熱傷とスキンケア

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は熱傷とスキンケアについて解説します。

 

佐藤 誠
聖隷三方原病院形成外科

 

 

Minimum Essentials

1熱傷とは、熱によって引き起こされる皮膚や粘膜の損傷のことをいう。

2受傷直後はその深度や重症度が正確に診断できないことがある。

3重症例では、ICUなどで厳密な全身管理を要することもある。

4局所療法として、軟膏や創傷被覆材による保存的治療と手術療法がある。

5上皮化後の肥厚性瘢痕や色素沈着、瘢痕拘縮などに対するアフターケア・長期のフォローアップが非常に重要である。

 

熱傷とは

熱傷とは熱によって生じる皮膚や粘膜の損傷のことであり、外傷の1つである。俗に「火傷」「やけど」などと表現され、体表の変化に続く生体内部の反応を含めることもある。

 

原因には熱湯や火炎をはじめ、ストーブの温風やアイロン、炊飯器の蒸気などさまざまなものがある。湯たんぽやカイロといった比較的低温のものでも熱傷を引き起こすことがあり、注意が必要である。ほかに化学薬品や感電、落雷などによる特殊な熱傷もある。

 

 

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診断と治療

病態の評価

まず、入院や全身管理が必要となるような重症熱傷と、その他の熱傷を鑑別することが重要である。

この判断には従来からArtzの基準(Ⅱ度熱傷で30%以上、Ⅲ度熱傷で10%以上の面積や、手・顔などの特殊部位の受傷、気道熱傷の恐れがある場合などは重症とみなす)がよく用いられており、参考とする。

 

最重症例はICUでの管理や、熱傷専門治療施設への搬送が適応になる。顔面熱傷や閉鎖空間における受傷の場合は、気道熱傷の合併も念頭に置く。

 

受傷面積の算出(% of total body surface area:% TBSA)には、9の法則(成人)や5の法則(小児)があり、古典的だが簡便で使いやすい(図1)。手掌法による推定(手のひら1枚≒1%)もときに有用である。

 

図1 9の法則(Wallace)(a)と5の法則(Blocker)(b)

9の法則(Wallace)

5の法則(Blocker)

*:体幹後面のとき5%減算する。

 

深達度の評価では、まずⅠ度熱傷・Ⅱ度熱傷〔浅達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn:SDB)/ 深達性Ⅱ度熱傷(deep dermal burn:DDB)〕・Ⅲ度熱傷に分類する。

 

Ⅰ度は発赤のみ、Ⅱ度は水疱形成、Ⅲ度は羊皮紙様変化が特徴的である。この評価はおもに肉眼によるが、最近ではレーザー・ドップラー血流計測法やビデオマイクロスコープを用い、精度の高い評価が試みられている。受傷直後では、深達度の評価は難しいことが多く(とくにSDB/DDBの区別)、数日経ってから評価が定まることが一般的である。深達度によって局所の予後や治療方針が異なる。深達度ごとの特徴を表1に示す。

 

表1 深達度別の特徴

深達度別の特徴

 

Ⅲ度熱傷の面積とⅡ度熱傷の面積の1/2を足したものがburn index(BI)、さらにBIに患者年齢を加えたものがprognostic burn index(PBI)であり、ともに予後を推定する指数となりうる。BIが10~15以上なら重症とされ、PBIが100以上だと死亡率が高くなる。

 

輸液療法

一般的に成人では15%TBSA以上、小児では10%TBSA以上の場合に輸液療法を必要とする。受傷から2時間以内に、初期輸液を開始することが推奨されている。

 

輸液量や速度に関しては各種の公式があるが、おもに尿量を指標に調整され、目安は成人で0.5mL/kg/時以上、小児で1.0mL/kg/時以上とする。

 

局所療法

軟膏

深達度により使用すべき薬剤が異なる。

Ⅲ度熱傷に対してはスルファジアジン銀クリームを使用することが多い。Ⅱ度熱傷に対してはワセリン基剤の軟膏を基本として湿潤療法を心がけるが、白糖・ポビドンヨード配合製剤を使うこともある。

 

近年では初期から積極的にbFGF製剤(トラフェルミン)を併用し、治癒までの期間短縮や瘢痕の質向上を図っている。Ⅰ度熱傷の場合、皮膚の破綻はないが、ステロイド含有軟膏やジメチルイソプロピルアズレン(アズノール®)軟膏を塗布して炎症の鎮静化を図る。

 

創傷被覆材

最近の創傷被覆材の発展は著しく、さまざまな種類の被覆材が用途別に使用できる。ハイドロコロイド、ファイバー、フォームなどの形態がある。深達度や滲出液の量、感染の有無によって適切に使い分けることが肝要である。また、銀含有被覆材の登場によって、細菌の増殖を抑えつつ湿潤療法を継続することも可能となってきた。

