褥瘡の看護計画の書き方とポイント【例文付き】|これでカンペキ!看護計画(3)

#看護計画の書き方 #便秘の看護計画 #統合失調症患者の看護計画 #転倒リスク状態の看護計画

 

この記事では、左大転子部に褥瘡ができた患者Cさんを例に、「褥瘡」の看護計画書を作成する方法を解説します。

 

 

看護計画書の見本


立案日:〇月△日 評価日:〇月〇日

看護診断


#2 褥瘡
 

患者目標
(outcome)

左大転子部の褥瘡の大きさが縮小する
自ら褥瘡を改善するための行動がとれる
 1)左側臥位以外の体位で過ごすことができる
 2)臥床時間を減らすことができる:食事のとき以外にもベッド上端坐位や車椅子坐位等で過ごすことができる

新たな褥瘡が発生しない

具体的な
看護計画

【観察計画(O-P)】
皮膚の観察
 1)左大転子部の褥瘡の確認:悪化はないか、疼痛の有無
 ※特に発生から1~3週間は急激に変化することがあるので注意
 2)DESIGN-R®2020での褥瘡経過評価の確認・把握
 3)骨突出部を含めた褥瘡好発部位の皮膚の観察:皮膚の色や表皮剥離の有無等
 ※車椅子の使用時間が長い場合等は尾骨部・坐骨部の褥瘡形成に注意
 4)皮膚の乾燥状態、浮腫の有無、創傷の有無、ドライスキンへのケアの効果の確認
 5)コルセット等によるMDRPU(医療関連機器圧迫創傷)の有無
栄養状態の観察
 1)血液検査の把握:Tp、Alb、Hb、Ht、preAlb、Tf、RBP
 2)体重測定(BMI確認) 1回/週

食事の観察
 1)食事摂取量・食欲の観察、食生活に関する情報の確認(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)

倦怠感・腰部痛等、活動性・ADLに影響を与える症状の有無
水分摂取量・水分出納バランスの確認(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)
ベッド上の体位の確認:左側臥位以外の体位で過ごすことができているか

【直接ケア計画(T-P)】
左大転子部の褥瘡に対するポリウレタンフィルムの貼付:摩擦・ずれからの保護
食事環境・食事内容の調整(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)
体位変換
 1)左側臥位を好んでいるため、右側臥位、仰臥位になるよう適宜声をかける
 2)患者自身で可能であるが、必要時には介助する
 3)左側臥位が続いてしまう時は、右側臥位にして背部にクッションを使用する
 4)窓からの景色を見るため左側臥位なのか等の理由を確認しながら、場合によっては、頭をベッドの足側に置き、右側臥位をとる方法も良しとする
 5)車椅子乗車への援助:座り方・姿勢の確認、体圧分散用具の使用

体圧分散用具の使用
 1)静止型ウレタンフォームマットレスの使用とするが、高齢者であり褥瘡予防の観点から空きがあれば交換圧切換型エアマットレスに変更
 2)車椅子乗車時は座面に体圧分散用のクッションを利用する

生活行動範囲の拡大とADL自立
 1)車椅子等を利用して気分転換に院内の散歩
 2)体調に合わせ、ADL自立に向けて、看護師の見守り付きで実施
 例:整容、椅子に座って食事、更衣、シャワー浴

スキンケア
 1)清潔保持のためのシャワー浴・清拭の実施
 2)ドライスキンへのケア:保湿剤を塗る(保湿剤は家族に依頼する)

患者本人の褥瘡悪化防止の取り組みに対する思い等を確認
NSTチームや褥瘡対策チーム、WOCナースとの連携
 1)上記チームに相談し助言をもらいながら必要なケアを追加、あるいは変更する
 2)各チームからの情報・助言を病棟内で共有し、実施するケアの統一を図る


