糸球体腎炎に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「糸球体腎炎」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

糸球体腎炎ってどんな病気?

糸球体腎炎とは、腎臓の糸球体に免疫メカニズムによる炎症が起こり、血尿などの症状が現れる病気の総称です。

 

糸球体腎炎には様々な種類があります。他に病気がなく、腎臓だけが障害されている場合を原発性糸球体腎炎、膠原病などの病気に伴って起こる場合を続発性糸球体腎炎といいます。

 

原発性糸球体腎炎は、急性糸球体腎炎と慢性糸球体腎炎があります。急性糸球体腎炎は短時間に発症するもの、慢性糸球体腎炎は、徐々に発症し、急性増悪を呈しながら進行するものです。急性糸球体腎炎は、成人もかかりますが小児に多く見られます。

 

急性糸球体腎炎って何が原因なの?

急性糸球体腎炎の原因は扁桃炎、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎などの感染症です。

 

原因菌で最も多いのは、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)です(表1)。そのほか、ブドウ球菌、肺炎双球菌、流行性耳下腺ウイルスなども原因になります。

 

表1糸球体疾患の特徴

糸球体疾患の特徴

 

細菌やウイルスに感染すると、生体内で抗体が産生され、免疫複合体(抗原と抗体が結合した複合物)が形成されます。免疫複合体は糸球体の血管内皮細胞に沈着し、補体の活性化や様々な化学伝達物質の遊離が起こります。

 

その結果、血管の透過性が亢進するなど、高度な炎症反応が起こるのです。

 

メモ1糸球体

毛細血管が毛糸玉のように集まったもので、毛細血管壁は血液の濾過フィルタとなる。毛細血管壁は、内側から内皮細胞、基底膜、上皮細胞で構成されている(図1)。

 

図1糸球体の構造

糸球体の構造

 

メモ2A群β溶血性連鎖球菌

連鎖状に連なるグラム陽性球菌で、咽頭、口腔、腸管などに常在する。血液寒天培地上で培養すると、完全な溶血で透明な輪ができる(β溶血)。また、連鎖球菌の分類ではA群に属する。化膿性連鎖球菌、A群溶連菌、溶連菌と呼ばれている。溶血毒、発熱毒素を産生する。

 

慢性糸球体腎炎って何が原因なの?

慢性糸球体腎炎には、免疫複合体、血小板などの血液凝固系の異常、糸球体濾過の過剰などが関与しています。

 

慢性糸球体腎炎にはどんな種類があるの?

慢性糸球体腎炎には、①メサンギウム増殖性糸球体腎炎、②膜性腎症、③膜性増殖性糸球体腎炎があります。

 

①メサンギウム増殖性糸球体腎炎:糸球体の毛細血管の間にあるメサンギウム細胞の増殖が起こります。さらに、メサンギウム領域に免疫グロブリンA(IgA)が沈着したものをIgA腎症といい、慢性糸球体腎炎の40〜50%を占めています。

 

②膜性腎症:毛細血管の基底膜に免疫複合体が沈着して肥厚します。

 

③膜性増殖性糸球体腎炎:毛細血管の基底膜内にメサンギウム細胞の増殖と免疫複合体の沈着が起こり、肥厚します。膜性腎症と膜性増殖性心球体腎炎は、糸球体毛細血管の選択的濾過が不十分になるため、ネフローゼ症候群を起こしやすくなります。

 

メモ3メサンギウム細胞

糸球体のそれぞれの毛細血管は、毛細血管壁でつながっている。その間を埋めているのがメサンギウム基質である。メサンギウム基質の中のメサンギウム細胞は、毛細血管を固定し、糸球体濾過量を調節する役割を果たしている。(図1参照)

 

急性糸球体腎炎の特徴的な検査所見は?

急性糸球体腎炎の特徴的な検査所見は、尿の異常(血尿、タンパク尿、尿量減少)、糸球体濾過量の低下、浮腫、高血圧などです。

 

血尿は、肉眼でわかる肉眼的血尿として現れることもあります。タンパク尿はほとんどの場合に出現しますが、0.5〜1g/日程度で、ネフローゼ症候群のように多くありません。

 

糸球体濾過量ってどんなもの?

