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2015年09月26日

侵入してきた敵をたたく白血球|守る(2)

解剖生理が苦手なナースのための解説書『解剖生理をおもしろく学ぶ』より
今回は、免疫についてのお話の2回目です。

〈前回の内容〉

からだを守る免疫の力|守る(1)

解剖生理学の面白さを知るため、からだを守る免疫について知りました。

今回はからだのなかに侵入してきた細菌などと戦う白血球の世界を探検することに……。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

侵入してきた敵をたたく白血球

皮膚や粘膜といった体表のバリアはとても頑丈で、めったに侵入を許すことはありません。しかし、けがをして、皮膚や粘膜が切れたり破れたりすると、そこから細菌が深部組織に侵入してしまうことがあります。このような場合、次の防衛部隊として、白血球が活躍します。

白血球は、10~50℃の範囲であれば、アメーバのように動きまわることができます。血液に乗って移動し、侵入者を見つけると、毛細血管壁を通り抜け、侵入者のほうへと移動します。この現象を、白血球の血管外遊出といいます(図1)。

 

図1白血球の血管外遊出

白血球の血管外遊出

 

白血球は、どうやって侵入者を見つけるんですか?

組織が破れたり、感染したりすると、まるでSOSを出すみたいにサイトカインとよばれる化学物質が出てくるの。このサイトカインが引き寄せ役になるのね

白血球は、どれくらいのスピードで侵入者のところに到着するんだろう?

白血球の移動速度は、1分間あたり27~29μmといわれています。ちなみにいちばん速く移動できるのは好中球

好中球って、なんのことですか?

 

白血球の働き

白血球はまず、細胞の中につぶつぶがある「顆粒〈かりゅう〉球」と、つぶつぶのない「無顆粒球」に分けられます。さらに、顆粒球のうち、酸性の色素に染まるものを「好酸球」、塩基性の色素に染まるものを「好塩基球」、中性の色素に染まるものを「好中球」とよび、区別しています(図2)。つぶつぶのない無顆粒球は、「単球」と「リンパ球」に分類されます。

 

図2白血球

白血球

 

ロシア人の微生物学者、イリヤ・イリイチ・メチニコフ(Ilya IlyichMechnikov、1845~1916)は1884年、白血球が細菌を捕らえて食べることを発見しました。以来、白血球は食細胞ともよばれています。顆粒球にあるつぶつぶの中身はリソソームで、タンパク質分解酵素のアルカリプロテアーゼを含み、摂取した細菌を分解して消化します(図3)。

 

図3白血球の食作用

白血球の食作用

 

また、単球はとりわけ大きなものを飲み込むので、血管から出るとマクロファージ大食細胞)とよばれます。リンパ球は後に詳しく説明する抗原―抗体反応に関係しています。

白血球を食作用貪食〈どんしょく〉作用)の盛んな順に並べると、好中球>単球>好酸球>リンパ球>好塩基球の順になり、食作用の50~70%は好中球が担っています。好中球は、主として小さな細菌を処理する係で、5~25個の細菌を処理した後は死滅しますが、その後は膿となって残ります。

 

実はね、白血球が攻めるのは、外からやってくる侵入者だけではないの。なかには、体内に発生した自己の組織に由来する異物成分を攻撃する細胞もあるのよ。これをナチュラルキラー細胞(NK細胞)といいます

ナチュラルキラー? なんだか怖そうな名前ですね

 

ナチュラルキラー細胞とは

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、1975年に発見された、比較的新しい細胞です。その働きはまるで、一匹オオカミの殺し屋のようです。

常に体内を単独でパトロールし、がん細胞やウィルスに感染した細胞など、もともとは自分でも、異物のようになってしまった細胞を見つけると、単独ですばやく処理してしまいます。ナチュラルキラー細胞の活性は加齢とともに減退するので、高齢になるほどがん発生率が高くなるのもうなずけます。

 

白血球と血小板の寿命

白血球のうち、顆粒球の寿命は比較的短いようです。血液中に4~8時間、組織に出て4~5日間は存在しているようですが、感染が起こると、それによって自分自身も破壊されるので、その寿命は数時間ともいわれます。

単球も血液中には10~20時間程度しか存在しないようです。組織に入ると、組織マクロファージという巨大な細胞になって、数か月から数年間とどまるともいわれています。リンパ球は組織と血液中を何度も循環し、100~300日の寿命といわれています。血小板の寿命は10日程度です。

 

さて、生体には皮膚や粘膜のバリアがあること、そして、そのバリアを突破してきた侵入者には、白血球という防衛軍が立ち向かうことは理解できたかしら?

そこまでは、なんとなくわかりました

じゃあ今度は、白血球たちがどのようにして侵入者たちと闘うのか、その様子を、詳しく見ていきましょう。最初に話した『2度なし現象』の仕組みも、これでわかるわよ

 

 

抗原──抗体反応って、なんだ?

私たちの身体には、敵を記憶して、特定の相手にだけ働く免疫と、敵とみればなんでも攻撃する免疫がある、とお話しました。皮膚・粘膜のバリアも、白血球の顆粒球やナチュラルキラー細胞による防御も、実は後者にあたります。

では、前者にあたる免疫機能とはいったい、何によるものなのでしょうか?

先にお話した「2度なし現象」には、ある種のタンパク質がかかわっているのではないか。このことは、すでに1800年代から指摘されていました。病原体に感染した動物には、将来、同じ病原体から身を守るような物質が血液の中に産生されることがわかっていたからです。その物質は後に、「抗体」と名づけられました。

抗体は原則として、侵入者に出合うことでつくられます。抗体をつくる免疫反応を引き起こす侵入者を、抗原とよんでいます。

このような抗原―抗体反応はもともと、からだが「自分」と「自分でないもの」を区別するために発達したと考えられます。難しい言葉でいうと、「自己」と「非自己」を区別して、「非自己」を排除しようとする仕組みです。

 

以前に説明したように、抗体がつくられるためにはまず、病原体が1回体内に侵入し、身体がそれを記憶しなければなりません。さらに、ある抗原によってつくられた抗体は、その抗原に対してのみ反応し、ほかの抗原とは反応しません(図4

そうか、だから特異的防御機構というんだ

そう。抗原と抗体との反応には、1対1の特異的な関係があるというわけね

 

図4抗原と抗体

抗原と抗体

 

液性免疫と細胞性免疫

このように、抗原に対して特定の抗体がつくられ、それによって生体を防御する仕組みを液性免疫ともよんでいます。液性免疫を担うのは、リンパ球のうちのB細胞です。

生体内に侵入してきた病原体に対しては、リンパ球それ自体が直接攻撃をしかけることもあります。T細胞やNK細胞による攻撃がそれにあたります。抗原・抗体による液性免疫に対し、こちらを細胞性免疫とよびます(図5)。

 

図5液性免疫と細胞性免疫

液性免疫と細胞性免疫

 

液性免疫と細胞性免疫は、通常どちらか一方だけが働くのではなく、両方が同時に、協調して働いています。

 

先生、ちょっと待ってください。リンパ球やNK細胞はわかるけど、T細胞、B細胞ってなんですか?

T細胞、B細胞はリンパ球の種類なの。それぞれ成熟する場所が違うので、呼び方も違えば、もっている機能も違っています

違うのは、生まれる場所じゃなく、成熟する場所ってことですか?

じゃあ、白血球を含む血液細胞がいったいどこから生まれるのかから、ゆっくりと説明していくわね

 

〈次回〉

リンパ球と抗体|守る(3)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『解剖生理をおもしろく学ぶ 』 (編著)増田敦子/2015年1月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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