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2016年12月18日

言語障害に関するQ&A

症状に関するQ&A

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

今回は「言語障害」に関するQ&Aです。

岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授

 

〈言語障害に関連する症状〉

言語障害に関連する症状

 

〈目次〉

 

言語障害って何ですか?

言葉を話したり、相手の話す言葉を理解したりすることの障害を、言語障害といいます。

なお、言語障害には、言語機能の障害だけでなく、言語発達の障害、聴覚障害によるものから構音・発の障害まで、非常に広い範囲の障害が含まれます。ここでは、特に成人の言語障害として重要な失語症を中心に述べます。

 

言葉を話すメカニズムは?

言葉を話そうとする意思が起こると、この命令は左前頭葉にある運動性言語中枢(ブローカ野)から運動野に伝えられます。そして、話そうとする言葉を発するのに必要な声帯や口唇、舌、口蓋(こうがい)、顎などの音声・構音器官の筋肉を動かし、言葉になります。

例えば、「リンゴ」と言おうとする時には、ブローカ野が「リンゴ」という言語の概念を、「リンゴ」と発音するために必要な筋肉の運動に変換し、運動野に伝えます。そこから発音に必要な声帯や口唇、舌、軟口蓋、顎などの各器官に命令が伝達され、「リンゴ」という言葉が発せられます(図1)。

図1言葉を話すメカニズム

言葉を話すメカニズム

 

さらに、「リンゴ」という音を正しく発音するには、声帯や口唇、舌、口蓋、顎などの音声・構音器官に障害がないことも必要です。

 

言葉を聞くメカニズムは?

「聞く」ということは、から入った音の情報を、言語として認識できることを意味します。聴覚野に入った音の情報は、感覚性言語中枢(ウエルニッケ野)に伝わります。そこで音が言語として認識され、聞いた言葉が何を意味するのかを理解します(図2)。

図2言葉を聞くメカニズム

言葉を聞くメカニズム

 

聞いた言葉を理解するためには、聴覚が正常であることが前提です。聴覚障害があると、言語機能にも影響を及ぼします。

 

言語障害にはどんなタイプがあるの?

言語障害には、①言語機能にかかわる脳の部位の病変により、いったん獲得された言語が失われてしまう失語症、②言語機能は正常なのに、音声・構音器官やこれらを支配する神経に障害がある音声障害・構音障害、③聴覚障害や知的機能の障害などにより、言語機能の発達が遅れる言語発達遅延—などがあります。

音声器官である声帯の障害によって起こる嗄声(きせい)は、言語障害の1つであるといえます。

 

失語症ではどんな症状がみられるの?

失語症では、程度の差はあれ、聞いたことの意味の理解に障害が起きます。また、自分の言おうとしていることとは違うことを言ってしまう錯語(さくご)、言葉(特に物の名前)が思い出しにくくなる喚語困難(かんごこんなん)がみられます。

失語症は、障害される部位によってさらに分類され、症状にも違いがみられます。代表的なものは、ブローカ野の障害による運動性失語と、ウエルニッケ野の障害による感覚性失語です(図3)。

図3運動性失語と感覚性失語

運動性失語と感覚性失語

 

運動性失語では、話していることは理解できますが、話そうと思う言葉がうまく出てきません。リンゴを見て、「これは何ですか」と聞かれた時には、質問の意味はわかるのでリンゴと答えようとします。しかし、何を言っているのかわかりにくかったり、話し始めるまでに時間がかかったりします。

感覚性失語では、聞こえた音を意味のある言葉として理解することができません。発語はできるのですが相手の話を理解できないので、会話がかみ合わなくなります。「いい天気ですね」というのに対し、「私の名前は○○です」と答えるなど、全く的外れの応答をしたりします。

そのほかには、復唱の障害が目立つ伝導失語、物の名前を思い出しにくくなる代名詞失語、「話す」「聞く」「読む」「書く」の全てが障害される全失語、言語野とほかの皮質領域との連絡が障害されて発語や意味の理解は乏しくなるものの復唱は保たれているという超皮質性失語があります。

 

失語症の原因は?

失語症の原因は、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、脳腫瘍や外傷、脳炎などがあげられます。また、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患が原因になることもあります。

 

構音障害はどんな時に起こるの?

構音障害は、発音に関する筋肉や神経が障害され、正しい音を発音できない状態です。

「ぱぴぷぺぽ」と発音してみてください。1音ごとに口唇を閉じているのがわかると思います。顔面神経の障害などで口唇に障害があると、「ぱぴぷぺぽ」と言いたいのに、「はひふへほ」になってしまいます。

このほか、発音に係わる筋肉・神経には、舌筋とこれを司る舌下(ぜっか)神経、軟口蓋(なんこうがい)とこれを司る迷走神経などがあります。舌下神経が障害されると舌がもつれ、舌を使う「ラ行」が発音できなくなります。迷走神経が障害されると軟口蓋が麻痺するため、「ガ行」の音のようにに抜ける音の発音が障害されます。

も、音を漏らさないためには重要です。前歯が欠損した場合には、歯のすき間から音が漏れるため、サ行の音がうまく発音できなくなります。

 

言語障害はどうやってアセスメントするの?

