最終更新日 2018/02/06

慢性疾患に伴う貧血

慢性疾患に伴う貧血とは・・・

慢性疾患に伴う貧血とは、基礎疾患によって好中球マクロファージリンパ球などから放出されたサイトカイン(さいとかいん、cytokine)が過剰となって生じる貧血である。

【基礎疾患】

慢性的な感染症(細菌、結核真菌など)、自己免疫疾患関節リウマチ全身性エリテマトーデスなど)、炎症性腸疾患(クローン病潰瘍性大腸炎など)、悪性腫瘍などがある。

【病態】

基礎疾患によってTNF-アルファ, IL-1, IL-6などのサイトカインが過剰になることで生じる以下の4要素が慢性疾患に伴う貧血の原因と考えられている。

1)赤血球寿命の短縮

2)腎臓でのエリスロポエチン産生能の低下

3)骨髄での赤血球造血能の低下

4)鉄の利用障害

この中で特に重要と考えられているのは4)鉄の利用障害である。サイトカインによって鉄代謝調節ホルモンが増加すると、マクロファージから鉄の放出が抑制され、鉄のリサイクルが滞ってしまう。その結果、ヘモグロビンの合成能が低下し貧血を引き起こしてしまう。

【検査】

正球性貧血(平均赤血球容積〈MCV〉が正常)もしくは小球性貧血(MCVが低下)を呈する。

血清鉄が減少するため、鉄欠乏性貧血との鑑別が重要となる。慢性疾患に伴う貧血では血清鉄が減少し、血清フェリチンが正常~増加し、総鉄結合能(TIBC)が正常~減少する。一方、鉄欠乏性貧血では血清鉄と血清フェリチンが減少し、総鉄結合能(TIBC)が増加する。

【治療】

基礎疾患の治療が原則である。基礎疾患の治療が困難な場合は赤血球輸血や遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与を考慮する。

執筆: 河村俊邦

防衛医科大学校病院 血液内科

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