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2015年12月07日

救急看護と在宅看護、共有すべき課題とは?|「日本救急看護学会学術集会」リポート

【日経メディカルAナーシング Pick up】

 

救急医療と在宅医療。一見、対極にある両分野の間には実は密接な関わりがあり、共有すべき課題が数多く存在する――。

10月16、17日に佐賀市で開催された「第17回日本救急看護学会学術集会」では、救急看護と在宅看護のシームレスな連携の必要性を訴えるパネルディスカッションが開かれ、救急と在宅、それぞれに関わる看護師の間でこんな意見が交わされた。

(森下 紀代美=医学ライター)

 

救急ナースが在宅を訪問する意義

救急看護認定看護師と急性・重症患者看護専門看護師の資格を有する木澤晃代氏(日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程救急看護学科主任教員)は、筑波メディカルセンター病院勤務時代に、同病院の関連の訪問看護ステーションに働きかけ、訪問看護師と同行訪問を行った経験を報告した。

 

 「在宅に行く際には、救急の現場で問題になっていることを訪問看護ステーションの管理者に事前に伝え、どのような介入をすれば互いに効果的かということを何回か話し合った上で、同行訪問した」と木澤氏は説明する。

 

例えば、在宅療養中の70歳代の肺サルコイドーシス患者のケース。在宅酸素療法(10~14L/分)を施行してもなお呼吸困難感が強く、特に労作時はSpO2が95%前後(安静時)から87%にまで低下し、会話も途切れ途切れになる状態だった。本人の強い希望で在宅療養を開始したもののQOLの低下が著しいことから、木澤氏は同行した訪問看護師と共に、トイレまでの歩行距離やトイレ歩行時の呼吸困難の程度などを評価し、酸素消費量を最小限にするようなケア方法を提案し行いつつ、患者対して呼吸法を指導した。

 

日本看護協会看護研修学校の木澤晃代氏

「『病院内の医療の価値観』から脱却し、患者さんが生活者として在宅でどのような医療を受けることが必要なのか、知識を得ることが大切」と話す日本看護協会看護研修学校の木澤晃代氏。

 

長期入院患者の退院調整に木澤氏が関わったケースもある。生後5カ月の時に窒息から心肺停止に陥り、救命し得たものの低酸素脳症のため1年以上入院していた2歳の患児。人工呼吸器管理や経腸栄養など医療依存度は高いものの、母親の強い希望で、外出や外泊を経て退院となった。

 

小児の在宅医療にはケアマネージャーが不在であり、重症例の在宅移行は調整が難しい場合がある。このケースでは、退院後は2件の訪問看護ステーションが入ったが、入院当初から関わっていた木澤氏が在宅ケアの調整役を担った。患児は在宅療養中に呼吸状態が悪化し救急搬送されることが何度かあったことから、木澤氏は救急隊に働きかけ、最短で病院に到着できる搬送ルートの確認や緊急時に備えて自宅に備えておくべき機器などの調査も依頼したという。

 

 

高齢化による疾病構造の複雑化、生活背景に問題を抱えた患者の増加、医療・介護制度の複雑化により、病院で治療を受けた患者の在宅医療への移行には、多くの調整が必要な場合が多い。一方で、在宅患者の救急搬送も近年増加傾向にある。

 

木澤氏は、「救急看護と訪問看護の対象患者は、急性期や回復期・慢性期といった病期に違いはあっても、共に『生活者』であることに変わりはない」と指摘。「病院にいる私たちが医療は病院だけでは完結できないことを認識して、『病院内の医療の価値観』から脱却し、患者さんが生活者として在宅でどのような医療を受けることが必要なのか、知識を得ることが大切だ」と話した。

 

大切なのは医療者間の「つなぐ」思い

「患者の生活を理解した上で、より良いケア提供につなげたい」。そんな思いから、病院から在宅へと自身の活動の場を移した看護師もいる。薬院内科循環器クリニック(福岡市中央区)の土倉万代氏だ。

 

薬院内科循環器クリニックの土倉万代氏

薬院内科循環器クリニックの土倉万代氏は、「救急医療と在宅医療の共通点は、目前の患者さんの緊急度・重症度を評価する必要があること」と語る。 

 

昨年まで済生会福岡総合病院の救命センターで救急看護認定看護師として働いていたが、在宅での看取りを希望していた患者や延命処置を希望しない患者が救急搬送されたり、慢性疾患の患者が繰り返し搬送される現状に疑問を抱き、在宅へ転向。今年から機能強化型在宅療養支援診療所の看護師として在宅医療に従事している。

 

土倉氏は、病院勤務時代に経験した印象に残っている患者について紹介した。

急性腹症で搬送された80歳代の男性のケースだ。主訴は腹痛で腹部板状硬を認め、検査の結果、便秘症が原因であることが分かり、主治医からは緩下剤が処方され、自宅療養が勧められた。しかし、土倉氏が自宅での過ごし方について患者に尋ねると、野菜など繊維質の摂取が少ないこと、トイレの回数が増えることを気にして水分摂取が少ないこと、妻が仕事のため日中は一人で過ごし、歩行は可能だがほとんど外出せず、筋力低下による転倒のリスクがあること、さらにトイレが和式で排便時に力むことができないこと、かかりつけの医療機関はないこと――などが判明した。