【教育計画(E-P)】
褥瘡悪化を予防するために以下について指導し、協力を求める
 1)ベッド上で過ごす際には左側臥位での時間を減らす
 2)ADLの拡大・自立を目指す:更衣、整容、排泄、食事、シャワー浴等は順次看護師の見守り付きで院内での自立を目指す
 3)栄養状態改善の必要性と具体的行動(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)

新たな褥瘡が発生しない予防方法について理解できるよう指導する
 1)現在のCさんの褥瘡発生要因について:栄養状態、同一体位、骨突出、年齢
 2)褥瘡の予防のために今からできること:同一体位の回避、皮膚の清潔と保湿、自分の骨突出部の理解、ADL拡大と自立

評価

入院時よりも褥瘡の発赤の範囲は小さく、発赤の色は薄くなっている。また、新たな褥瘡もできていない。目標❶と❸は達成とする。

しかし、目標❷-1)では、自ら左側臥位を避ける様子はなく、こちらからの声掛けあるいは背部にクッションを置いて対応している。左側臥位の方が人と話したり、窓の外を見やすいことが一つの要因と考える。部屋移動等も検討したいが、環境の変化につながるため、現在の計画を続行とする。


ただ、倦怠感も改善してきて、食事摂取量も5割を超えるようになり、見守り・セッティングは必要であるが、更衣や整容、排泄も自ら実施できている。末梢静脈ラインも抜去となり、昨日は自ら希望してシャワーを浴びる等の様子もみられた。❷-2)は達成できたと考える。

以上のことから、自宅退院も視野に入れて、教育計画の実行に重点を置きながら看護計画は続行とするが、患者目標の❷を以下のように変更する。
目標❷褥瘡の改善・予防のために以下について実行できる
 1)左側臥位以外の体位で過ごすことができる
 2)見守りで、食事、排泄、更衣、整容、シャワー浴を自身で実施できる

 

Cさんの事例(架空の設定)はこちら。
Cさんの事例/Cさん(85歳女性)は、ある日突然、腰部の痛みを訴え、近医の整形外科を受診。腰椎圧迫骨折と診断されました。入院による ADL低下を懸念し、軟性コルセットを作り、自宅で経過を見ることになりました。  受診から1週間後、新型コロナウイルスワクチン接種後に発熱・倦怠感がみられました。発熱は 1日で落ち着いたものの、倦怠感は続き、また腰部の痛みもあり、ベッドで臥床していることが多くなってしまいました。 食欲もなくなり、家族や訪問介護のヘルパーと会話はするものの、次第に口数も少なくなっていったため、家族が心配し、1カ月後に医療機関を受診。脱水と低栄養と診断され、入院となりました。  入院翌日、看護師が全身清拭を実施すると、左大転子部に発赤を確認。看護師はその部位を押してみましたが、その発赤は消失しませんでした。

 

執筆:坂下貴子(淑徳大学看護栄養学部看護学科・同大学院看護学研究科看護学専攻 教授)
監修:茂野香おる(淑徳大学看護栄養学部看護学科・同大学院看護学研究科看護学専攻 教授)


 

褥瘡の看護診断

看護診断


#2 褥瘡
 

 

NANDA-I の看護診断では【成人褥瘡】という診断名がありますが、ここでは【褥瘡】という名称を挙げ、その看護計画を考えていきます。

 

Cさんの【褥瘡】という看護診断はすでに生じている問題ですので、「実在型の看護診断」です。

 

ここからは、患者Cさんに対し、【褥瘡】の看護診断を確定するまでの看護師の思考過程を見ていきましょう。

 

1 褥瘡に関する情報を収集する

左大転子部にできた発赤を褥瘡であると判断した看護師は、看護介入の必要性を感じ、褥瘡に関連した情報を集めることにしました。

 

大転子部に持続する発赤

 

ゴードンの機能的健康パターンに基づくアセスメントの枠組みにおける「栄養-代謝」を用い、アセスメント(情報収集と情報の分析)を行いました(アセスメント資料)。

 

