トイレで急に立ち上がったら、意識消失した!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんがトイレで急に立ち上がったら、意識消失した場合について解説します。

岡村 英明

NTT東日本札幌病院 診療支援部 診療看護師室
診療看護師

 

 

患者がトイレで急に立ち上がったら、意識消失してしまい、その様子に焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

まず、手で触れ呼びかけて、意識を確認します。
視診によって顔色や表情、呼吸状態などを、触診によって皮膚の湿潤や脈の触知を確認し、重症度や緊急性を素早く判断します。
脈拍の確認は特に重要です。
「神経調節性失神」は、経過とともに「徐脈から頻脈へ変化する」ことが多く、発症直後の脈拍数がわかればその経時的変化が重要な手がかりとなるからです。

 

POINT
  • 「意識消失か意識障害か?」の見極めは重要です。
    失神は急速な脳虚血による「一過性の意識消失」ですが、意識障害の原因は多岐にわたります。
    見極めるポイントとしては、短時間(1~2分程度)で自然回復し、普段通りの意識に戻ったら失神の可能性が高く、意識が戻っても普段と多少でも違うなら意識障害を疑います。

 

 

起こった状況

症例

めまい、ふらつきを主訴に、貧血精査目的で入院中の高齢男性の患者Aさん。
ナースコールで呼ばれた看護師の見守りのもと病室のトイレへ入りました。
ドタンと音がしたので、看護師が慌ててドアを開けるとAさんが壁に寄りかかるように倒れ込んでいました。
Aさんは用を済ませ立ち上がったところ、意識を失って倒れたようです。

 

 

どうしてそうなった?

意識消失にはさまざまな原因が考えられます。
Aさんは貧血の精査目的で入院されており、離床の際は見守りなどの注意が必要です。
以前にも自宅で排尿後に倒れた既往があり、経緯から排尿に起因した状況失神(神経調節性失神)が疑われます。
失神の分類を表1に示します。

 

表1失神の分類

失神の分類をあらわした表

坂本壮:救急外来ただいま診断中!.中外医学社,東京,2015.より引用

 

どう切り抜ける?

1 意識レベルを含めた「第一印象」を評価する

手で触れて、はっきり呼びかけて、意識を確認します。
しっかり返事があれば気道は確保されていると考えられます。
また10秒以内に、視診によって顔色や表情、呼吸状態などを、触診によって皮膚の湿潤や脈の触知を確認し、重症度や緊急性を素早く評価しましょう。

 

2 応援を要請する

意識消失があることが確認されたら、その場を離れずに周囲のスタッフに声をかける、または緊急コールなどで人を集めましょう。
すでに意識は戻っていても、その原因によっては再び急変する可能性もあります。
その際十分な対応ができるよう人手を集めておくことは重要です。

 

3 脈拍を確認する

発症直後のバイタルサインは重要です。例えば、頻脈であれば貧血や脱水などによる「起立性低血圧」を、徐脈であれば「徐脈性不整脈」や「薬剤性」を疑います。
特に「神経調節性失神」は、経過とともに「徐脈から頻脈へ変化する」ことが多く、発症直後の脈拍数がわかればその経時的変化が重要な手がかりとなります。

 

また、意識消失する前に、眼前暗黒(ブラックアウト)や発汗など前駆症状があれば起立性低血圧や神経調節性失神が疑われ、前駆症状がまったくない、または胸痛や背部痛があった場合は心血管性失神の可能性を考えます。

 

4 外傷があるか確認する

トイレという狭い場所での意識消失なので、外傷がないか検索します(図1)。

 

図1失神では外傷が起こりやすい

失神では外傷が起こりやすいことをあらわしたイラスト

 

頭部は「見て、触れて」出血や腫脹、圧痛の有無を確認しましょう。
また、後頸部に痛みがあれば頸椎損傷が疑われ、頸椎保護が必要となります。
無理に動かさないように注意し、他スタッフや医師の到着を待ちましょう。

 

5 ベッドへ搬送する

意識が完全に戻り外傷がないことを確認したら、集まったスタッフとともに速やかにベッドへ搬送します。
失神後に座位や立位でいると脳虚血が進行し、痙攣に至ることもあります。
再発の可能性も考え速やかに移動しましょう。

 

その後の原因検索

その後に必要とされる原因検索の流れを確認しましょう。

 

1 心血管性失神を除外する→12誘導心電図、心電図モニター、心エコーなど

心血管性失神は見逃されると1年以内の致死率は18~33%に及ぶとされています。
原因は心室細動や完全房室ブロックといった不整脈心筋梗塞心不全大動脈解離肺塞栓などいずれも致死的疾患にて早期発見・対応が必須となります。
また、失神後は経過観察のためにも心電図モニターを装着しましょう。

 

2 出血性病変による起立性低血圧を除外する→動脈血ガス、直腸診など

起立性低血圧は糖尿病やアルコール性などの自律神経障害の他、脱水、貧血、消化管出血により生じます。
特に消化管出血など致死的疾患は見逃せません。
吐下血、眼瞼結膜蒼白の有無を確認し、直腸診を行います。
動脈血ガスは血糖値やHb値、酸素化換気、電解質異常など得られる情報が多く有用です。

 

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引用・参考文献 閉じる

1) 林寛之,今明秀:Dr林&今の 外来でも病棟でもバリバリ役立つ!救急・急変対応.メディカ出版,大阪,2019.

2) 坂本壮:救急外来ただいま診断中!.中外医学社,東京,2015.

3) 上田剛士:高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス第2版.シーニュ,東京,2020.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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