経皮的心肺補助法(PCPS)《知っておきたい治療法②》

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』より転載。
今回は経皮的心肺補助法(PCPS)について解説します。

 

矢作由紀子
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

経皮的心肺補助法(PCPS)はどんな治療?

経皮的心肺補助法(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)は機械的循環補助の1つです。遠心ポンプと膜型人工肺を閉鎖式回路で構成する人工心肺装置により、大腿動静脈経路で心肺補助を行うものと定義され、「V-A ECMO」ともいいます(表1)。

 

表1PCPSの適応

PCPSの適応

 

図1にPCPSのしくみを示します。

脱血管:大腿静脈から挿入し右心房に留置します。
送血管:大腿動脈に留置します。
遠心ポンプの陰圧によって脱血し、人工肺で酸素化して大腿動脈に送血することにより、全身への灌流を維持することができます。

流量補助で心拍出量50~70%を補助することができます。

 

図1PCPSのしくみ

PCPSのしくみ

 

表2にPCPSの禁忌を示します。

 

表2PCPSの禁忌

PCPSの禁忌

 

PCPSのしくみ

PCPSにはミキシングゾーンと呼ばれるものがあります(図2)。大腿動脈から送血した場合、血液の流れは、通常と逆になり、心臓のほうへ戻るような流れになります。そのため、患者さんの肺で酸素化をした血液を送り出す流れとPCPSで酸素化された血液が交わる、つまりミキシングされる部分をミキシングゾーンといいます。

 

図2ミキシングゾーン

ミキシングゾーン、PCPS

 

ミキシングゾーンは、患者さんの心臓から駆出される量やPCPSの流量によって変化します。図1からわかるように右手側はPCPSの影響を受けにくく、患者さんの心臓の動きが反映されます。そのため、動脈ラインは右橈骨動脈に挿入し、SpO2モニターも右手に装着し、PCPSと右橈骨動脈の血液ガスデータの酸素化に解離があれば、自己心拍出量が維持されているか判断できます。

 

 

合併症には何がある?

出血

PCPS管理中は、血栓形成を防ぐために抗凝固療法を行っているので(ACTを流量2.0L/分以上のとき180~220秒、2.0L/分未満のとき250秒にコントロール)、出血の合併症に注意が必要です。穿刺部出血、後腹膜出血、肺胞出血などがあります。経時的血液検査のフォロー、X線撮影、エコー、CTなどの画像検査、全身観察を行います。

 

回路による溶血は肝酵素を上昇させるため注意が必要です。

 

下肢虚血

動脈へ挿入したカニューレにより、血流が十分に保てず虚血になる可能性があります。皮膚色、動脈触知による拍動の確認、下肢の冷感・チアノーゼを定期的に観察します。虚血が確認されたら血行再建を行う必要があります。

 

あらかじめ、送血管挿入部の末梢側に向けて4Frシースを挿入し、PCPS送血側と連結して下肢虚血を予防する場合もあります。

 

血栓塞栓症・空気塞栓

凝固能の亢進、流量の減少、PCPSの長期化に伴い、血栓が形成しやすい状態になります。脱血管、人工肺の観察が必要です。

 

回路や点滴ルートからの空気塞栓にも注意が必要です。

 

感染

さまざまな挿入物、全身状態の悪化によって感染に対する免疫力が低下しています。易感染状態にあるため、血液検査データ、X線撮影、全身の観察をします。

 

皮膚損傷

PCPS管理中は積極的な体位変換が困難なため、体圧分散式マットレスを使用し、褥瘡予防に努めます。また、定期的にマットレスと患者さんの身体の間に手を入れてプッシュアップしたり、踵を少し持ち上げるなどして除圧に努めます。

 

浮腫や乾燥など、皮膚が脆弱化していることが多いため、回路による医療関連機圧迫損傷(MDRPU)や、固定のテープによるスキンテアなど皮膚損傷に注意します。

 

皮膚を清潔に保ち、1日2回程度保湿剤を塗布します。

 

回路が直接接触しないように、クッション性のある皮膚保護剤の使用を検討します。

 

医療用テープは、消毒薬を拭き取る、または完全に乾燥してから皮膜剤で保護して貼付します。剥離剤を使用して愛護的に剥がします。

 

低体温

体外循環による低体温に注意が必要です。

 

機械・回路のトラブル

安全に管理するために、多職種によるチーム医療が必要となります。

 


文献

  • 1)澤芳樹代表監修:研修医,コメディカルのためのプラクティカル補助循環ガイド.メディカ出版,大阪,2007.
  • 2)新田隆監修:病態生理の理解に基づく 心臓血管外科の基本知識と患者ケア.総合医学社,東京,2017:75-79.
  • 3)山形泰士,道又元裕特別編集:基本から学べる体外循環 管理のポイントと看護ケアの実際.重症患者ケア 2015;4(3).
  • 4)武居哲洋,讃井將満責任編集:特集ECMO.INTENSIVIST 2013;5(2).
  • 5)西村元延監修,関口敦編著:CIRCULATION Up-to-Date Books 08 最新にして上々! 補助循環マニュアル.メディカ出版,大阪,2015.

 

 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら

 

> Amazonで見る  > 楽天で見る

 

[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護知識トップへ