アナフィラキシー疑いで呼吸困難感があり医師からアドレナリン0.5mg筋注の指示が出たが、静脈内投与してしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、アナフィラキシー疑いで患者さんに呼吸困難感があり医師からアドレナリン0.5mg筋注の指示が出たが、静脈内投与してしまった場合について解説します。

山口 貴子

日本医科大学武蔵小杉病院看護部
クリティカルケア認定看護師

 

 

アナフィラキシー疑いで患者に呼吸困難感があり医師からアドレナリン0.5mg筋注の指示が出たが、静脈内投与してしまったことに焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

アナフィラキシーの経過は急速です。
直ちに対応をしなければ死に至ることもあります。
このような緊迫した場面では焦りが生じ、誤投与などが起こりやすくなります。
あらかじめ、起こりうる状況を予測しておくことは落ち着いた対応に結びつきます。

 

POINT
  • 院内で発生しやすいアナフィラキシーは、造影剤と抗菌薬です。
    それらを患者さんに投与する場合は、アナフィラキシーを起こす可能性を常に念頭に置き、ガイドラインを熟知し、適切な対応についてイメージしておくことが重要です。

 

 

起こった状況

症例

50歳代の男性Aさんは不明熱で入院し、原因精査のため造影CTの検査を行うことになりました。
造影剤投与直後、Aさんから呼気喘鳴を伴う呼吸困難の訴えがあり、バイタルサインを測定するとHR:120回/分、BP:88/50mmHg、SpO2:90%であり、アナフィラキシーショックを疑った医師は看護師に「アドレナリン0.5mg筋注と生食500mL全開投与」と指示しました。
看護師はあわてて薬剤を準備して投与しました。
すると、Aさんの意識レベルは回復し、呼吸困難も改善しましたが、今度は強い頭痛を訴えています。
バイタルサインを測定するとHR:140回/分、BP240/100mmHgと上昇していました。
看護師は、生食500mLを全開投与した際に、そのままアドレナリンを静注してしまったことを思い出し、どう対応したらよいかわからず立ちすくんでしまいました。

 

 

どうしてそうなった?

アドレナリンの筋肉注射はアナフィラキシーショックの第一選択薬です。

 

アドレナリンは交感神経のα・β受容体と結合し、血管収縮や強心作用、気管支拡張作用、メディエーターの放出低下作用を有し、作用は投与量・投与方法等に影響を受けやすいため、体重や年齢によって推奨される容量が決められています(表1)。

 

表1アナフィラキシー発生時のアドレナリン筋注の推奨用量

※緊急時、落ち着いて対応できるよう、自施設で使用している薬剤の名称で表を作成し提示しておく(例:ボスミン

0.01mg×体重Kg (最大投与量0.5mg)=ボスミン(1mg/mL)0.01mL×体重Kg

アナフィラキシー発生時のアドレナリン筋注の推奨用量を表した表

 

静脈内注射は筋肉注射に比べ最高血中濃度が高く、最高血中濃度到達時間が短いことが知られています。

 

この症例では、筋肉注射で投与されるべきアドレナリンが原液のまま静脈内に投与されました。
急激にアドレナリンの血中濃度が上がり血管収縮作用により高血圧が生じた状態です。

 

 

どう切り抜ける?

1 緊急に備え救急カートや薬剤の準備

血圧上昇に対してニカルジピン塩酸塩注射薬などの血管拡張薬を使用し作用を相殺させ降圧することも可能なため、医師が必要と判断した場合に速やかに対応できるよう薬剤の準備をしておきましょう。
しかし、アドレナリンは体内で速やかに不活化されるため(血中半減期3〜5分程度)、薬剤の使用で逆に降圧しすぎてしまう場合もあるため、あわてずに注意深く経過を観察することが重要です。

 

2 モニタリング

起こりうる有害反応を予測し早期に対応できるよう備えることが重要です。
アドレナリンの過剰投与では、α1受容体刺激作用による急激な血圧上昇により出血・急性肺水腫を引き起こす恐れがあります。
また、β1受容体刺激作用により、心収縮力を増強し心筋酸素需要量を増すため、心不全増悪心筋梗塞狭心症などの心筋虚血を引き起こす可能性や、不整脈を誘発し心室細動や心停止が起こる可能性があります。
これを念頭に置いて、HR、BP、SpO2呼吸パターン・尿量・意識レベル、また、胸痛や頭痛などの症状をモニタリングします。

 

3 それぞれの有害反応の対応の準備

1)脳出血

遷延する頭痛や増強する頭痛では注意が必要です。
意識レベル・神経学的所見(瞳孔異常・運動麻痺・構音障害など)を確認しましょう。
また、急激な意識レベルの低下に備えて、気管挿管等にも対応できるよう備えましょう。

 

2)肺水腫

肺水腫は過度の末梢血管収縮と心拍出量増大により、肺動脈圧の上昇、肺毛細血管ろ過圧上昇の結果起こります。
SpO2の低下や、呼吸困難感、聴診所見で肺水腫に特徴的なコース・クラックルやウィーズなど副雑音が聴取された場合はこれを疑い(図1)、NIPPV(非侵襲的陽圧換気:noninvasive positive pressure ventilation)の準備を行います。

 

図1副雑音(ラッセル音)の種類

副雑音(ラッセル音)の種類を表した図

Wheezes(ウィーズ)はアナフィラキシーや気管支喘息など気管支に狭窄が生じた際に聴取される副雑音であるが、肺水腫などでも聞かれることがあるため他の症状と合わせて観察する。

 

しかし、アナフィラキシーによる気道狭窄から引き起こされる呼吸器症状と間違えないように注意が必要です。

 

3)心血管系イベント

胸痛・嘔気など心筋の虚血を疑う症状があった場合は12誘導心電図を迅速に計測し、CK・CK-MB・トロポニンなど心筋逸脱酵素の上昇がないか採血を行います。
また、致死性不整脈に対しては迅速に対応できるよう救急カート・除細動の準備をします。

やむを得ず口頭指示で対応しなければならないような緊急時だからこそ、口頭指示メモ用紙などを活用し、指示の復唱を行い、確認作業を怠らず安全を担保しましょう(図2)。

 

図2緊急時の復唱(リードバック)と復唱確認(ヒアバック)

緊急時の復唱(リードバック)と復唱確認(ヒアバック)を表した図

 

 

目次に戻る

参考文献 閉じる

1) 日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン2022.

2) 古谷伸之:診断と手技が見える.メディックメディア,東京,2010.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