ストレスのサイン…?看護師の不正出血と対処法

医療現場はとてもストレスの多い職場と言えるでしょう。

 

患者さんの状態によって気を張った状態が続いたり、とてもデリケートな対応が必要になったり、立ちっぱなしだったり、夜勤のせいで体のリズムが狂ったり。

患者さんよりも医療従事者の方が不養生であることも珍しくないかもしれません。

 

現代人にとって、ストレスと付き合うことは当たり前になってしまっていますが、時には体が悲鳴をあげることもあります。

 

婦人科領域では、不正出血や月経不順がストレスのサインとして現れることがあります。

 

不正出血とは

不正出血は、月経以外のタイミングで腟から血が出てくるものです。

(厳密には月経と見分けがつきにくい場合もあります)

 

原因はさまざまで、主に次のようなケースがあります。

 

1子宮や腟に器質的な原因があるもの

子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮頸管ポリープなどの良性腫瘍、子宮頸がん、子宮体がんなどの悪性腫瘍、外傷 など

 

2妊娠に関連したもの

流産、切迫流産、子宮外妊娠 など

 

3女性ホルモンの分泌に関連した機能性子宮出血

排卵周期によるもの、黄体機能不全によるもの など

 

出血量も、下着にちょっと汚れのように付着するだけの少量のものから、ナプキンが必要なくらいの出血が数日続くものまで、幅広くあります。

 

また、腹痛などの別の症状が随伴する場合もあり、様子を見ていいものなのか、すぐに婦人科外来を受診した方がいいのか、自分では判断しづらいことも多いです。

 

①~③のうち、特にストレスが原因として起こりやすいのが③のタイプです。

ストレスによって分泌されるコルチゾールが影響するためです。

 

ストレスによって不正出血が起こるケースの特徴は、ナプキンでなくパンティーライナーで足りる程度の少量出血が数日続いたりするものや、月経そのものが不順になるもの(周期が一定でなくなったり、正常とされる25~38日周期を外れるもの)が多いです。

ストレスが原因で不正出血が起こる仕組み

強いストレスや慢性的なストレスを受けると、副腎皮質が刺激され、ステロイドホルモンであるコルチゾールが分泌されます。

 

コルチゾールには、血糖値の上昇、免疫機能の抑制作用、抗炎症作用などの働きがあります。これらの作用は体がストレスに耐えるためのものです。

 

しかし、過剰に分泌されると体にさまざまな悪影響を及ぼします。

そのうちの一つが、急激もしくは慢性的にコルチゾールが高い状態によって引き起こされる「女性ホルモンバランスの乱れ」です

 

女性ホルモンの分泌は、と卵巣が密接に連携するHPO軸(視床下部ー下垂体ー卵巣)によって調整されています。

このシステムが正常に働くことで、女性の生理周期や排卵、妊娠の維持が行われます

 

ストレスによりコルチゾールの分泌が増加すると、視床下部の働きが抑制され、卵巣から分泌されるエストロゲンプロゲステロンの分泌が減少するなど、ホルモンのバランスが乱れます。

 

これにより、排卵が抑制されて無排卵周期になったり、月経不順になったりするのです。

 

無排卵周期の場合、エストロゲンのみが分泌され続け、子宮内膜が過剰に増殖し、部分的に剥がれ落ちたりして不正出血が起こることがあります。

 

また、プロゲステロン分泌低下が起こることで、プロゲステロンにより維持されていた子宮内膜が不安定になり、不正出血が起こることもあります。

 

女性ホルモンの分泌や排卵の制御は結構デリケートなので、ストレスや体重の増減などでうまく働かなくなることは誰でも起こり得ます

 

ストレスによる不正出血があった場合の対処法

不正出血にはさまざまな原因があり、初めからストレスのせいだと決めつけるのはよくありません。

 

悪性腫瘍や妊娠の可能性も含め、婦人科疾患のサインかもしれません。

(余談です。最近知人が子宮頸部高度異形成と診断されましたが、普段黒い下着をつけていたため不正出血に気付くのが遅れたそうです。下着は出血のわかりやすい色を!と力説していました)

 

かかりつけの婦人科を持ち、症状がある時は受診しましょう。

また、生理周期や基礎体温の記録があると診断の一助となるので、持っていきましょう。

 

器質的な疾患や妊娠などを除外した上で、最終的に「ストレスの可能性が大きいでしょう」となれば、なるべくストレスを無くしていく必要があります。

 

明らかにストレスの原因がわかっていれば、その解決が一番ですが、なかなかそうもいかないことも多いので、自分なりのストレス解消法を見つけましょう

 

適度な運動や気分転換、音楽を聴いたり、瞑想したり、アロマセラピーやマッサージなど

ちなみに私のストレス解消法は、20分の隙間時間に1人でカフェでコーヒーを飲むことと、家に帰って飼いうさぎをなでることです。

 

また、自律神経の調子を良くするために、十分な睡眠や生活リズム、適量でバランスの取れた食事など、生活習慣にも気を配ってみてください

不正出血はしばしば起こるものですが、中には怖い病気が隠れていることもあります。

できるだけ原因を究明し、改善、治療につなげましょう。

 

また、出血の有無に関わらず、ストレスは軽減できるに越したことはないですよね。

医療現場からストレスの原因が少しでも無くなりますように…

 

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執筆

丸の内の森レディースクリニック院長宋美玄(ソン・ミヒョン)

産婦人科医 医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長。
1976年兵庫県神戸市生まれ、大阪大学医学部医学科卒。2010年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集め、以後、妊娠出産に関わる多くの著書を出版。“カリスマ産婦人科医”としてメディア出演、医療監修等、女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性など積極的な啓蒙活動を行っている。2児の母。

 

編集:宮本諒介(看護roo!編集部)

 

 

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