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2017年09月10日

スワンガンツカテーテル|スワンガンツカテーテルの適応・目的・合併症・ケアのポイント

ドレーン・カテーテル・チューブ管理 完全ガイド

『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。

今回はスワンガンツカテーテルについて説明します。

 

《スワンガンツカテーテルについて》

主な適応
・重症の左心機能低下患者
・急性心不全患者、慢性心不全の急性増悪時
・心臓手術後の患者
目的
心拍出量、肺動脈圧、右心房圧(中心静脈圧)、右心室圧および肺動脈楔入圧の測定による心不全や心臓手術後の血行動態評価
合併症
不整脈、深部静脈血栓症、肺動脈損傷
抜去のめやす
・検査時 : 心内圧・心拍出量・酸素飽和度測定終了後
・長期留置時:血行動態安定後、カテーテル感染が疑われるとき
観察ポイント
それぞれの波形を理解したうえで数値をチェックし、勤務帯ごとに加圧バッグの圧や0点の設定を確認する
ケアのポイント
長期留置時 : 深部静脈血栓症(DVT)や感染リスクに注意し、留置中はバルーンが収縮した状態でロックされているか確認する
固定方法 : 内頸静脈や大腿静脈は抜去しやすいため、固定方法を工夫し感染予防に努める

スワンガンツカテーテル

〈目次〉

 

スワンガンツカテーテルの定義

スワンガンツ(Swan-Ganz)カテーテルは、米国のJeremy Swan博士とWilliam Ganz博士により1970年代に静脈から挿入して右心カテーテル検査を行うために考案・開発され、臨床応用された多目的カテーテルである1

 

1カテーテルのしくみ

先端にバルーンが付いているため、血流に乗せて右心房、右心室を経由して肺動脈まで安全にカテーテルを進めることができるしくみになっている。

カテーテルの基本構造として、

a.カテーテル先端に開放する腔(図1- a

b.右房内に位置する側孔に開放する腔(図1- b

c.バルーンに開放する腔(図1- c

の3つの腔を有している(図1)。abにより肺動脈圧、右房圧(right arterial pressure:RAP、中心静脈圧)の長時間モニタリングが可能である。

図1スワンガンツカテーテルの構造と機能

スワンガンツカテーテルの構造と機能

 

 

2カテーテルの特色

スワンガンツカテーテルは、以下の2つの血行動態指標を測定できる点に特色がある。

 

①肺動脈 楔入 せつにゅう

スワンガンツカテーテル先端のバルーンを拡張して肺動脈内を末梢に進めていくと、最終的に肺動脈の小さな枝を拡張したバルーンで閉塞することになり、カテーテルの先端圧は左心系の肺静脈圧を反映する。このときの圧を肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure:PCWP)といい、肺血管床に病変がない場合には、左房圧(left arterial pressure:LAP)と近似し、さらに僧帽弁に問題がなければ左室拡張末期圧(left ventricular end-diastolic pressure:LVEDP)と近似することになる。

左室拡張末期圧は左室機能が低下すると上昇する。つまり、右心カテーテルを用いて肺動脈楔入圧を測定することによって、左室機能をリアルタイムに評価することができる。

 

 

②心拍出量

スワンガンツカテーテルは、先端にサーミスター(温度センサー、図1-②)を装備している。

右房に位置する先端から30cmの部位に冷水の注入孔が開いており、ここから注入された一定量の冷水が右房・右室で混和され、還流量(心拍出量)に応じた温度変化として感知されるようになっている。つまり、還流量が多ければ温度変化が少なく、還流量が少なければ温度変化が大きくなる原理を用いて、心拍出量(cardiac output:CO)が算出される。

 

スワンガンツカテーテルの適応・禁忌

前述したように、スワンガンツカテーテルにより右心系の圧に加え、左房圧・左室拡張末期圧の推定値ともいえる肺動脈楔入圧および心拍出量の測定が可能である。このため、同カテーテルを肺動脈に留置し、冠疾患集中治療室(CCU)において重症の左心機能低下患者の血行動態評価・モニタリングを持続的に行うことができる2

急性心不全患者の血行動態評価を行う際には「Forrester(フォレスター)分類」(図2)がよく用いられる。もともと急性心筋梗塞患者における血行動態評価に用いられる分類であったが、現在では心筋梗塞以外の急性心不全や慢性心不全急性増悪時の血行動態評価に幅広く用いられている。

図2Forrester分類

Forrester分類

 

スワンガンツカテーテルは、静脈アプローチで施行でき、血行動態を計測する際にも造影剤などは必要ない。そのため、安全性に関してはほとんど問題がなく、基本的に禁忌症例は存在しないと考えられる。

 

スワンガンツカテーテルの挿入経路と留置部位

スワンガンツカテーテルの挿入を行う際、①内頸静脈、②大腿静脈、③鎖骨下静脈、④尺側皮静脈からのアプローチが可能である。

しかし、③鎖骨下静脈からの穿刺には気胸のリスクがある。また、④尺側皮静脈はあまり発達しておらず、攣縮によるリスクや血管自体に個体差がある。手技的にも他部位とくらべ容易ではないため、あまり使用されていないことから、一般的には①内頸静脈か②大腿静脈が用いられる。