収集した情報は次のとおりです。

 

収集したS情報とO情報

 

2 集めた情報から「現状の問題」を分析する

Cさんのゴードンのアセスメントの枠組みにおける「栄養-代謝」では、次のように分析していきました。

 

・Cさんは、入院後も食事摂取量は2~3割程度であり、基礎代量(931kcal)にも満たない。入院前から食事摂取量が少ないこともあり、Alb、BMI、Hb、1カ月の体重減少率から低栄養状態と判断できる。倦怠感や腰部痛による活動量低下が食欲不振を招き、さらに低栄養状態につながったと考える。低栄養状態の改善がない場合、倦怠感が助長され日常生活活動の低下や、易感染状態、低アルブミン血症に伴う浮腫にもつながる。

 

・口渇感がなく、これに伴い飲水が進んでいない。年齢に伴う渇中枢機能の低下が原因の一つと考えられる。食事量も飲水量も少なく、脱水の改善につながりにくい状況である。

 

・質問に対して短い返答はあり、見当識障害は認められない。食事摂取や飲水の必要性等についてはまだ理解していないと思われる。

 

左大転子部に押しても消失しない発赤があることから、NPUAP/EPUAPの褥瘡分類におけるステージIの褥瘡(消退しない発赤)である。


つまり、Cさんが低栄養状態にあること、水分摂取が進まないこと、食事摂取や飲水の必要性についての理解には至っていないこと、そして褥瘡が発生していることに着目することとしました。

 

ここからは、太字部分のCさんの「褥瘡」についての分析の続きを見ていきましょう。

 

3 現状の問題の「褥瘡の原因になるもの」を分析する

Cさんの現状の問題として「ステージ I 褥瘡」であると判断し、その褥瘡の原因になるものを4つ挙げました。

 

①倦怠感や腰部痛のために臥床生活となっていることに加え、左側臥位の同一体位により左大転子部に直接圧迫が加わっていること(外の景色や人の顔が見えるよう左側臥位にしている可能性あり)

 

②体重減少により骨突出が起きていること

 

③加齢に伴い皮膚の弾力性が低下し、骨突出部に圧迫が加わりやすくなっていること

 

④栄養状態の低下による貧血等により組織への栄養・酸素供給が低下していること

 

4 現状の問題の「なりゆき」を分析する

そして、このままの状態であると、Cさんがどうなるか(なりゆき)を次のように考えました。

 

褥瘡の悪化はもちろん、低栄養状態による易感染状態が起きれば、褥瘡部の感染を引き起こし、治癒を遅らせる。そして、褥瘡による疼痛や不快感、低栄養状態による倦怠感の要因も重なり、日常生活活動の低下をもたらす。

 

また、仙骨部にも突出があり、BMIからも他に骨突出があると予測され、さらに低栄養状態に伴う浮腫や、加齢および脱水による皮膚の乾燥傾向は、皮膚に圧迫やずれ、摩擦などによる損傷をもたらすことから、このままの状態が続くと、今後も褥瘡の発生の可能性がある。

 

5 Cさんの状況を「関連図」にする

Cさんの「褥瘡の原因になるもの」や「なりゆき」を考えるために作成した関連図は次のとおりです。

 

Cさんの関連図

 

 

6 看護診断を決定する

Cさんのアセスメントを終え、看護で解決すべき問題、つまり看護診断の決定をします。

 

ここでは、「褥瘡」を挙げるかどうか、最終判断をしていきます。

 

なりゆきである「褥瘡による疼痛」や「新たな褥瘡の発生」、「ADLの低下」は、入院前まで自立して生活していたCさんの生活の質を低下させます。

 

そして、時に低栄養状態に伴う「褥瘡部の感染」は、全身性の感染も引き起こしかねません。

 

