嗄声(させい)に関するQ&A

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

 

今回は「嗄声(させい)」に関するQ&Aです。

 

岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授

 

患者からの訴え

  • 声がかすれます

 

〈嗄声に関連する症状〉

嗄声に関連する症状

 

〈目次〉

 

嗄声って何ですか?

「かれた声」や「かすれ声」というような、声の音色に関する異常を、嗄声(させい)といいます。

 

声が出る仕組みはどうなっているの?

声は、肺から出る呼気が声帯を振動させることによって生じる音です。声帯は、喉頭(こうとう)にあり、甲状軟骨の内側に位置しています。

 

図1発声のメカニズム

発声のメカニズム

 

声を出す時には、声帯は細いすき間を残して閉ざされます。ここを呼気が通る時に声帯が振動し、それが喉頭や咽頭(いんとう)で共鳴して音になるのです。草笛が鳴るのと同じ原理です。

 

声帯の閉じ方が不完全だと声帯がうまく振動せず、声がかすれます。これが嗄声です。

 

声帯が完全に閉じるために必要な条件は?

声帯が完全に閉じるためには、次の3つの条件が揃うことが大切です。

 

  1. 声帯の形状に異常がないこと。
  2. 声帯の開閉を行う筋肉が正常に収縮すること。
  3. ②の筋肉を支配する神経に異常がないこと。

 

声帯の筋肉を動かす神経は何ですか?

まず覚えておきたい名前が、「反回/はんかい(下喉頭)神経」です。

 

声帯の動きは複数の筋肉(喉頭筋)によって行われています。それらの大部分が、反回神経によって支配されています。反回神経は、第10神経である迷走神経から枝分かれしたものです(反回神経の障害って何ですか?参照)。

 

声帯がきちんと閉じたり開いたりするのは、反回神経を通して声帯に分布する筋肉が収縮するからなのです。従って、反回神経に異常があると、声帯の開閉が障害されて嗄声が生じます。

 

嗄声が起きる原因は?

嗄声の原因は、障害のある部位によって「声帯の器質的異常(声帯の形態が変化する場合)」と「声帯間の異物」、「反回神経の障害」に分類されます。まず、器質的異常から説明します。

 

風邪をひいた時に、声がかすれた経験があると思います。風邪の多くは、ウイルス感染による上気道の炎症です。喉頭が炎症を起こすと、声帯の粘膜にも充血や浮腫が起こり、声帯がぴったりと閉じなくなります。そのため、声がかすれるのです。

 

過度の喫煙や飲酒で声がかすれるのは、ニコチンなどの有害物質が喉頭粘膜に作用し、声帯の粘膜に慢性的に炎症が起きている状態です。

 

声帯に腫瘤が形成された場合も、閉鎖が障害されます。代表的なのは、歌手のように声を出す機会が多い人にみられる、声帯ポリープです。大きな声を出して声帯が過度に緊張したり、声帯を振動させている状態が続いたりすると、声帯が炎症を繰り返し、これがポリープの原因になると考えられています。

 

声帯を好発部位とする喉頭癌も、嗄声の原因になります。

 

図2嗄声が起きる要因

嗄声が起きる要因

 

用語解説喉頭癌

喉頭に発生する悪性腫瘍。60歳以上の高齢者に発生することが多く、男性の発生頻度は女性の約10倍と、圧倒的に男性に多い癌です。

 

喫煙や大気汚染、過度の発声や慢性の炎症が原因だと考えられています。ほとんどが扁平上皮癌です。

 

発生部位により、声帯に発生する声門型、声門上部型、声門下型に分けられ、それぞれリンパ節転移や治療法、予後が異なっています。多いのは声門型で、比較的早くから嗄声が出現します。次いで多いのは声門上型です。症状としては、嗄声よりも、喉の異物感や嚥下痛がみられます。声帯は軟骨で囲まれ、リンパ管が乏しいので、早期に発見できれば放射線照射によって治癒が期待できます。しかし、進行したものでは、喉頭の部分切除や摘出が必要になります。

 

「声帯間の異物」は、誤って吸気時に気道に誤嚥された食物などが声帯をふさぐ場合です。

 

反回神経の障害って何ですか?