 

手術

Ⅱ度熱傷以下の創は、原則として保存的療法で上皮化を図る。Ⅲ度熱傷および一部のDDBに関しては、早期治癒や瘢痕拘縮の予防という観点から、手術(おもに植皮術)を勧める。植皮には、厚さによって分層植皮(split-thickness skin grafting:STSG)と全層植皮(full-thickness skin grafting:FTSG)の区別があり、形態によってシート状・網状・パッチ状などの区別がある。
また、30%TBSA以上の広範囲熱傷に関しては、受傷後2週間以内に壊死組織を切除して創閉鎖を行う早期手術が推奨されている。同種皮膚移植や自家培養皮膚移植も考慮する。

 

感染対策

一般的には、予防的な抗菌薬の全身投与は不要とされている。広範囲症例や易感染症例などでは予防的投与も考慮する。

 

 

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熱傷の看護

とくに重症熱傷においては、多くの時間とマンパワーを要することがほとんどである。環境整備や感染予防に注力することはもちろんだが、各種の軟膏や創傷被覆材についてもある程度の知識を得ておく必要がある。

 

創部の洗浄

局所療法の一環として、軟膏塗布や被覆材貼付の前に創部の洗浄が行われる。病棟で共用のシャワーや浴室を使う場合には、感染に十分な注意が必要である。

 

環境

感染の標準予防策(手袋・ガウン・マスク着用)を徹底する。なるべく個室での管理とすることが望ましい。創部の状況や全身状態によって、エアマットや熱傷ベッドの使用を検討する。

 

排泄

排泄物によって創部が汚染されないようにしなければならない。植皮術後の感染予防はとくに重要である。臀部や会陰部に熱傷がある場合、肛門内留置型の排便管理チューブの使用を検討する。

 

疼痛管理

熱傷は激しい疼痛を伴うことも多く、その管理は重要である。NSAIDsやブプレノルフィン、ペンタゾシンのほか、ケタミン、モルヒネ、フェンタニルなどが使われる。近年ではリドカインなどのナトリウムチャネル遮断薬の有効性が報告されている 1)

 

処置(dressing change)の際にとくに強い痛みを伴うことが多く、鎮静薬を併用することも多い。乳幼児の熱傷例では、小児科医の協力を得ながら処置を行うことが望ましい。

 

フェイススケールやNumeric Rating Scale(NRS)などのペインスケールを用いて、患者が感じる疼痛の変化を追い、鎮痛剤の効果を評価する。疼痛コントロールが困難な場合は、緩和ケア科の医師など専門家にコンサルトすることもある。

 

栄養

現在では完全静脈栄養は推奨されず、なるべく早期からの経腸栄養が望ましいとされている。

 

精神的サポート

長期入院や疼痛、手術などのストレスにより、当然ながら患者の精神状態は悪化しやすい。また、受傷機転が自殺などの場合、精神科的介入は必須となる。院内にリエゾンチームがあれば入院早期から介入を依頼する。また、家族へのサポートや特別な配慮が必要となることもまれではない。

 

 

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アフターケア

リハビリテーション

長期の床上安静によって筋力が低下したり、皮膚や関節の拘縮のために可動域制限が生じることがしばしばある。広範囲熱傷の場合はとくに、たとえ創が治癒してもADLが大幅に低下してしまうリスクが高い。基本的には創が上皮化してからリハビリを開始するが、場合によってはまだ生傷がある段階でも積極的にリハビリを行う。

 

上皮化後の創部ケア

保湿を兼ねてヘパリン類似物質軟膏(あるいはクリーム)の塗布を推奨する。熱傷後は一般的に色素沈着や色素脱出(白く抜ける)が生じやすいため、半年以上の遮光を励行させる。3週間以上かかって上皮化した創は、肥厚性瘢痕として目立つ傷跡になりやすい。スポンジなどによる圧迫療法やシリコン材による保護を行う。トラニラスト内服やステロイド注射を行うこともある。また、瘢痕拘縮により皮膚性の運動制限が生じた場合は、Z形成術をはじめとする皮弁手術や植皮術など、形成外科的手技で対応する。

 

 

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引用文献

1)佐藤 誠ほか:ガーゼ交換時の疼痛制御にフェンタニルとリドカインが有効であったⅢ度熱傷の1例。日本熱傷学会機関誌38:274-278、2012

参考文献

1)日本熱傷学会学術委員会(編):熱傷診療ガイドライン、第2版、春恒社、東京、2015
2)日本熱傷学会用語委員会熱傷用語集改訂検討特別委員会(編):熱傷用語集2015改訂版、春恒社、東京、2015


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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