切開処置に用いる必要物品|ドレナージに用いられる器具 | ドレーン・カテーテル・チューブ管理

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。

 

今回はドレナージに用いる切開器具について説明します。

 

 

石崎陽一
順天堂大学医学部付属浦安病院消化器・一般外科教授

 

Point

  • 皮膚切開で用いるメスには、先端が丸い「円刃刀」と尖った「尖刃刀」がある。
  • 膿瘍腔の大きさに応じて、「ペアン鉗子」「モスキートペアン鉗子」を用いて切開孔を開大する。
  • 膿瘍の状態にあわせて、メスによる「鋭的切開」またはペアン鉗子・モスキートペアン鉗子による「鈍的切開」を行う。

 

〈目次〉

 

はじめに

本コラムでは、表在の感染性病変に対する切開処置に用いる必要物品(表1)について概説する。

 

表1表在感染性病変に対する切開処置の必要物品

 

  1. 消毒薬
  2. 滅菌覆布、滅菌ゴム手袋
  3. 局所麻酔薬
  4. 局所麻酔用注射器
  5. メス(図1
  6. ペアン鉗子・モスキートペアン鉗子(図2
  7. スワブ培地・滅菌スピッツ図3
  8. 鋭匙(図4
  9. 洗浄用注射器・生理食塩水
  10. 込めガーゼ、ペンローズドレーン(図5

 

消毒薬

手術野の皮膚の消毒には、10%ポビドンヨード(PVP-I)、10%PVP-I配合50%エタノール製剤、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)配合エタノール製剤を用いる。

 

創傷部位・粘膜には10%PVP-I、0.01-0.025%ベンザルコニウム塩化物(BAC)、0.01-0.05%両性界面活性剤を用いる。

 

滅菌覆布、滅菌ゴム手袋

消毒後に術者は滅菌ゴム手袋を使用し、術野に穴あき滅菌覆布(ドレープ)を装着する。小さな膿瘍の場合、既製品では穴が大きすぎるため、穴のないドレープに予定切開線の大きさに応じた小孔をあけて使用する。

 

局所麻酔薬

高血圧などの循環器系の合併症、甲状腺機能亢進症糖尿病などがない場合は、アドレナリン含有1%リドカイン塩酸塩を用いると切開部からの出血を少なくすることができる。

 

循環器系の合併症を有する患者では、高血圧、心不全不整脈などを悪化させる可能性があるため、アドレナリンを含まない局所麻酔薬を使用する。

 

局所麻酔用注射器

5mLあるいは10mLの注射器(シリンジ)に27G注射針を装着して、局所麻酔を施行する。

 

局所麻酔薬は、小さな膿瘍では予定切開線に沿って注入し、大きな膿瘍では膿瘍の周囲に注入する。

 

メス(図1

図1メス

メス

 

皮膚切開に用いるメスには、先端のとがった「尖刃刀」と先端の丸い「円刃刀」がある。ドレナージには、尖刃刀(No.11)や切開部の小さな円刃刀(No.15)を用いることが多い。

 

液体貯留の確認のために、18G注射針で試験穿刺を行うこともある。

 

表皮だけをメスにより切開し、真皮、皮下組織は電気メスで切開すると止血が容易である。

 

ペアン鉗子・モスキートペアン鉗子(図2

図2ペアン鉗子・モスキートペアン鉗子

ペアン鉗子・モスキートペアン鉗子

 

皮膚、皮下組織をメスにて切開し、膿汁の排液が確認できれば、膿瘍腔の大きさに応じてペアン鉗子・モスキートペアン鉗子で切開孔を開大する。異物や壊死組織があれば、可及的に除去しておく。

 

膿瘍が皮膚に自潰しかけている場合、メスによる「鋭的切開」を行うと、組織が易出血性であるため止血に難渋することがある。この場合は、皮膚の脆弱部をペアン鉗子・モスキートペアン鉗子を用いて用手的に「鈍的切開」を行うこともある。

 

スワブ培地・滅菌スピッツ(図3

図3細菌培養容器

細菌培養容器

 

起炎菌を同定するため、膿瘍腔の内溶液を注射器で吸引して、滅菌スピッツに入れる。もしくは、内容腔内を綿棒で拭いて、スワブ培地に入れて細菌検査に提出する。

 

鋭匙(図4

図4鋭匙

鋭匙

 

膿瘍腔に比べて切開孔が小さい場合は、鋭匙(えいひ)により内腔を搔爬(そうは)して、内容を可及的に除去しておく。ただし、内腔は不良肉芽のため血管が豊富で、易出血性であるため、出血をきたさないように愛護的な操作が必要である。

 

洗浄用注射器・生理食塩水

20mLのシリンジに生理食塩水を充填して膿瘍内腔を洗浄する。

 

膿瘍腔が大きい場合には、シリンジに14Frネラトンカテーテルを装着して、膿瘍腔内を十分に洗浄する。

 

込めガーゼ、ペンローズドレーン(図5

図5ペンローズドレーン

ペンローズドレーン

 

切開孔が閉鎖しないように、切開部に込めガーゼを挿入しておく。ループ状にした数本のナイロン糸を挿入しておく方法もある(ナイロン糸ドレナージ)。

 

膿瘍腔が大きい場合は、ペンローズドレーンを留置する。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

 

[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社

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