反回神経の最も上位の中枢は大脳皮質で、ここから出た命令は延髄の疑(ぎかく)を経由して、迷走神経として脳を出ます。その後、迷走神経は図のように左右の頸動脈に沿って下行し、右側は鎖骨下動脈の位置で分岐して右反回神経に、左側は大動脈弓の高さで分かれて左反回神経になり、大動脈弓を前から後ろに回り込んで気管と食道の間を上行して喉頭へ向かいます。

 

このように、脳を出てから反回神経として喉頭筋に至るまでに長い走行路を持つため、その途中に食道癌や胸腺腫、大動脈瘤などの病変があると、反回神経が障害されることがあります。

 

図3反回神経

反回神経

 

また、延髄の疑核の神経細胞に障害がある場合も、喉頭筋の運動が障害されて嗄声や嚥下困難が生じます。

 

原因としてALS(筋萎縮性側索硬化症)や脳腫瘍、脳血管障害などが考えられます。

 

COLUMN食道発声と人口喉頭

喉頭癌などで喉頭をすべて摘出してしまうと、声を出すことができなくなってしまいます。そのような時に声を出す代替手段として、食道発声と人工喉頭があります。

 

食道発声とは、「ゲップ」が出る仕組みを利用して、食道内に取り込んだ空気をうまく逆流させながら、食道入口部の粘膜のヒダを声帯の代わりに振動させて音声を発生する方法です。

 

人工喉頭は、器具を埋め込んで呼気を利用して発声するものや、声帯の代わりに電気式の音源を顎の下辺りに押し当てて発声するものなどがあります。

 

嗄声はどうやってアセスメントするの?

以下の点を確認し、嗄声の原因を推測します。

 

  1. どのような状況で起きたのか(急性か慢性か)
  2. 嗄声以外の病状はないか(風邪ではのどの痛みや熱、があり、異物を飲み込んだ時には呼吸困難がある。食道癌や延髄の障害の場合は、嚥下障害を伴うことがある)
  3. 生活習慣や環境はどうか(喫煙や飲酒の習慣、カラオケなどの趣味、大気汚染にさらされていないか)
  4. 職業(歌手や教師など、声を使う職業ではないか)
  5. 既往歴甲状腺疾患などで反回神経を傷つける可能性のある手術を受けたことはないか)

 

声帯の状態によって嗄声の特徴は違うの?

声帯にどのような変化が生じているかにより、嗄声の特徴は異なります。声のかれ方を聞き、ある程度の判断ができます。

 

重苦しい声(出すのがつらそうな声)の場合は、声帯全体が腫れていると考えられます。粗い声やガラガラ声の時は、ポリープを疑います。ガラガラ声に加えて金属的な響きがある時には、声帯が硬くなっているので、癌が疑われます。

 

嗄声はどうやってケアするの?

喉頭の炎症が原因の時は、熱いものや刺激物、アルコールやタバコを控えるように指導します。無理をして声を出すと炎症が長引くため、小声で話す、筆談を利用するなど、できるだけ声帯を休めます。炎症を抑える薬剤をネブライザー咳嗽・痰に関するQ&A参照)を用いて投与することもあります。

 

異物を飲み込んでいる時は、ただちに喀出(かくしゅつ)させます。嗄声は軽くとらえられがちですが、喉頭癌や食道癌が原因で起こることもあります。原因がわからない時には、詳しい検査を受けるように勧めることが必要です。

 

また、声がうまく出ないと、様々な不便がつきまといます。コミュニケーションの仕方を含め、生活上の工夫をアドバイスしましょう。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック』 (監修)岡田忍/2016年3月刊行/ サイオ出版

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