しかし、褥瘡を看護診断として挙げることで、その回避はもちろんのこと、褥瘡の4つの原因にも介入するため、さまざまな効果が見込めます。そのため、「褥瘡」を看護診断として挙げ、介入していく必要があると判断しました。

 

集めたアセスメントの情報をもとに、「#2 褥瘡」の「症状や徴候」「関連因子(原因)」「なりゆき」を次にまとめました。

 

●症状・徴候:左大転子部の消失しない発赤

●関連因子(原因):皮膚の弾力性低下、体重減少=骨突出、同一体位(左側臥位)、栄養状態の悪化(低栄養状態)

●なりゆき:褥瘡部の感染、褥瘡による疼痛、新たな褥瘡の発生、ADLの低下

 

これらのアセスメントした情報をもとに、患者目標(outcome)や看護計画を考えていきます。

 

 

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褥瘡の患者目標

Cさんの患者目標は、下記の3つを挙げました。
 

患者目標
(outcome)

左大転子部の褥瘡の大きさが縮小する
自ら褥瘡を改善するための行動がとれる
 1)左側臥位以外の体位で過ごすことができる
 2)臥床時間を減らすことができる:食事のとき以外にもベッド上端坐位や車椅子坐位等で過ごすことができる

新たな褥瘡が発生しない

 

患者目標は、【褥瘡】の「症状・徴候」である左大転子部の押しても消失しない発赤を、看護介入によって改善させたいため、「左大転子部の褥瘡の大きさが縮小する」としました。

 

患者目標は、【褥瘡】の「関連因子(原因)」である同一体位(左側臥位)で過ごすことを回避したいため、「自ら褥瘡を改善するための行動がとれる」としました。ただし、この表現は、評価時に目標を達成したかどうかを評価しにくいと考え、Cさんにとっての具体的な内容を補足しました。

 

患者目標は、介入することで【褥瘡】「なりゆき」の一つである新たな褥瘡の発生を回避したいため、「新たな褥瘡が発生しない」としました。

 

 

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褥瘡の具体的な看護計画

看護計画においても、患者目標と同じように、Cさんの【褥瘡】の「症状・徴候」「関連因子」「なりゆき」の3つに対する具体的な介入方法を考えることが重要であり、これが個別性のある看護計画につながっています。

 

さらに、その患者さんの年齢や疾病、これまでの生活背景、価値観や信念を考慮して具体的な介入方法を考えることが、さらなる個別性のある看護計画につながっていきます。

 

1 観察計画(Observational Plan;O-P)

Cさんに挙げた観察計画は、以下のとおりです。

 

具体的な看護計画

【観察計画(O-P)】
皮膚の観察
 1)左大転子部の褥瘡の確認:悪化はないか、疼痛の有無
 ※特に発生から1~3週間は急激に変化することがあるので注意
 2)DESIGN-R®2020での褥瘡経過評価の確認 ・把握
 3)骨突出部を含めた褥瘡好発部位の皮膚の観察:皮膚の色や表皮剥離の有無等
 ※車椅子の使用時間が長い場合等は尾骨部・坐骨部の褥瘡形成に注意
 4)皮膚の乾燥状態、浮腫の有無、創傷の有無、ドライスキンへのケアの効果の確認
 5)コルセット等によるMDRPU(医療関連機器圧迫創傷)の有無
栄養状態の観察
 1)血液検査の把握:Tp、Alb、Hb、Ht、preAlb、Tf、RBP
 2)体重測定(BMI確認) 1回/週

食事の観察
 1)食事摂取量・食欲の観察、食生活に関する情報の確認(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)

倦怠感・腰部痛等、活動性・ADLに影響を与える症状の有無
水分摂取量・水分出納バランスの確認(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)
ベッド上の体位の確認:左側臥位以外の体位で過ごすことができているか

 

皮膚の観察

現在ある褥瘡の観察はもちろんですが、Cさんは今後も褥瘡が形成されやすいことを考えると、全身の皮膚の観察、特に褥瘡好発部位の観察が必須となります。

 

