気管支喘息の疾患解説

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
より深い知識を習得したい方は、本文内の「目指せ! エキスパートナース」まで読み込んで下さい。
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

 

今回は、アレルギー性肺疾患である「気管支喘息」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科准教授)

 

喘息と聞くと、込んだり、息苦しそうなイメージがあると思います。

 

そういえば、私も小さい頃、喘息持ちで辛かった思い出があります。

 

それは大変でしたね。喘息には、小さい頃に発症する小児喘息や、大人になってから発症する成人喘息があります。

 

成人喘息って、20歳(成人)になってから発症する喘息のことですか?

 

実は、成人喘息の20%は20歳未満の方が発症しています。
ここで、気管支喘息について、しっかりと覚えていってください。

 

〈目次〉

 

気管支喘息の基礎知識

気管支喘息とは、気管支に炎症が起こり、空気の通り道である気管や気管支が狭くなる病気です(図1)。

 

図1気管支喘息のイメージ

 

気管支喘息のイメージ

 

正常な気管支に比べて、気管支喘息の気管支は収縮していて、狭くなっています。

 

気管支喘息の特徴として、気道の慢性炎症や狭窄過敏性の亢進繰り返し起こる咳喘鳴(ぜいめい)呼吸困難などがあります。症状が発生した後、適切な治療を受けずにいると、難治化や慢性化の経過をたどり、最悪の場合、急性発作を繰り返して死亡することもあります。

 

わが国では、10万人あたり4.3人/年の発症率で、毎年2,000人弱が死亡しています。小児喘息は70%近くが3歳までに発症し、81%は小学校入学までに発症します。また、成人喘息の約20%は20歳未満で発症しますが、20歳以上の発症率は50歳~70歳の方で高くなります。

 

memo気道のリモデリング

気管支喘息の発作と炎症を繰り返すと、気道壁が厚く(硬く)なり、気道の狭窄が元に戻らなくなります(不可逆的)。この現象を、「気道のリモデリング」と呼びます。

 

気管支喘息の原因と病態生理

気管支喘息の原因は、気管支の炎症によって粘膜が障害され、神経が露出するためです。これにより、気道が敏感な状態になり、気道過敏性が進行します。

 

気管支喘息の主な病態は、慢性の気道炎症により気道が過敏になることです。正常なヒトであれば反応しない刺激でも、気管支喘息の患者さんの場合、気管支が過剰に反応します。また、狭窄を引き起こす発作が起こると、炎症が悪化します。さらに、気道過敏性も進行するため、発作もより起こりやすくなります。特に、感冒や天気・天候の変化、季節の変わり目などは、発作を引き起こす大きな要因です。

 

筆者らの検討では、気管支喘息発作で入院した患者さんの約50%で、感冒の主な原因であるヒトライノウイルス(human rhinovirus)をはじめとするウイルス感染を認めています(1)

 

memo気管支喘息を疑う患者さんに問診すべきことと、カルテに記載すること

筆者は、気管支喘息を疑う患者さんに対して、初診時に表1の21項目を問診しています。

 

表1気管支喘息を疑う患者さんに行う問診事項

 

 

アレルゲンへの曝露(花粉症の有無も)
感染の有無(咽頭痛、鼻水がなければ感冒とは言わない)
タバコ大気汚染などの気道への刺激(家の傍に工場がないか?)
動物のふけ
ホコリ、ダニ(自宅は木造鉄筋か? 築何年か?)
ゴキブリ
カビ
冷たい空気(クーラーなど)、天気の急激な変化(例.台風などの気温、気圧の変化での咳の誘発、夏に暑い外気からコンビニの冷房に入ると咳が出るなど)
塗装調理の強い臭いでの咳の誘発の有無
香水などの強い臭いでの咳の誘発の有無(ガソリンスタンドの傍での誘発なども)
精神的ストレス(精神的な疲労、乱れ。例.親族が死亡した、失恋した、仕事の内容・部署が変わったなど)
肉体的ストレス(転職した、睡眠不足、仕事が忙しいなど)
運動での咳の誘発(小さい頃、走って咳が誘発されたか)
薬物療法(例.アスピリンβ-ブロッカー湿布など)→医原性ということもあり得る
亜硫酸塩の入った食べ物(例.キウイマンゴー)、または水以外の飲み物(例.ワイン
胃食道逆流現象(起床時の胸部の灼熱感の有無、口が酸っぱくないか)が喘息の増悪因子
職業上の化学物質やホコリへの曝露(仕事の内容まで聞く)、過去の住居
慢性副鼻腔炎蓄膿)の有無
アトピー性皮膚炎の有無
家族歴(特に、祖父母、兄弟での喘息の有無)→喘息は隔世遺伝の可能性も
アルコール(特に、ワインは添加物が多いため発作を誘発しやすい)

 

また、重症な喘息の患者さんかどうかを見分けるために、筆者は下記3点を必ずカルテに記載しています。みなさんも、患者さんの容態を尋ねる際は、これらを必ず確認しましょう。

 

  • 会話が可能か?
  • 起座呼吸はあるか?
  • チアノーゼはあるか?