糸球体濾過量とは、糸球体の濾過能力のことです。

 

糸球体濾過量(GFR)は、クレアチニンクリアランス(Ccr)の値を用います。クリアランスとは、血漿中に存在するある物質が、1分間に糸球体から濾過される血漿の量を表しています。

 

血漿中には様々な物質が存在していますが、その中のクレアチニンは、筋肉代謝過程で生成されるタンパク質の代謝産物で、正常な状態では、糸球体で濾過されたあと、尿細管でほとんど再吸収されません。そのため、糸球体の濾過能力を見るのに適しているのです。

 

Ccrの基準値は、男性90〜120mL/分、女性80〜110mL/分です。すなわち、1分間に70〜130mLの血漿からクレアチニンが濾過されるということです。

 

尿の異常はなぜ出現するの?

糸球体毛細血管壁は、血液の濾過フィルタの役割を果たしています。正常な状態では、タンパク質や血球は通過せず、水分、ブドウ糖電解質、窒素化合物などは通過します。

 

急性腎不全では、糸球体毛細血管が炎症を起こすため、内皮細胞の腫大・増殖、基底膜の肥厚(ひこう)、上皮細胞の足突起の融合、といった異常が生じます。

 

その結果、本来なら通過しないタンパク質や血球が通過し、タンパク尿、血尿が出現します。血尿は、毛細血管の断裂にもよります。また、本来なら通過する窒素化合物などが通過できなくなり、糸球体濾過量の低下や尿量が減少します。尿量の減少は、内皮細胞の腫大・増殖により毛細血管の内腔が狭くなり、血流量が減少することも原因です。

 

浮腫や高血圧はなぜ出現するの?

浮腫、高血圧ともに、糸球体濾過量の低下により、体内にナトリウムと水分が貯留するために出現します。浮腫は、初期には顔面や眼瞼(がんけん)に出現することが多く見られます。

 

慢性糸球体腎炎の特徴的な検査所見は?

慢性糸球体腎炎の特徴的な検査所見は、急性糸球体腎炎とほぼ同じで、血尿、タンパク尿、糸球体濾過値の低下、浮腫、高血圧などです。

 

それぞれの程度は、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎によって異なります(表2)。また、潜在期と進行期によっても異なります(表3

 

表2慢性糸球体腎炎の分類別による症状

慢性糸球体腎炎の分類別による症状

 

表3慢性糸球体腎炎の病期による症状

慢性糸球体腎炎の病期による症状

 

急性糸球体腎炎にはどんな治療が行われるの?

急性糸球体腎炎の治療にあたっては、急性期は、腎血流量を増やし腎臓に負荷をかけないために、ベッド上安静となります。

 

食事療法も重要で、十分なカロリーを摂取してもらう一方、塩分(ナトリウム)、水分、タンパク質が制限されます。カリウムも制限されることがあります。

 

塩分と水分の制限は、浮腫や高血圧を改善するためです。タンパク質は、尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物を生成するため、摂取を制限します。カリウムを制限するのは、高カリウム血症になると心筋に影響を及ぼし、不整脈になる危険性があるためです。

 

また先行している感染症には抗菌薬、浮腫には利尿薬、高血圧には降圧薬が与薬されます。おもな症状が改善されて腎機能が正常になれば、徐々に離床が進められ、食事制限も緩やかになります。

 

メモ4腎疾患の生活指導、食事指導

急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎を含む腎疾患の生活指導と食事指導は、日本腎臓学会の腎疾患患者の生活指導・食事療法に関するガイドラインに準じて行われることが多い。

 

慢性糸球体腎炎にはどんな治療が行われるの?

慢性糸球体腎炎では、病期や症状に応じて、生活指導、食事療法、薬物療法が行われます。

 

生活面では、腎臓に負荷をかけないように、過激な運動は避けるよう指導します。食事療法では、塩分(ナトリウム)、水分、タンパク質、カリウムが制限されます。

 

糸球体の病変が著明な場合は、糸球体の炎症を抑えるために、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が使用されます。また、浮腫には利尿薬、高血圧には降圧薬が使用されます。

 

急性糸球体腎炎患者への看護のポイントは?

急性糸球体腎炎患者への看護において、発症初期は、安静と保温が重要です。患者自身が安静と保温の必要性を理解できるように説明し、食事、排泄、洗面などがベッド上で行えるように援助します。

 

また、尿の観察も大切です。血尿・タンパク尿の有無や尿量を確認します。

 

慢性糸球体腎炎患者への看護のポイントは?

慢性糸球体腎炎患者の看護においては、慢性的に経過するため、運動制限、食事制限、定期的な受診、服薬などが無理なく続けられるように援助することがポイントになります(表4)。

 

患者にこれらの必要性を説明し、どうすれば継続できるか、患者と一緒に考えましょう。

 

表4慢性糸球体腎炎患者の生活指導基準

慢性糸球体腎炎患者の生活指導基準

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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