立ち仕事の多い看護師、どうやって「つわり対策」したらいい?

 

現代の日本では、専業主婦世帯は少数派となっていて、働きながら妊娠する女性が数多くいます1)

 

今回は、立ち仕事が多く、急な休みも取りにくい看護師さんが、つわりとどう付き合っていくかについて、解説していきます。

 

つわりの時期は妊娠を公表しづらい時期

妊娠は人によって計画的にすることもあれば、予期しないタイミングで授かることもありますが、妊娠初期流産が約10%2)あり、妊娠が判明した頃はこのまま順調に妊娠が継続していくのか誰にも分からない状態です。

 

妊娠を公表した後で流産という結果になってしまって、悲しい上に気まずい思いをしたという人も多く、流産の頻度がグッと少なくなる妊娠4か月(12週〜)以降の公表がいいとされています

 

つわりは、妊娠が成立した後にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やエストロゲンプロゲステロンが急激に増加する影響などによって、消化器系の動きが遅くなり、胃の不快感や吐き気が引き起こされる現象です

 

食べ物や匂いの強いものがダメになったり、倦怠感が強くなったりする症状もあります。

他にもよだれがたくさん出たり、食べていないと気持ち悪くなるなど、症状、強さには個人差があります。

 

つわりが起こる時期は、まだ職場に大々的に公表しづらい時期に重なっています

 

そのため、これまで通りの就業が難しいという妊婦さんには、職場の責任者などの立場で信頼できる少数の人にのみ伝えて、可能ならリモートワークにする、立ち仕事を避けるなどの配慮をしてもらうようアドバイスしています。

 

看護師ができるつわり対策 5つ

でも、私たち医療従事者の仕事は、なかなかリモートワークというわけにもいかず、出勤して現場に出なければいけません

 

そんな中でつわりを抱えながら就労を続けるために、いくつかの対策を挙げてみました。
できそうなものを試してみてください。

 

①可能なセルフケアを行う

これはつわりの妊婦さんが皆されていることかと思いますが、可能な範囲で水分、それもできればスポーツドリンクやジュースなど糖分が摂れるものを摂取すること。

 

また、食べられるものを食べましょう。

「野菜や魚をきちんと食べる」とか「脂肪を摂りすぎない」というような、栄養バランスはつわりの時期は無理に考えなくてもいいです。

 

ファストフードなどジャンキーな食べ物が恋しくなる人も一定数いますので、とにかく食べられるものを食べましょう。

 

ビタミンB6や生姜がいいと言われていますが、臨床経験上はそこまで効果を感じる妊婦さんは多くありません(ですが、よければ試してみてください)。

 

個人的にはフルーツゼリーとグレープフルーツジュース、商品名ですがグリコの「アイスの実」が役に立ちました。

 

②主治医に薬を出してもらう

妊娠中は薬を飲んではいけないというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は妊娠中に絶対に飲んではいけない薬はNSAIDsなど、ごく一部です。

 

すーっと吐き気が消える、というほどの効き目はなかなかないのですが、ましになるとのことで、制吐剤がつわりの妊婦さんに処方されることもあります

よく使われるのはメトクロプラミドですが、程度の重い患者さんにはオンダンセトロンを処方することもあります。

いずれもつわりに対して承認されている薬ではないため、適応外使用となり、健康保険は適用されません。

 

それでも、つわりは人によっては本当につらいので、十分に説明の上、希望される方に処方されることがあります。

つわりに耐えながら就労せざるを得ない方にとっても、選択肢の一つと言えるでしょう。

 

 

③主治医に「母健カード」を書いてもらう

母健カード(母性健康管理指導事項連絡カード)は、主治医が行った指導事項の内容を、妊婦から職場に伝えるためのカードで、診断書と同じ効力があります

 

事業主は、母健カードの記載内容に応じ、男女雇用機会均等法第13条に基づく適切な措置を講じる義務があります。

 

「この方はつわりがあるため、通勤時間を緩和してください/休憩を取らせてください/自宅療養としてください」などの内容を職場に伝えることができます

 

ちなみに20年ほど前の話ですが、総合病院に勤めていた時に院内に勤務する看護師の方の妊婦健診を担当していて、切迫早産との診断で自宅療養が必要との診断書を発行したことがあります。

すると、所属の師長から「これくらいなら働いても大丈夫じゃないですか?」と直接連絡があり、妊婦さんと一緒に震撼しました。今なら完全に炎上案件ですね…

 

④負担のかかる業務から外してもらう

部署や業務の中でも、長時間の立ち仕事や匂いのきつい仕事はつわり症状が悪化しがちです

 

上司などに相談してなるべく負担のかかる業務から外してもらったり、適宜休憩を取らせてもらったりするだけでも、やり過ごせるかもしれません。

 

 

⑤重症悪阻(おそ)の場合は輸液をしてもらう

体重が5%以上減ったり、水を飲んでも吐いてしまって経口摂取が不可能な場合など、重症悪阻と診断された場合は、入院による輸液管理が勧められます

 

医療従事者の場合、勤務先の好意によって職場で休憩中に輸液による治療を受けられるところもあるようです。

他の業種では通常不可能なので、医療従事者ならではのメリットと言えるでしょう。

 

ですが、その場合1日に500~1000mLの輸液が限界となるため、それ以上必要な場合は通常通り入院するしかありません。

 

 

つわりには程度や症状、期間に個人差があり、人によっては朝起きてから夜寝るまでとてもつらい日々が続きます。

 

無理をせず勤務を調整してもらえるといいですし、同僚が妊娠してつわりの症状がある場合はできるだけ配慮したいものですね。
 

 

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執筆

丸の内の森レディースクリニック院長宋美玄(ソン・ミヒョン)

産婦人科医 医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長。
1976年兵庫県神戸市生まれ、大阪大学医学部医学科卒。2010年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集め、以後、妊娠出産に関わる多くの著書を出版。“カリスマ産婦人科医”としてメディア出演、医療監修等、女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性など積極的な啓蒙活動を行っている。2児の母。

 

編集:宮本諒介(看護roo!編集部)

 

 

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