褥瘡好発部位(図1)は、その人の生活様式によっても変わってきますので、そのことも考慮して観察部位を決めます。  観察計画ー1)および3)

 

図1褥瘡の好発部位

褥瘡の好発部位

合わせて、褥瘡の経過を確認しながらケアを進めていくことが大切ですので、施設で使用されている褥瘡経過の評価ツール(例:DESIGN-R®2020〈日本褥瘡学会〉)を適宜確認しましょう。  観察計画ー2)

 

栄養状態の観察 および 食事の観察

低栄養に伴う低アルブミン血症は浮腫を引き起こし、皮膚の脆弱化のみならず、毛細血管から組織への栄養素の供給不足につながり、褥瘡の発生要因となります。

 

低栄養に伴う貧血も、組織への酸素供給不足をまねき、褥瘡発生要因となります。

 

また、褥瘡の治癒には、アルブミン、ヘモグロビン、亜鉛等の微量元素、ビタミンC等が必須です。

 

以上のことから、Cさんの褥瘡が改善し、また新たな褥瘡の形成を回避するためには、食事を摂取し、栄養状態を整えることが必要です。

 

そのため、栄養状態の観察や、そもそもの食事摂取量を観察することは必須となります。  観察計画❷❸

 

倦怠感・腰部痛等、活動性・ADLに影響を与える症状の有無

褥瘡の原因の一つに活動性の低下があります。

 

Cさんの場合は、新型コロナウイルスワクチン接種後からの倦怠感や腰椎圧迫骨折による腰部痛が活動性の低下につながっていると考えられました。そのため、倦怠感や腰部痛が継続しているのか、その他に要因はあるのか観察していくことが必要です。  観察計画

 

水分摂取量・水分出納バランスの確認

水分摂取不足や脱水は、皮膚の乾燥をもたらし、皮膚が乾燥すると創傷形成から褥瘡形成にもつながります。

 

そのため、水分摂取量・水分出納バランス、脱水症状等、その経過を確認していくことが必要です。   観察計画

 

ベッド上の体位の確認

今回の左大転子部にできた褥瘡の原因の一つは左側臥位で長時間過ごしていることです。

 

それを避けるために、実際にCさんは左側臥位以外の体位で過ごすことができているかを観察することが必要です。   観察計画

 

 

2 直接ケア計画(Treatment Plan;T-P)

Cさんに挙げた直接ケア計画は、以下のとおりです。

 

具体的な看護計画

【直接ケア計画(T-P)】
左大転子部の褥瘡に対するポリウレタンフィルムの貼付:摩擦・ずれからの保護
食事環境・食事内容の調整(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)
体位変換
 1)左側臥位を好んでいるため、右側臥位、仰臥位になるよう適宜声をかける
 2)患者自身で可能であるが、必要時には介助する
 3)左側臥位が続いてしまう時は、右側臥位にして背部にクッションを使用する
 4)窓からの景色を見るため左側臥位なのか等の理由を確認しながら、場合によっては、頭をベッドの足側に置き、右側臥位をとる方法も良しとする
 5)車椅子乗車への援助:座り方・姿勢の確認、体圧分散用具の使用

体圧分散用具の使用
 1)静止型ウレタンフォームマットレスの使用とするが、高齢者であり褥瘡予防の観点から空きがあれば交換圧切換型エアマットレスに変更
 2)車椅子乗車時は座面に体圧分散用のクッションを利用する

生活行動範囲の拡大とADL自立
 1)車椅子等を利用して気分転換に院内の散歩
 2)体調に合わせ、ADL自立に向けて、看護師の見守り付きで実施
 例:整容、椅子に座って食事、更衣、シャワー浴

スキンケア
 1)清潔保持のためのシャワー浴・清拭の実施
 2)ドライスキンへのケア:保湿剤を塗る(保湿剤は家族に依頼する)