 

「再び救急搬送とならないように、この患者さんの今後の経過観察を誰かに引き継ぎたいと感じた」と土倉氏は振り返る。こうした経験も、在宅転向へのきっかけになったという。

 

 

救急医療と在宅医療の両方を経験した土倉氏は、「両者の共通点は、目前の患者さんの緊急度・重症度を評価する必要があることだ」と話す。ただし、病院は非日常的な空間で看護師などの医療従事者が交代制でケアに当たるのに対し、在宅は日常的な空間で家族が看護師やヘルパーのサポートを受けながら看護・介護を続けるといった違いがある。そのため、「在宅での緊急度は、疾患の緊急度だけでなく、患者の意思や家族の不安によっても日々変化することから、患者背景を踏まえた判断が必要になる」と土倉氏は説明する。

 

もともと在宅での看取りを希望していた家族であっても、迷いや不安を抱えながら介護を続ける中で、結果として救急搬送を要請してしまうこともある。また、延命処置を望んでいないはずの在宅患者が救急搬送される背景には、在宅医療開始前に患者や家族が病態を正しく認識していなかったり、在宅での今後の見通しについて事前に話し合えていなかったりといった問題が潜んでいる場合もある。繰り返し救急搬送される慢性疾患患者の中には、緊急時に受け入れてくれる後方支援病院があることで、患者や家族が安心感を得ている場合もある。

 

在宅の現場で働くことで、救急看護師として働いていた時には分からなかったこうした一面が分かり、だからこそ、在宅と救急のシームレスな連携の必要性を実感したという。土倉氏は「最も重要なのは、連携に関わる一人ひとりに、『つなぐ』という思いがあること」とし、そのためには、「患者に関わる全ての人や環境を知ること、専門職種の役割を知りお互いに歩み寄ること、制度・社会資源を正しく理解することが必要だ」と話した。

 

「最期を家で」を叶える看護小規模多機能型居宅介護

さらに、病院と在宅の間をよりスムーズに「つなぐ」ための仕掛けとして、看護師が手掛ける新たなサービスも広がりつつある。

通所・宿泊・訪問介護に訪問看護を加えた「看護小規模多機能型居宅介護」だ(2015年4月に「複合型サービス」から名称変更)。佐賀県看護協会訪問看護ステーションの訪問看護サポートセンター長の上野幸子氏は、同ステーションが運営する「看護小規模多機能型居宅介護 ケアステーション・野の花」の取り組みを報告した。

 

佐賀県看護協会訪問看護ステーションの上野幸子氏

「利用者と家族の“最期まで家で”との思いを支えることができる」と看護小規模多機能型居宅介護の効果を語る佐賀県看護協会訪問看護ステーションの上野幸子氏。

 

同ステーションは、22人の訪問看護師を抱える比較的規模の大きなステーションだ。訪問看護利用者は月平均130人で、年間30~50人の在宅患者を看取っている。悪性腫瘍や神経系疾患を抱えた利用者が約半数を占めるが、上野氏らはこうした重度の患者が、家族のレスパイト目的で介護施設の短期入所を利用した後に、褥瘡の悪化や摂食嚥下機能の低下など状態が悪化する事態をこれまで何度も経験してきた。

 

そこで上野氏らは、脳血管障害後遺症、認知症、難病などを有する重度要介護者または癌終末期など、常時看護師による観察が必要な状態の者を対象にした宿泊のできる施設のモデル事業に参加。この新たなサービスの形は制度化され、2013年の「看護小規模多機能型居宅介護 ケアステーション・野の花」のオープンにつながった。開設から1年間でのべ152人が利用し、20人が亡くなったという。

 

これまでに受け入れてきた患者の中には、癌の終末期の患者のほか、侵襲性肺アスペルギルス症で両側生体肺移植後に人工呼吸器を装着し、最期は自宅で過ごしたいと退院した40歳代の患者や、ALSで球麻痺をきたし、人工呼吸器は使用しないとのコンセンサスが得られた70歳代の患者などがいる。一方、ALSが進行し、胃瘻造設後に在宅療養となったが、同ケアステーションで摂食・嚥下リハビリテーションを継続した結果、食事の経口摂取が可能になった患者もいる。

 

「看護小規模型多機能型居宅介護は、癌の終末期患者にとっては、在宅緩和ケアを支援する場の拡大や在宅看取りに対する不安の解消につながり、病状や介護の不安への即時対応や、柔軟なサービスの提供、時間制限のない本人・家族の状況に合わせた支援、急性期病院からの退院先の選択肢の拡大につながる」と上野氏。「在宅ケアのノウハウを持つ訪問看護師の機動力を最大限に活かし、介護職との連携のもとバックベッドを持つことで、利用者と家族の“最期まで家で”との思いを支えることができる」と同サービスの意義を語った。

 

佐賀県ではITによる医療・介護関係者同士の情報交換が盛んで、同ケアステーションも利用状況や行事の様子を紹介するなど、多職種連携に活用しているという。「訪問看護の利用者が救急搬送されたことが訪問看護ステーションに伝わっていない時もあるので、今後はこうした県の医療情報ネットワークシステムを活用して、連携していきたい」と上野氏は話している。

 

<掲載元>

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