 

memo起座呼吸

起座呼吸とは、寝ている状態(仰臥位)では呼吸が難しく、上半身を起こした状態(起座位、半座位)になると呼吸が楽になる状態のことです。

 

気管支喘息の分類

通常、気管支喘息の患者さんでは笛音が聴こえます

 

この笛音の程度を分類する方法として、Johnson分類(表2)があります。

 

表2Johnson分類

 

 

Grade 0 聴取しない
Grade 1 強制呼気時でのみ
Grade 2 平静呼気で喘鳴
Grade 3 平静呼吸で呼・吸気喘鳴
Grade 4 呼吸音減弱

 

Johnson分類では、Grade 4が最も重症例にあたります。基本的に、重症例では、呼吸音と喘鳴が弱まります。しかし、聴診を行った際に喘鳴が聴こえないからといって、「喘鳴がない=軽症」と安易に判断するのは、危険ですので止めましょう。

 

目指せ! エキスパートナース喘息発作時に注目すべきポイント

患者さんが喘息を発作した時には、喘鳴や、肩で息をしているか(努力性呼吸)、呼気が長くなっているか、起座呼吸について着目しましょう。

 

喘息発作時の聴診と打診には、表3のような特徴があります。閉塞が重症化すると、呼吸音は減弱し、喘鳴を聴取しないことがあるので、忘れずに覚えておきましょう。

 

表3喘息発作時の聴診と打診の特徴

 

聴診 呼気時に、強くて高い連続性ラ音(笛音)が、肺野全体で聴こえる。
少し重症化すると、気道分泌物の貯留や気道閉塞の増強によって、吸気時にも断続性ラ音(水泡音)や連続性ラ音(笛音、いびき音)が聴こえる。
打診 肺の過膨張を反映した鼓音

 

聴診時に気を付けるポイント

気管支喘息の患者さんは、気管呼吸音と気管支呼吸音を聴診できる位置を中心に聴診しましょう図2)。具体的には、前胸部の頸部の音をしっかりと聴きましょう

 

図2気管支喘息の患者さんに行うべき聴診の位置

 

気管支喘息の患者さんに行うべき聴診の位置

 

特に、前胸部では頸部を中心に聴きましょう。

 

ナースへのワンポイントアドバイス

気管支喘息の患者さんは、聴診だけでなく、画像所見も併せて確認しましょう。

 

8週間以上、咳が続く(慢性咳嗽)場合には、図3にある疾患を罹患していることもあるため、意識しておきましょう。

 

図3慢性咳嗽の患者さんで鑑別すべき疾患

 

慢性咳嗽の患者さんで鑑別すべき疾患

 

memo喘息と咳喘息の関係性

咳喘息は、喘息の亜型または前段階と考えられています。下記の項目が該当するかどうかを確認しましょう。

 

気道過敏性が軽度亢進
咳感受性が正常範囲
アトピー素因が多くみられる
喀痰 or 誘発喀痰に好酸球あり
気管支粘膜に好酸球の浸潤あり
BALF中に好酸球増加あり
呼気の一酸化窒素(NO)濃度の上昇
吸入、または経口ステロイド薬の奏功

一酸化窒素(NO)の濃度は、気道の炎症状態を評価する方法として注目されています。

 

memo喘息とアトピー咳嗽の関係性

喘息とアトピー咳嗽の鑑別は、下記の項目が該当するかどうかを確認しましょう。

 

臨床症状は咳喘息と同じ
アトピー素因を有する
気管支拡張薬が無効
気道過敏性が正常
咳感受性が亢進
ヒスタミンH1受容体拮抗薬とステロイド薬が有効
喘息へ移行しない
呼気の一酸化窒素(NO)の濃度は上昇しない

 

Check Point

  • 気管支喘息の患者さんを聴診する場合、前胸部の頸部の音をしっかりと聴こう。

 

次回は、実際の気管支喘息の患者さんの聴診音を聴いて、特徴をしっかりと覚えましょう。

 

[次回]

気管支喘息患者さんの聴診音

 

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  • ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る

 


 


[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


Illustration:田中博志

 


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