患者本人の褥瘡悪化防止の取り組みに対する思い等を確認
NSTチームや褥瘡対策チーム、WOCナースとの連携
 1)上記チームに相談し助言をもらいながら必要なケアを追加、あるいは変更する
 2)各チームからの情報・助言を病棟内で共有し、実施するケアの統一を図る

 

左大転子部褥瘡に対するポリウレタンフィルムの貼付

褥瘡の管理は、創の深さや滲出液の有無等、創の状態によって方法が決まり、その方法に合ったドレッシング材が選択されます。

 

Cさんの場合、NPUAP/EPUAPの褥瘡分類におけるステージ I の褥瘡であることから、ポリウレタンフィルムで褥瘡部を保護しました。   直接ケア計画

 

創の状態に応じて、医師やWOCナース等とも連携を取りながら、管理方法を決め、その方法を記載していきましょう。

 

食事環境・食事内容の調整

褥瘡の治癒や予防のためには、栄養状態の改善が必要です。

 

Cさんは、食事については【#1 低栄養状態】という看護診断を別に挙げ、詳細は【#1 低栄養状態】の看護計画書を参照することとしました。   直接ケア計画

 

体位変換

同一体位で過ごすことは、褥瘡の原因となります。

 

Cさんは、体位変換を行い左大転子部への圧迫を避ける必要があります。

 

その具体的な方法は、もともと自分で自立して生活されていたため、本人の持っている力を活用しながら行う内容としました。   直接ケア計画

 

体圧分散用具の使用

マットレスは、『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』でも、高齢者の褥瘡予防のために体圧分散マットレスの使用が推奨されています

 

褥瘡の状態等により体圧分散マットレスのいくつかの種類から選択していきます。

 

Cさんは、自力での体位変換は可能なので、静止型ウレタンフォームマットレスとしましたが、高齢者の褥瘡予防には体圧分散マットレスの中でも交換圧切換型のエアマットレスの使用が推奨されています。そのため、施設内で使用可能な状況であれば変更することを明記しました。   直接ケア計画

 

生活行動範囲の拡大とADL自立

褥瘡予防のためには、同一体位を避け、活動性を高めることが必要です。

 

その援助方法は、患者さんの状況によってさまざまな方法があると思います。

 

今回は、Cさんの現在の身体状況や入院前のADLの自立度から、CさんにADLの自立を促していくことで、褥瘡予防になり、また退院後の生活の質を維持することにもつながると思い、このような計画を立てました。   直接ケア計画

 

スキンケア

汗や排泄物による皮膚の汚染は、皮膚が浸軟して皮膚損傷をきたします。

 

また、Cさんのように加齢や脱水に伴うドライスキンは、皮膚に摩擦やずれをもたらし、皮膚の損傷を引き起こします。

 

そのため、皮膚は清潔に保ち、保湿する必要があります。スキンケアは、Cさんに新たな褥瘡が形成されないようにするための大切なケアです。   直接ケア計画

 

患者本人の褥瘡悪化防止の取り組みに対する思い等を確認

Cさんは、脱水や低栄養と診断され入院となり、褥瘡も見つかっています。

 

Cさん自身はこの状況についてどのような思いを抱いているのかを確認し、それを医療職が理解したうえで「#2 褥瘡」という看護診断(看護問題)に関わる必要があります。   直接ケア計画

 

コミュニケーションをとって患者さんの意思を確認していくことも大切です。

 

NSTチームや褥瘡対策チーム、WOCナースとの連携

褥瘡は、さまざまな要因が絡み合って形成されます。栄養状態や活動性の低下等、身体的側面の要因だけではなく、時には介護のマンパワー不足等の社会的要因も絡んできます。

 

そのため、必要に応じて多職種に相談したり、また多職種から助言をもらったら病棟の看護師間で共有する等して、患者さんにとって必要なケアを多方面から考え実行していくことが大切です。  直接ケア計画

 

 

