糖尿病性腎症に関するQ&A
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『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は「糖尿病性腎症」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
〈目次〉
糖尿病性腎症ってどんな病気?
糖尿病による高血糖が長期間継続した結果、糸球体に硬化病変が生じ、通常では濾過(ろか)されないタンパク質が尿中に排泄され、タンパク尿、低タンパク血症、浮腫などが生じる病態です。
なぜ糸球体に病変が生じるの?
ブドウ糖は高濃度になると、様々なタンパク質と結合して悪影響を及ぼします。血管はその影響を受けやすく、高血糖が長期間続くと、血管障害である大血管症と細小血管症が生じます。大血管症とは、動脈硬化のことです。
細小血管症は、細小血管の血管壁に肥厚(ひこう)、脆弱化(ぜいじゃく)、透過性亢進などが現れるもので、網膜や糸球体に特異的に現れます。糸球体が障害されると、正常な状態では濾過されないタンパク質などの大きな分子の物質が濾過されてしまいます。
糸球体の障害は、糸球体毛細血管の基底膜の肥厚と、メサンギウム細胞の増殖です。メサンギウム細胞の増殖に伴って結節性病変が出現し、糸球体全体が硬化してしまいます。
糖尿病性腎症に特徴的な検査所見や症状は?
糖尿病性腎症に特徴的な検査所見や症状は、タンパク尿(アルブミン尿)、浮腫、高血圧、腎不全症状(全身倦怠感、食欲不振など)です(表1)。
初期の段階では、タンパク尿(アルブミン尿)が見られます。浮腫は、低タンパク血症のために膠質浸透圧(こうしつしんとうあつ)が低下し、間質へ水分が漏出して起こります。初期から中期の段階では、糸球体濾過量はほぼ正常です。
ところが、糸球体の障害の進行に伴い、糸球体濾過量が低下します。そのため、水分や老廃物が血中に貯留し、高血圧や腎不全症状が出現します。糖尿病の特徴的な症状である多尿、多飲、体重減少なども見られます。
表1糖尿病性腎症の病期分類(日本腎臓病学会糖尿病性腎症合同委員会2013)
病期 | 尿タンパク値(g/gCr)あるいはアルブミン値(mg/gCr) | 腎機能・GFR(eGFR)(ml/分/1.73㎡) |
---|---|---|
第1期(腎症前期) | 正常(30未満) | 30以上 |
第2期(早期腎症期) | 微量アルブミン尿(30〜299) | 30以上 |
第3期A(顕性腎症期) | 顕性アルブミン尿(300以上)あるいは持続性タンパク尿(0.5以上) | 30以上 |
第4期(腎不全期) | 問わない | 30未満 |
第5期(透析療法期) | 透析療法中 |
memo2糖尿病性腎症の早期診断基準
1.測定対象
タンパク尿陽性か陽性(1+)の糖尿病患者
2.必須事項
尿中アルブミン値:30〜299mg/gCr(随時尿)/ 3回測定中2回以上
3.参考事項
・尿中アルブミン排泄率:30〜299mg/24hr(1日蓄尿)または20〜199μg/min(時間尿)
・尿中Ⅳ型コラーゲン値:7〜8μg/gCr
・腎サイズ:腎肥大(日本腎臓学会、糖尿病性腎症合同委員会2005)
糖尿病性腎症ではどんな治療が行われるの?
糖尿病性腎症に対する治療では血糖のコントロールがいちばん重要で、食事療法、運動療法、薬物療法、インスリン療法が行われます。
腎症に対する治療は、腎不全と同様です(腎不全の治療参照)。
糖尿病性腎症の看護のポイントは?
糖尿病性腎症と診断されると、他の合併症も併発していることがよくあります。糖尿病の3大合併症(memo1)である糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害をはじめ、自律神経障害や虚血性心疾患も合併することがありますから、これらに注意してアセスメントしましょう。
糖尿病に腎症が加わると、自己管理する必要のある事柄も増えます。たとえば、食事、運動療法、服薬、自己血糖測定、インスリン注射、血圧測定、フットケア、透析療法などです。自己管理できるように、個々の患者に応じて援助することが大切です。また、身体機能の低下や予後の不安などから、抑うつ的になることもあります。
患者の精神面も把握し、精神的サポートも行いましょう。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版