経皮経肝胆管ドレナージ:PTBD・PTCD

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。
今回は経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)について説明します。

 

佐野圭二
帝京大学医学部外科学講座教授
栗原 瞳
帝京大学医学部附属病院看護部(10階東病棟)

 

 

《経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の概要》

 

主な適応
胆管閉塞をきたす悪性・良性の胆道狭窄のうち、空腸吻合や胆管空腸吻合などで内視鏡的に胆管アプローチが困難な場合や、食道潰瘍や膵炎など内視鏡での胆管アプローチが危険な場合など
目的
胆管の閉塞に伴い閉塞性黄疸になったときに胆汁をドレナージする(=減圧、減黄)
合併症
出血、胆汁漏、カテーテル逸脱など
抜去のめやす
閉塞が解除され、かつ挿入から3週間以上経過後
観察ポイント
排液(胆汁)の流出・性状・量を観察する。血性排液、漿液性排液などに注意する。多量の場合は脱水症状を観察し、in-outバランスに注意する。少量の場合は閉塞などを疑う。胆汁様の排液が出なくなった場合、カテーテル逸脱を疑う
ケアのポイント
安静保持 : 患者への十分な説明と固定方法を工夫して、安静保持および事故抜去の予防に努める
カテーテル管理 : 胆汁の逆流防止のため、ドレーンバックは挙上せず、必ず挿入部位より低く保つ

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の概要

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の概要

 

〈目次〉

 

経皮経肝胆管ドレナージの定義

経皮経肝胆管ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD、percutaneous transhepatic cholangio drainage:PTCD、PTBDとPTCDは同義語として用いられる)は、胆管結石や胆管癌などにより胆管が閉塞して閉塞性黄疸になったときに胆汁をドレナージする方法の1つである。

 

他コラムで解説されている「内視鏡的胆道ドレナージ」(→『内視鏡的胆道ドレナージ』参照)も同じ目的で行われ、現在ではその減黄法のほうが多く施行されている。

 

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の適応と禁忌

経皮経肝胆管ドレナージが選択されるのは、内視鏡的胆管アプローチが困難な場合と危険な場合である。

 

例えば、胃空腸吻合や胆管空腸吻合などで内視鏡的に胆管アプローチが困難な場合や、食道潰瘍や膵炎など内視鏡での胆管アプローチが危険な場合などである。

 

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の挿入経路と留置部位

挿入方法としては、肝臓超音波画像を見ながら拡張胆管(図1-①)を穿刺し、ガイドワイヤーを挿入する(図1-②)。穿刺した針を抜去したのちに、そのガイドワイヤーに沿わせてカテーテルを挿入する(図1-③)。

 

図1経皮経肝胆管ドレナージの穿刺方法

経皮経肝胆管ドレナージの穿刺方法

 

留置するカテーテルは、最初6~9Fr(2~3mm)程度の太さのものを用い、必要により徐々に太くする。

 

カテーテルが逸脱すると、胆汁が穿刺部から腹腔内に漏れて胆汁性腹膜炎になるため、抜けないように先端を工夫したカテーテルを留置することが多い(図2)。

 

図2使用するカテーテルの種類(先端部)

使用するカテーテルの種類(先端部)

 

左肝の胆管穿刺の場合は心窩部から、右肝の胆管穿刺の場合は右肋間(第7~10肋間)から行われる()。

 

穿刺部位の固定は、糸で数か所固定する。

 

穿刺後は、鎮静薬遷延、穿刺後出血予防やカテーテル逸脱予防のため翌朝まで絶食(飲水のみ可)・ベッド上安静とする。

 

翌朝、出血がなくX線検査にてカテーテルの位置に問題ないことを確認し、食事開始・安静解除する。

 

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の合併症

経皮経肝胆管ドレナージの合併症は、「出血」「胆汁漏」「カテーテル逸脱」などがある。

 

1出血

出血には胸・腹壁穿刺部位からの出血、肝臓から腹腔内への出血、穿刺胆管壁から胆管内への出血があり、それぞれ、穿刺部位に当てたガーゼの血液による汚染、腹膜刺激症状、カテーテルからの血性排液などで診断する。

 

右肝の胆管を肋間から穿刺した際には、肋間動脈損傷による出血が起こることがあり、この場合は血胸となり右胸痛や呼吸困難を訴えることがある。また肺を穿刺することで気胸になる可能性もある。