3 教育計画(Education Plan;E-P)

Cさんに挙げた教育計画は、以下のとおりです。

 

具体的な看護計画

【教育計画(E-P)】
褥瘡悪化を予防するために以下について指導し、協力を求める
 1)ベッド上で過ごす際には左側臥位での時間を減らす
 2)ADLの拡大・自立を目指す:更衣、整容、排泄、食事、シャワー浴等は順次看護師の見守り付きで院内での自立を目指す
 3)栄養状態改善の必要性と具体的行動(「#1 低栄養状態」の看護計画を参照)

新たな褥瘡が発生しない予防方法について理解できるよう指導する
 1)現在のCさんの褥瘡発生要因について:栄養状態、同一体位、骨突出、年齢
 2)褥瘡の予防のために今からできること:同一体位の回避、皮膚の清潔と保湿、自分の骨突出部の理解、ADL拡大と自立

 

Cさんの患者目標を達成するために、現段階でCさんに何を理解し実行してもらうことが必要かを考えることが大切です。

 

身体的状況や年齢に伴う理解力の低下によっては難しいこともあるでしょう。一方で、Cさんの価値観から考えると、理解しやすいことや取り組みやすいこともあるでしょう。

 

これらを考慮した上で、今回は上記のような計画としました。

 

 

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褥瘡の評価

評価

入院時よりも褥瘡の発赤の範囲は小さく、発赤の色は薄くなっている。また、新たな褥瘡もできていない。目標❶と❸は達成とする。

しかし、目標❷-1)では、自ら左側臥位を避ける様子はなく、こちらからの声掛けあるいは背部にクッションを置いて対応している。左側臥位の方が人と話したり、窓の外を見やすいことが一つの要因と考える。部屋移動等も検討したいが、環境の変化につながるため、現在の計画を続行とする。


ただ、倦怠感も改善してきて、食事摂取量も5割を超えるようになり、見守り・セッティングは必要であるが、更衣や整容、排泄も自ら実施できている。末梢静脈ラインも抜去となり、昨日は自ら希望してシャワーを浴びる等の様子もみられた。❷-2)は達成できたと考える。

以上のことから、自宅退院も視野に入れて、教育計画の実行に重点を置きながら看護計画は続行とするが、患者目標の❷を以下のように変更する。
目標❷褥瘡の改善・予防のために以下について実行できる
 1)左側臥位以外の体位で過ごすことができる
 2)見守りで、食事、排泄、更衣、整容、シャワー浴を自身で実施できる

 

1 評価日の設定

評価日は、看護計画書を作成した日の5日後としました。

 

今回の患者目標をできる限り早期に達成させ、褥瘡の改善を促し、早期退院につなげることが、高齢のCさんにとって、その後のQOLに良いと考えたからです(もちろん、今回の入院目的である脱水や低栄養状態が改善されることが前提です)。

 

また、褥瘡の急性期は、急激に悪化することもあります。そのため、いったん早めの評価をしておくことが必要と考えました。

 

2 評価の考え方

評価は、患者目標が達成できたのか、できなかったのかで考えます。

 

患者目標や患者目標にある褥瘡の悪化や新たな褥瘡の形成については、自分の目で見て確認できますし、看護記録にも記載がありますので、判断できます。

 

患者目標の左側臥位以外の体位で過ごせたかどうか、臥床時間が減らせているかどうかは、看護記録や評価カンファレンスに参加した看護師からの情報等で確認できます。

 

これらの情報から患者目標が達成できたかを記載していきましょう。

 

患者目標を達成できなかった場合は、原因を明らかにします。今後、計画を変更する際に、とても有用な情報となります。

 

患者目標を達成できた場合も、その要因を明らかにしておくと、同様の問題が起きたときに役立つことがあります。

 

最後に、今後の方針(計画の続行・追加・変更、目標の継続・変更等)を記載します。

 

 