 

1内頸静脈アプローチ

内頸静脈からは右房・右室へのカテーテルの走行が素直なので、先端の圧波形を確認しながら容易に肺動脈まで到達することが可能である。そのため、CCUなどのベットサイドで非透視下に行うことができる。

 

2大腿静脈アプローチ

大腿静脈アプローチの場合は、透視下での挿入となる。カテーテル先端のバルーンを拡張させ血流に乗せて進めていけば、右室までは比較的容易にカテーテルは進む(図3)。

図3スワンガンツカテーテルの先端部位と圧波形(大腿静脈アプローチの場合)

スワンガンツカテーテルの先端部位と圧波形(大腿静脈アプローチの場合)

 

しかしながら、右室から肺動脈に上がりにくいことがあり、反時計方向のトルクをかけながらカテーテル先端が肺動脈方向を向いた瞬間を狙ってタイミングを合わせてカテーテルを進めるとうまく上がる。

スワンガンツカテーテルを肺動脈に進め、先端の圧が肺動脈楔入圧波形になったらバルーンから空気を抜く。その後、カテーテルを少し引き、バルーンを拡張させると肺動脈楔入圧波形が得られ、収縮させると肺動脈圧波形となる位置に固定する。

 

スワンガンツカテーテルの合併症

1不整脈

スワンガンツカテーテルが右室流出路を通過する際に、カテーテルの接触により「心室頻拍」などの不整脈が出やすいので注意が必要である。

 

2深部静脈血栓症

スワンガンツカテーテルを長期間留置する場合は、大腿静脈から挿入すると「深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)」から「肺血栓塞栓症(pulmonary thrombo embolism:PTE)」を起こすリスクが高まる。このため長期間の留置が予測される場合には、上大静脈経由で挿入し、禁忌がなければヘパリンを1万単位/日程度持続静注する。

 

3肺動脈損傷

スワンガンツカテーテルの長期間留置の際にカテーテルが先に進み、肺動脈の細い部分に自然と楔入している場合がある。そのまま先端のバルーンを拡張すると、「肺動脈損傷」を起こし致死的となることもあるため、先端バルーンを拡張する場合には必ず圧波形を確認することが大切である。

 

スワンガンツカテーテルの利点と欠点

スワンガンツカテーテルの利点は、肺動脈楔入圧の上昇(18mmHg以上)をうっ血の指標、心係数の低下(2.2L/分/m2)を心拍出量低下(ポンプ機能障害)の指標として、心不全症例や心臓手術後の症例における連続的な血行動態評価とすみやかな治療法の決定を可能にする点であろう。

これといった欠点はないが、長期間留置する場合には血栓源や感染源となるため注意する。

 

 

スワンガンツカテーテルのケアのポイント

1波形と数値の理解

スワンガンツカテーテル留置の目的は、血行動態指標をリアルタイムに測定し治療に反映させるためである。そのため、モニタリングされている数値が正しい値でなくてはならない。カテーテルの先端位置で圧波形が変わるため、波形を理解して数値を確認する(図3)。

 

2確認したい点

スワンガンツカテーテルは、加圧バッグ、トランスデューサーと接続しモニタリングしている。各勤務帯で加圧バッグの圧不足の有無やヘパリン加生理食塩水の残量を確認する。また、患者の第4肋間中腋窩線または前腋窩線の位置に0点を設定する。

スワンガンツカテーテルの先端に付いているバルーン(図1)は、カテーテルを末梢に進めるときや肺動脈楔入圧を測定する際に拡張させる。バルーンの長時間拡張や過剰な拡張は、肺動脈損傷や肺梗塞の原因になる。そのため、バルーン拡張用シリンジが、収縮した状態でロックされているか確認する(図4)。

図4留置時におけるバルーン拡張用シリンジの確認ポイント

留置時におけるバルーン拡張用シリンジの 確認ポイント

 

 

3固定方法

スワンガンツカテーテルの一般的な挿入部位である内頸静脈や大腿静脈は、体位変換やベッドアップなど体動による事故抜去のリスクが高いため注意する。

内頸静脈の挿入部位のフィルム固定は、下顎や襟足の髪により困難であることやカテーテルの重みで剥がれやすい(図5)。大腿静脈の場合は、排泄物による汚染の影響を受けやすい。その結果、感染のリスクが高くなるため固定方法などに注意し、清潔の保持に努める。

図5固定時のポイント(内頸静脈)

固定時のポイント(内頸静脈)

 

 


[Profile]
高橋潤
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学講師

雀地洋平
KKR札幌医療センター循環器センター主任看護師、集中ケア認定看護師

*略歴は掲載時のものです。



本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

[出典]『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』(編著)窪田敬一/2015年7月刊行

ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版

著作権について

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