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2015年07月24日

血液は何でできている?|流れる・運ぶ(4)

解剖生理が苦手なナースのための解説書『解剖生理をおもしろく学ぶ』より
今回は、循環器系についてのお話の4回目です。

〈前回の内容〉

動脈と静脈|流れる・運ぶ(3)

血管の世界を探索中のナスカ。動脈と静脈、それぞれの働きを学びました。
今回は、血液について。そもそも血液って何でできている・・・?

 

血液はなんでできている?

さて、血管についてわかったところで、今度はそこを流れる血液についてみて行きましょう。血液と聞いて、ナスカさんが思い浮かべるイメージって何?

赤いこと、でしょうか

そのとおり。血液が赤いのは赤血球が赤いからでしたね。ほかには?

流れていることかな

そうね、血液は身体の中で唯一、流動性をもっている組織。これも、血液の大事な特徴の1つよね

 

以前、身体の60%は水でできている、とお話しました。60%とは重量を測定した場合の比率です。正確にいうと、「体重の60%は水」という意味です。
体内にある水分は体液とよばれますが、その体液のうち、約3分の1が細胞の外にあり、そのまた一部が血液にあります。血液の液体成分を生理学では血漿(けっしょう)といい、血液全体の約半分です。では、残りの半分はなんなのでしょうか?
試験管の中に採取した血液を入れ、血液が固まらないような薬剤を加えて放置しておくと、血漿成分は薄い黄色のうわずみとなって分離します(図1)。

図1血液成分

血液成分

 

このとき、下のほうに沈んだ赤い部分が、残りの成分です。この沈殿した成分は血球成分で、ほとんどは赤血球の細胞です。血球成分のうち、実に99%は赤血球、白血球血小板は残りの1%に過ぎません。

 

血液に占める血球成分の割合をヘマトクリット値(Ht)といって、通常は45%です。血球成分のほとんどが赤血球だから、Ht値を測ると、赤血球の量もほぼ測定できるのよ

先生、なんだか頭が重くて、フラフラしてきました

あらあら、風邪? それとも貧血かしら?

なんだかあくびも出て来ちゃって……ふぁああ

ちなみに、貧血とは赤血球の数が減り、ヘマトクリット値が低くなった状態のこと。よく、立ちくらみを貧血と間違える人がいるけれど、あれは起立性低血圧とよばれる症状で、貧血とは全く別のものです。あれ、あれっ、ナスカさん、大丈夫?

先生~、もうダメ(バタン)。おやすみなさい

なんだぁー、貧血じゃなくて、ただ眠かっただけなのね

 

図2赤血球

赤血球

 

血液を流れる円盤状の物質──赤血球

赤血球の細胞は、中央がくぼんだ円盤状の形をしています。円盤の中心部が周囲より薄くなっているため、顕微鏡で見るとドーナツのようです。
赤血球が単純な球形ではなく、扁平な円板状になっているのは、そのほうが表面積を大きくすることができ、酸素の積み降ろしに都合がよいからだと考えられます。大きさは、直径8μm(マイクロメートル)で、厚さは約2μm。μmとは1mmの1,000分の1ですから、赤血球を1列に125個並べてようやく、その直径が1mmになるかならないか、という大きさです。
以前ちょっとお話したように、赤血球の細胞には核がありません。その代わり、中にはヘモグロビンという、鉄を含んだタンパク質がぎっしり詰まっています。赤血球1個のなかに詰まったヘモグロビンは2億5,000万個。重量比でいうと、赤血球の95%がヘモグロビンです。
細胞にとって、核は最も大事な部分です。しかし、赤血球はその大事な核を失うことで、細胞は死なないまでも、エネルギーの消費を最小限に抑えることに成功しました。自らは酸素を消費することなく、酸素の運搬役に徹するため、分化したといってもいいでしょう。

血液1μLの中に含まれる赤血球は、女性だと400万個、男性だと450万個もあるんですって

1μLに400万個って、全身だとどれくらいになるんだろう

体重60kgの男性だと、血液4,800mL中に20兆個以上の赤血球が含まれている計算。これらを1列に並べると約16万kmになり、地球を4周もしてしまうのよ

ひえーっ、そんなに!

 

 

酸素を運ぶのはヘモグロビン

ヘモグロビンは、鉄を含むヘムという色素とグロビンというタンパク質の化合物です。この鉄の部分に酸素が結合して酸素化ヘモグロビンとなり、酸素を運びます(図3)。

図3赤血球の構造

赤血球の構造

ヘモグロビンの分子1つで運べる酸素分子は4つ。2億5,000万個のヘモグロビンを含む赤血球1個では、なんと、10億個もの酸素分子を運べます。「酸素を運ぶ」という機能から考えると、赤血球はヘモグロビン専用のコンテナに過ぎません。わざわざコンテナなどに入れなくてもいいのに、と思うのですが、それにはちゃんと理由があります。
ヘモグロビンは一種のタンパク質です。血液中にそのままヘモグロビンを大量に溶かし込むと、血液の粘り気が増してドロドロになり、流れが悪くなってしまいます。これでは、酸素を運ぶにもうまく運べず、届けるスピードも遅くなってしまいます。
赤血球というケースにヘモグロビンを入れたおかげで、ヒトの血液は100mLにつき、約25mLの酸素を運ぶことができるようになった、というわけです。

 

ヘモグロビンは酸素のたくさんある環境では酸素と容易に結合して、酸素が少なくなると容易に酸素を分離する、という特殊な性質をもっています

へえ、環境によって酸素をくっつけたり、離したりできるんだ

そうなの。だから、酸素を運ぶこともできるし、酸素を細胞へ受け渡すこともできる。これはまた、呼吸のところで詳しく説明するわね

 

ヘモグロビンには、酸素より好きなものがある

血液中の酸素が不足していたり、細胞への酸素の供給が十分でないと、酸素欠乏を引き起こします。酸素欠乏は生命にとって致命的です。脳はほんの15秒間、無酸素状態を続けただけで失神し、3分間を超えると、回復不能な障害をもたらすといわれています。酸欠状態を引き起こす原因はさまざまですが、外的要因の1つに火事があります。火事の際に生じる一酸化炭素は、酸素の数百倍の強さでヘモグロビンと結合します。したがって、酸素がヘモグロビンに結合したくても、結合できません。

図4ヘモグロビンの結合

ヘモグロビンの結合

 

窒素化合物や硫化物などの大気汚染物質も、酸素の数十倍もの強さでヘモグロビンと結合します。空気中にこうした物質が大量に含まれていると、ヘモグロビンは酸素を運ばずに、より相性のよい汚染物質たちと結合しようとします。こうなると、血液を流れるのは酸素ではなく汚染物質。身体中の細胞はいわゆる酸欠状態となり、最悪の場合は窒息死してしまいます。

 

〈次回〉

いざ、毛細血管の中へ|流れる・運ぶ(5)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『解剖生理をおもしろく学ぶ』(編著)増田敦子/2015年1月刊行

解剖生理をおもしろく学ぶ

引用・参考文献 

著作権について

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