目次に戻る

褥瘡の看護計画書を作成するポイント3つ

褥瘡の看護計画書を作成するためのポイント3つを解説します。

 

1 褥瘡のアセスメントを十分に・正確に行う

褥瘡は、身体的要因、精神的要因、社会的要因と、さまざまないくつもの原因が絡み合って形成されます。

 

褥瘡のさまざまな要因/身体的要因:活動性低下、低栄養、骨突出、皮膚の脆弱性など 精神的要因:意欲低下、うつ状態、認知機能低下など 社会的要因:介護力不足、経済的困窮など

 

一つの原因に対しケアを行っても、他の原因がなくならなければ褥瘡は改善しないことがほとんどです。

 

精神的要因や社会的要因は観察だけではわからないことも多く、患者さんや家族とコミュニケーションを取りながら関係構築を図り、明らかにすることも必要です。

 

褥瘡のアセスメントでは、褥瘡ができる原因を特定することが大切です。それが、その後の患者目標や看護計画にもつながっていきます。

 

2 褥瘡の状態に合った看護計画を考えよう

重症度等、褥瘡の状態を表すスケールとしては、NPUAP/EPUAPの褥瘡分類や、DESIGN-R®2020(日本褥瘡学会)があります。

 

各施設で使用している統一したスケールで、患者さんの褥瘡の状態を把握することが大切です。

 

その状態によって、推奨される治療方法・介入方法があります。『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では推奨項目を挙げています。もちろん治療方針を決定するのは医師ですが、その治療の経過を確認することは看護師の役割の一つであり、治療内容を理解して看護計画を立案する必要があります。

 

3 看護診断「#褥瘡」における個別性のある患者目標・看護計画のために

患者目標を決める際には、【褥瘡】「症状・徴候」に関連した目標、【褥瘡】「関連因子(原因)」に関連した目標、あるいは【褥瘡】「なりゆき」に関連した目標を立てるとよいでしょう。

 

同じ【褥瘡】の看護診断が挙がった患者さんでも、アセスメントで明らかになったその診断の背景(症状・徴候、関連因子、なりゆき)によって、それぞれ患者さんの目標も変わってきます。

 

看護計画においても、【褥瘡】の「症状・徴候」「関連因子」「なりゆき」に挙げられた状況に対し看護計画を立てます。患者さんの褥瘡の改善には、「褥瘡」に関する看護計画について書かれたさまざまな参考書を活用しながら、その看護診断の背景(症状・徴候、関連因子、なりゆき)を加味した看護計画が不可欠です。

 

個別性のある患者目標・看護計画の作成のためのポイントを図にしてみました。これまで述べてきたように、アセスメントで明らかになっている看護診断の背景(症状・徴候、関連因子、なりゆき)、および患者さんの年齢や疾患、生活状況・価値観・信念を考慮して作成していくことが大切です。

 

個別性のある患者目標・看護計画の作成のためのポイント

 

なお、今回は実在型看護問題の看護診断なので、褥瘡の原因を「関連因子」と呼びましたが、リスク型看護問題の看護診断であれば(例:褥瘡のリスク)、そのリスクの原因を「危険因子」と呼びます。どちらも原因を表していますが、看護診断の種類によって呼び方が変わります。

 

***

 

次の第4回は統合失調症の看護計画」です。

 

編集:看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

引用・参考文献

  • 1)日本褥瘡学会編.褥瘡予防・管理ガイドライン.第5版.東京,照林社,2022,112p.
  • 2)T.ヘザー・ハードマンほか編.上鶴重美訳.NANDA-I 看護診断 定義と分類 2021-2023.東京,医学書
    院,2021,181.
  • 3)高木永子監.看護過程に沿った対症看護 病態生理と看護のポイント.第5版.東京,学研メディカル秀潤社,2018,882p.
  • 4)野島陽子,木村陽子.認知症高齢者と皮膚障害について.看護技術.66(4),2020,14-21.

 

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