虚血性心疾患の看護

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』より転載。
今回は虚血性心疾患の看護について解説します。

 

木下智恵
新東京病院看護部
橘 綾子
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

狭心症の看護

狭心症の発作の形態はさまざまですが、発作が起こったときは、まずは発作のコントロールと適切な治療を受けられるような看護が大切です。そのためには、患者さんの全身状態の観察を行いましょう。

 

狭心症では心筋梗塞への移行を防ぐことが重要なため、発作時の症状やその変化に注意しましょう。

 

狭心症の症状が消失した後は、狭心症発作の誘因となる生活習慣を除去できるように指導しましょう。

 

 

 

心筋梗塞の看護

狭心痛に関する病歴聴取

狭心痛では、狭心痛に関する自覚症状の詳細な病歴聴取が重要となります(表1)。

 

表1狭心痛に関する病歴聴取のポイント

狭心痛に関する病歴聴取のポイント

 

急性期の看護

心筋壊死により、生命に危険な合併症を発症する可能性があります。急変時の迅速な対応・合併症の予防・身の回りの世話を看護師が行います(表2)。

 

表2急性期の看護のポイント

急性期の看護のポイント

 

心筋酸素消費量の増大に伴う、合併症出現の有無の観察(心不全不整脈、心破裂、狭心症)を行います。心筋梗塞を起こした患者さんは、心臓への二重負荷を避け、再発作予防に努めます。

 

急性期の精神的ケア

虚血性心疾患の急性期看護では、身体的苦痛の緩和だけでなく、死の恐怖や不安などの精神的苦痛の緩和が重要です。

 

今までに感じたことのない激しい胸の痛みに、「このまま死んでしまうのではないか」「これからどうなってしまうのだろう」などの不安感が現れます。この不安感は、今後の予後に大きく影響するといわれています。

 

その姿を見ている家族も同時に不安感を覚えるため、家族へのケアも必要です。

 

胸痛出現時は患者さんから離れず、適宜声かけをします。処置などを行う際は本人・家族に説明し、家族には別室で医師からの説明を受けることがあります。そのときも別の看護師が付き添い、家族の表情や受けとめ方を観察し、説明後の家族の思いや不安などを傾聴します。

 

急性期を脱すると、死への恐怖感よりも退院後の生活についての不安感が出てきます。精神的ストレス動脈硬化進行の因子となるため、退院指導の介入が不可欠です。

 

 

二重負荷の回避

再発作を防ぐために、心臓への二重負荷を避けるよう、1つの動作を介助した後は、いったん休息を入れ次の動作を行うよう援助していきます。

 

入院後は、安静や水分制限、環境の変化によって便秘になりやすい状況となります。排便時の努責は血圧を上昇させ、再発作を誘発させます(図1)。あまりいきまないで排便できるよう、制限内で水分摂取を促し、緩下薬を使用し、排便コントロールを行います。

 

図1便秘と努責の関係1)

便秘と努責の関係

 

便秘時の排便は、排泄中にモニター観察を頻回に行い、症状出現はないか訪室し、観察を行います。

 

 

 

胸痛時の初期対応

胸痛時にはバイタルサイン測定胸痛の程度の確認12誘導心電図をとります。

 

初期対応のポイント

酸素が低下している場合、心筋に酸素を供給するため酸素投与を開始します。

 

ニトログリセリン※1舌下指示がある場合、投与後にバイタルサイン・12誘導心電図を再度とります。再検査の心電図に関しては、何分後にとるのかを医師に指示を仰ぎます。

 

ニトログリセリンの投与の際には、血圧が下がり、めまいや気分不快を訴える場合があるため、臥位またはすぐ横になれる座位で投与します。

 

血液検査などの指示がある場合、心筋マーカー炎症マーカーに注目します。

 

突然の発作の出現は、患者さんの不安を増強させるため声かけをし、不安の軽減に努めます。また、家族が付き添っている場合は、本人へのケアだけではなく、家族への声かけも重要になります。

 

バイタルサインの測定

心筋梗塞の場合、ショックバイタルを引き起こすことや、急激な心不全症状の出現の可能性もあるため、意識レベルや血圧の変動、呼吸状態を観察し、急変に備えておきます。

 

胸痛の程度の確認

胸痛の程度は、「いちばん痛いときを10に例えると、今の痛みはどれくらいですか?」と問い、記録に「chest pain(胸痛):CP=○/10」と表します。持続時間も観察しましょう。

 

12誘導心電図

特にSTの変化に注意し、医師に報告します。

 

安静時(無症状時)の心電図があれば比較します。

 

心電図上、ST変化や症状の改善がみられない場合、緊急カテーテルや点滴投与が開始される場合があるため、末梢ラインを確保しておきます。

 

症状出現時は急変のリスクが考えられるため、全身状態の観察が必要です。できるだけ患者さんのそばから離れず、変化がみられるようであれば、すぐに医師やほかのスタッフの応援を呼びましょう

 

 

虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護の経過

虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護を経過ごとにみていきましょう(表3-1表3-2表3-3)。
看護の経過の一覧表はこちら

 

表3-1虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護 発症から入院・診断

虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護 発症から入院・診断

 

表3-2虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護 入院直後・急性期

虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護 入院直後・急性期

 

表3-3虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

 

表3虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護の経過

 

※横にスクロールしてご覧ください。

 

虚血性心疾患(急性心筋梗塞)の看護の経過 一覧表

 


[memo]

  • ※1 ニトログリセリン投与時のチェックポイント(上へ戻る
    大動脈弁狭窄症(AS)や閉塞性肥大型心筋症(HOCM)には使用禁止なので、投与前は病歴を確認する。
    根拠=圧較差が増強し、症状を悪化させるため。

 


文献

  • 1)藤野彰子:ナーシングレクチャー 心疾患をもつ人への看護.中央法規出版,東京,1997.
  • 2)安倍紀一郎,森田敏子:病態生理,疾患,症状,検査のつながりが見てわかる 関連図で理解する 循環機能学と循環器疾患のしくみ 第3版.日総研出版,愛知,2010.
  • 3)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
  • 4)榊原記念病院看護部,鈴木紳編著:AMIケアマニュアル.ハートナーシング1992夏季増刊,メディカ出版,大阪,1992.
  • 5)日本循環器学会:ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).(2019.09.01アクセス)
  • 6)黒澤博身総監修:全部見える 循環器疾患.成美堂出版,東京,2012.
  • 7)浦部晶夫,島田和幸,川合眞一編:今日の治療薬2018.南江堂,東京,2018.
  • 8)三浦稚郁子:「なぜ?」の理解で総復習&ステップアップ! 循環器ケアの成長ふりカエルチェッククイズ65.ハートナーシング 2013;26:5-65.
  • 9)酒井毅:読解プロセスですいすいわかる! 完全攻略炎の心電図ドリル50.ハートナーシング 2016;29(6):11-86.
  • 10)赤石誠監修:くすりのはたらきと使用ポイントがよくわかる! ナース必携!循環器の薬剤ガイド150.ハートナーシング2015年春期増刊,メディカ出版,大阪,2015.
  • 11)日本循環器学会:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版).(2019.09.01アクセス)

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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