一般検査とは | 検査値早わかりガイド

看護師のための検査値の解説書『検査値早わかりガイド』より。

 

今回は、一般検査について解説します。

 

江口正信
公立福生病院部長

 

〈目次〉

 

一般検査とは

一般検査は、尿検査便検査脊髄液検査、胸水・腹水検査、精液検査などの、排泄液・排泄物・分泌液あるいは穿刺液などを対象とする検査である。

 

尿検査

尿検査とは

患者から得られる検査材料(検体)のなかでも、尿は最も簡単かつ大量に採取することができる検体である。また尿の成分は、血液成分をある程度反映するので、腎疾患以外の疾患のスクリーニング検査として応用することができる。

 

尿の生成と排泄

尿は腎臓で生成され、尿管・膀胱・尿道を経て排泄される。これらの臓器を一括して泌尿器とよんでいるが、とくに尿管・膀胱・尿道を尿路とよんでいる。

 

腎臓には循環血液の約20%が流れている。腎臓の糸球体では1日に150〜180Lの血液が濾過され、これが原尿となる。原尿は、近位尿細管から遠位尿細管を経て集合管に至る間、有用な物質の再吸収や、不要あるいは過剰な物質の分泌が行われ、最終的に尿として1日に1000〜1500mL排泄される。

 

図1尿の生成過程

尿の生成過程

 

 

図2尿の排泄経路

尿の排泄経路

 

尿検査で異常値を示す疾患

表1尿検査で異常値を示す疾患

尿検査で異常値を示す疾患

 

図3尿検査で異常値を示す腎・尿路系のおもな疾患

尿検査で異常値を示す腎・尿路系のおもな疾患

 

図4尿検査で異常値を示す肝・胆道系のおもな疾患

尿検査で異常値を示す肝・胆道系のおもな疾患

 

おもな検査項目

尿検査には、尿量尿比重尿pH尿蛋白尿糖ケトン体ビリルビン、ウロビリノーゲン尿沈渣などがある。

 

その他の検査項目

尿細菌検査→尿培養

尿細胞診検査→病理学的検査

 

採尿法

自然尿

特別な器具を用いず、自然に排泄された尿による検査。これには次の4種の尿が用いられる。

 

中間尿

排泄された始めの尿や、最後の尿を用いず、排泄途中の尿を用いるもの。外尿道や腟由来の成分の混入を防ぐために一般的に用いられる尿である。さらに尿の細菌検査を行う場合には、局所の清拭を行った後に中間尿の採取を行うと、汚染による影響を防ぐことができる。

 

全尿

蓄尿法により排泄されたすべての尿を用いるもの。

 

初尿

排泄された最初の尿を用いる方法であり、淋菌やクラミジアなどの検出に有効である。

 

分杯尿

排尿時に、前半と後半で2つのコップに分けて尿を採取する方法。尿路内における出血や炎症部位の推定に有効である。

 

その他の採尿法

カテーテル尿、膀胱穿刺

自然な排尿が困難な場合や、微生物学的検査を目的として用いられる。

 

採尿時間

早朝尿(起床時尿)

就寝前に排尿し、朝起きがけに採取した尿であり、尿中成分の多い濃縮された尿を得ることができる。入院患者や学童集団検診などに用いられる。

 

随時尿

任意の時間に採取した尿であり、外来時に採取される尿の多くがこれにあたる。早朝尿に比べると希釈されている場合が多く、尿中の成分はそれだけ少ないものになるが、患者に時間的制限がなく、また新鮮な尿を検査することができる。

 

24時間蓄尿

24時間蓄尿は、昼夜や食事の影響を受ける成分の尿中排出量を正確に測定するために用いられる。蓄尿の方法は、まず排尿し、これを捨て、この時間から24時間内に排泄した尿をすべて蓄尿容器に貯めておく。24時間後には、尿意がなくても採取し、これを含めて24時間尿とする。

 

便検査

便検査とは

便検査は尿検査と同様に、患者に負担なく採取できる検体で、一般的には性状潜血検査寄生虫検査が行われる。

 

便検査でわかること

  • 消化管出血の有無:・十二指腸などの潰瘍、びらん、消化管の腫瘍(大腸癌など)
  • その他消化管の炎症→細菌学的検査
  • 寄生虫卵

 

胸水検査・腹水検査

胸水検査・腹水検査とは

胸水検査・腹水検査では、濾出液か滲出液かの鑑別を行うために、外観、比重、リバルタ反応、ルネベルク反応、蛋白量、細胞数、フィブリノーゲン量などをみる。

 

胸水検査・腹水検査でわかること

  • 胸水検査:心不全、胸膜炎、悪性腫瘍、その他
  • 腹水検査:肝硬変、腹膜炎、悪性腫瘍、その他

 

髄液検査

髄液検査とは

髄液検査は、中枢神経の感染症髄膜炎、脳炎、梅毒)、クモ膜下出血、脳・脊髄腫瘍などの疾患の診断に有用な検査で、一般的には、液圧検査、性状、細胞数、総蛋白、グロブリン反応、糖、クロールなどの検査がある。

 

髄液検査でわかること

  • 脳・脊髄液:髄膜炎などの炎症の有無、腫瘍、クモ膜下出血、その他

 

精液検査

精液検査とは

一般的検査として、性状(色、粘稠度、におい、pH)、精液量、精子数、運動率、奇形率などを調べる。

 

精液検査でわかること

  • 男性不妊の原因

 

関節液検査

関節液検査とは

関節液を採取し、液の性状や関節内浮遊物、白血球数、結晶成分、細菌培養などの検査により関節液の貯留した原因を調べる検査である。

 

関節液検査でわかること

  • 関節液の貯留した原因が、炎症性か非炎症性、感染性であるかどうかがわかる。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 検査値早わかりガイド 第2版』 (編著)江口正信/2014年3月刊行/ サイオ出版

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