最終更新日 2018/06/18

サリドマイド

サリドマイドとは・・・

サリドマイド(さりどまいど)とは、現在、日本で再発・治療抵抗性の多発性骨髄腫ハンセン病のらい性結節性紅斑の治療に承認されている薬である。商品名はサレドカプセル®である。

1950年代に開発され、日本を含む世界で、睡眠薬、薬として市販されたが、妊娠初期に内服すると、胎児の四肢奇形や死亡を引き起こすことがわかり、1962年に販売停止された。その後、有痛性の皮膚症状である、らい性結節性紅斑を持つハンセン病患者に、鎮痛、鎮静目的で処方されたサリドマイドが、肉芽腫である結節性紅斑の病変そのものを改善させることがわかり、本剤の抗炎症作用、免疫調節作用に注目が集まり始めた。

サリドマイドのTNF-α(tumor necrosis factor)産生抑制による抗炎症、抗肉芽腫形成作用、FGF(fibrinogen growth factor)阻害による血管新生抑制作用が解明されたのに続き、サリドマイドがセレブロンというタンパクと結合することで、催奇形性および抗腫瘍作用、免疫調節作用を発揮することが明らかとなった。これらの作用機序から、現在治療承認されている難治性多発性骨髄腫やハンセン病のほか、後天性免疫不全症候群(AIDS)の症状緩和、ベーチェット病の肉芽腫病変の抑制、悪性腫瘍の治療や進行癌の症状緩和など、さまざまな悪性腫瘍や膠原病自己免疫疾患への臨床効果が期待されている。

副作用として多いものは、便秘、倦怠感、傾眠で、サリドマイドによる甲状腺機能低下に起因する可能性が示唆されている。投与期間が長期となると不可逆性の末梢神経障害を起こす確率が高くなり、減量あるいは中止が必要となる。ステロイドと併用した場合、静脈血栓症が懸念される。そのほか、腎機能障害、高カリウム血症、肝機能障害、皮膚症状、血小板減少や貧血の進行に注意する必要がある。

サリドマイドの誘導体であるレナリドミド(レブラミド®カプセル)やポマリドミド(ポマリスト®カプセル)は、より強い免疫調節作用、抗腫瘍作用を持ち、サリドマイドに比べ神経毒性が少ないとされているが、血小板減少や急性腎不全が問題となる場合は、サリドマイドのほうが好まれる。

サリドマイド、サリドマイド誘導体ともに、妊婦および妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌である。

執筆: 柳井真知

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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