会話での受け答えを通じ、言語障害の種類(失語症なのか、構音障害なのかなど)をアセスメントします。

例えば、こちらの話すことは理解できているようなのに受け答えに時間がかかるようなら運動性失語、すらすら話せるのに会話がつながらないようなら感覚性失語、単に話していることが聞き取りにくいような場合は、構音障害ではないかと考えることができます。

失語症については、話す能力、聞く能力に加えて書く能力と読む能力を調べることにより、どのタイプの失語症なのかを推測することができます。麻痺など、言語障害以外の症状の有無や既往歴も、言語障害の種類を判断するのに役立ちます。

正確なアセスメントのためには、様々な言語検査(用語解説参照)を活用します。可能であれば、言語聴覚士のような専門家にアセスメントを依頼します。

<用語解説>言語検査

失語症の診断には、標準化された言語検査が使われます。聞く、話す、読む、書くといったすべての言語の様式についての能力を調べる総合的失語症検査では、失語のタイプや重症度を明らかにすることができます。現在、標準失語症検査(SLTA)、WAB失語症検査、老研版・失語症鑑別診断検査(DDA)の3種類が使用されています。

検査の内容としては、「聞く」に関しては、「聞いた単語や文章の絵を選ぶ」、「簡単な命令に従う」「はい・いいえで答えられる質問をして理解度をみる」という検査を行います。

「話す」に関しては、「開かれた質問で自発話を検査する」、「動物の名前などを制限時間内でできるだけ多く列挙する」、「絵を見てその内容を説明する」、「物を見て名前を答える」、「検査者の言ったことを復唱する」、「簡単な漫画の筋を説明する」といったものから構成されています。

そのほか、「読む」では単語や文章の音読の能力と読解力について、「書く」では自発書字、書き取り、単語の書称、写字の能力についての検査を行います。

総合検査には、通常2時間程度かかります。そのため、項目からいくつかをピックアップして15〜30分程度で行えるようにしたスクリーニング検査で、まず大まかに言語障害の全体像を把握します。

スクリーニング検査では、同時に発話の明瞭度や異常度といった構音や音声機能の評価を行うことができます。

 

言語障害のケアは?

言語障害のケアは、相手の言語障害の種類に適したコミュニケーションの手段を工夫し、お互いの意思がよりスムーズに伝わるように努めます。

失語症は、リハビリテーションによってある程度、回復するといわれています。そのためには話すこと、会話することがいちばん大事です。よい話し手、よい聞き手になるように心がけましょう。

なかなか言葉が出てこなくても余裕を持って待つ、「イエス、ノー」で答えられるように質問の仕方を工夫する、勝手に会話を中断して自分の解釈を押し付けない—などに注意します。

錯語があって言いたいことと言っていることが食い違う場合があることも、心に留めておきます。また、感覚性失語の場合は、こちらの話がきちんと伝わったのかを確認します。

落ち着いて会話できる環境を作ることも大切です。

構音障害も、リハビリテーションによって改善が期待できます。構音障害では、言っていることがうまく伝わらないことがストレスになることが多いので、書いてもらったり、短い文でゆっくり話してもらうなどの方法で、意思の疎通を図ります。

常にコミュニケーションを取っていれば、ある程度、相手の言わんとすることを理解することができるようになります。ただし、自分の解釈が正しいのかを必ず相手に確認するようにします。

リハビリテーションの結果、改善の傾向がみられて話せるようになってきたら、きちんと評価してあげましょう。

どんな場合でも、相手を尊重する姿勢を持ち、尊厳を傷つけないような配慮をすることを忘れないでください。

 

コラム『言語機能の男女差』

脳は、右と左でそれぞれ得意分野が異なっていることが知られています。右脳は空間的認知、左脳は言語や行為に対し、それぞれ優位性を持っています。

確かに、運動性言語野であるブローカ野は左前頭葉、感覚性言語野であるウェルニッケ野は左側頭葉と、どちらも左大脳半球に位置していますね。

いろいろな研究で、言語機能は女性のほうが優れ、男性は空間認知が優れていることがわかってきました。子どもを見ていると、女の子のほうが圧倒的に言葉を覚えるのが早いのも、うなずけます。逆に、空間認知機能が関係する、地図を読む、的にボールを当てるといったことは、男の子のほうが得意です。

ところが、実際の脳の働きや言語野の大きさをみると、男女差はありません。現在、研究者の間では、脳の性差はかなり疑問視されているということです。

なお、右脳が言語機能に関係していないかというとそうではなく、言葉に込められた感情を理解したり、逆に言葉に感情を込めたりする能力は、右脳の機能と考えられています。

 

⇒〔症状に関するQ&A一覧〕を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック』 (監修)岡田忍/2016年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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