 

胸腔内・腹腔内出血を疑う場合、まず超音波検査にて胸腔内・腹腔内に胸水・腹水がないかどうか確認する。またカテーテル逸脱による出血の可能性もあるためポータブルX線撮影にてカテーテルの位置も確認する。

 

いずれの出血も、より太いカテーテルに交換して圧迫による止血を試みる。それでも止血できない場合は、緊急で止血手術を行う。

 

2胆汁漏

胆汁漏はカテーテル逸脱・閉塞・屈曲などで起こるため、X線透視下に造影して確認する。

 

3カテーテル逸脱

カテーテル逸脱に対しては、瘻孔形成していれば(約2週間以上留置)同じ経路からの再挿入を試みる。瘻孔形成が期待できなければ(穿刺後2週間以内)再挿入は困難であり、緊急開腹手術でカテーテルを再挿入する。

 

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の長期留置時の内瘻化

経皮経肝胆管ドレナージが長期に及ぶ場合、閉塞部を越えてカテーテルを挿入し、内外瘻の状態にすることがある(図3-①)。

 

カテーテルをクランプすると、カテーテルの側孔を通って胆汁が閉塞部位を越えて流れるようになり排液バックを外すことができるようになる(=内瘻化)(図3-②)。

 

図3長期留置時の内瘻化ドレナージ

長期留置時の内瘻化ドレナージ

 

内瘻化しない場合、ドレナージ胆汁の内服を指導する。目的は胆汁を消化液として機能させるためと、胆汁の腸肝循環(図4)による肝細胞の膜安定化作用・肝血流増加作用・免疫調節作用・肝庇護効果のためである。

 

図4胆汁内服による腸肝循環

胆汁内服による腸肝循環

 

 

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)の利点と欠点

利点 : 閉塞した際など入れ替えが容易なこと、ドレナージ効果が最も高いことである。

 

欠点 : 胆管拡張が十分でないと穿刺挿入できないこと、穿刺の際に動脈や門脈を損傷して出血することがあること、カテーテルが逸脱すると手術を要することもあること、外瘻のときは胆汁を内服する必要があることなどが挙げられる。

 

経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD・PTCD)のケアのポイント

1挿入前の処置・準備

患者への説明・承諾書を得る。

 

バイタルサイン測定を行う。

 

禁食とし、内服は医師の指示を仰ぐ。

 

挿入前にトイレを済ませ、検査着に着替える。

 

挿入中の疼痛対策のため、医師の指示でプレメディケーション(例えばペンタゾシン15mg+ヒドロキシジン塩酸塩25mg+生理食塩液100mLなど)を施行する。

 

2挿入後の処置・看護

①安静保持

鎮静薬投与の影響や、肝臓穿刺後の出血予防、カテーテル逸脱防止などのため、カテーテル挿入後はベッド上安静とする(ギャッチアップなどの可否は医師に確認する)。

 

②観察

バイタルサイン測定、酸素飽和度、全身状態、腹部症状の有無、カテーテル挿入部痛の有無、挿入部位の発赤・漏れ、カテーテルの固定状態(テープが剥がれていないかどうかなど)、排液(胆汁)の流出・性状・量を観察する。

 

排液は通常、300〜500mL/日の量の黄金色透明な胆汁である。

 

排液が多いときは、脱水症状の有無を観察し、in-outバランスに注意する。

 

排液が少ないときは、カテーテルの屈曲や詰まりがないか観察して医師に報告する。

 

血性排液が持続するときは、バイタルサインと時間あたりの排液量を含めて医師に報告する。排液の性状が胆汁様でなくなったり、薄くなったりしたときも、カテーテルが逸脱して胆汁と腹水をドレナージしている可能性があるため、医師に報告する。

 

③カテーテル管理

胆汁の逆流防止のため、排液バックは挙上せず、必ず挿入部位より低く保つよう患者へ説明をする。

 

カテーテル留置のまま退院する際は、患者や家族に対して、排液の対処方法や異常時の対応についてを指導する。特に就寝時に排液バックを低く保つため、可能であればベッドで就寝してもらうよう指導する。

 

④胆汁内服の指導

ドレナージされた胆汁の内服を指導する。胆汁は生臭くて苦いため、冷却(氷で割るなど)、味付け(レモン汁を加えるなど)などの工夫をすることで飲みやすくなる。

 

*略歴は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

 

[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社

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