプの観察もあわせて行います。

 

運動失調のケアは?

運動失調のケアは、運動失調からくる転倒など、二次的な事故の防止が求められます。

転倒の防止のため、後ろからをかけたりしないようにし、ズボンの丈に注意したり、転びにくい履物をはく、手すりをつける、段差をなくすなどして環境を整備します。

また、運動麻痺と同じく、精神的なケアも大切です。残された機能を維持し、できるだけ自立した生活ができるよ うに援助しましょう。

 

コラム『振戦(tremor)、舞踏病(chorea)、アテトーゼ(athetosis)』

運動失調が随意運動の障害であるのに対し、これらの症状は 自分の意思とは関係なく手や足が動いてしまう、つまり不随意運動が出現してしまう状態です。

振戦は、身体の一部分の拮抗筋(きっこうきん/1つの運動に対して逆の働きをする筋肉、屈筋と伸筋)が交代で収縮することで、細かく規則的な動きがみられるのが特徴です。静止している時に出現する静止時振戦、活動時に表れる活動時振戦に分けられます。

アテトーゼは不規則なゆっくりした動きで、ある姿勢を維持しようとしたり、運動を行おうとする時に出現します。

舞踏病は、その名前の通り、踊るような動きが特徴で、アテトーゼよりも速い動きです。

アテトーゼ、舞踏病は、大脳基底核の病変と関係していると考えられています。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック』 (監修)岡田忍/2016年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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