最終更新日 2023/11/28

腎盂腎炎

腎盂腎炎とは・・・

腎盂腎炎(じんうじんえん、pyelonephritis)は、腎盂および腎臓に感染が生じた、発熱が特徴的な尿路感染症である。自覚症状がない場合もある。

 

尿路感染症の中でも上部尿路感染症と呼ばれるもの(下部尿路感染症は膀胱〜尿道の感染を指す)に区分され、単純性腎盂腎炎(既往歴のない成人閉経前女性が罹患する)と複雑性腎盂腎炎(単純性以外)とに分類される。

 

【原因】
ほとんどは尿道から細菌が入り込む上行性感染によって起こる。起因菌としては、大腸菌が最も多いが、緑膿菌、腸球菌、ブドウ球菌なども原因菌となり得る。

 

【症状】
腎盂腎炎には、急激に発症する急性腎盂腎炎と、何度も繰り返し発症する慢性腎盂腎炎とがあります。

(1)急性腎盂腎炎
膀胱炎症状(恥骨上部の痛み、排尿時痛、頻尿残尿感など)に加えて、発熱、悪寒もしくは悪寒戦慄、側腹部痛、肋骨脊柱角(costovertebral angle;CVA)の叩打痛、嘔気嘔吐が生じる。
非典型的な症状として上腹部痛や下腹部痛の訴えをすることもあり、全身に炎症が広がった場合には、菌血症、敗血症を合併し、ショックや急性腎不全多臓器不全を生じることもある。

 

また、結石や腫瘍が原因の場合は、血尿や尿の量が少なくなるなどの症状が見られる。

 

(2)慢性腎盂腎炎
微熱や食欲不振、倦怠感など、比較的症状が軽い、もしくは自覚症状がない場合が多い。しかし、何度も繰り返すと腎機能が低下し、慢性腎不全になる場合がある。

 

【検査】
尿検査血液検査を行い、細菌検査としてそれぞれ、尿培養検査および血液培養検査を行う。尿培養検査は、原因菌の特定を行うことができるため、抗菌薬の選択に必須となる検査である。

ほかに、超音波検査による水腎症の評価や、閉塞性腎盂腎炎を疑う場合には閉塞起点の評価目的のCT検査、病歴および治療経過から膿瘍形成のリスクも考えるときには造影CT検査を行うこともある。

 

【診断】
確立された診断基準はない。症状と上記のような検査結果、を総合的に判断して診断することが多い。

 

【治療法】
原因が細菌による感染のため、基本的には抗菌薬を投与する薬物療法が中心となる。

(1)薬物療法
原因菌により、適切な抗菌薬を投与する。
多くの場合、外来治療だが、全身状態によっては、初期治療は入院で行い、症状を見て経口抗菌薬へ切り替えて通院治療を行うこともある。

 

患者の生活状況などに応じて、起因菌が判明するまでの間、外来静注抗菌薬療法(outpatient parenteral antimicrobial therapy;OPAT)という方法で連日外来へ通院してもらい、1日1回投与が可能な静注抗菌薬を投与して治療する方法もある。

 

(2)手術療法
閉塞性腎盂腎炎を起こしている場合には、閉塞起点(尿管結石による閉塞、腫瘍による尿管圧排)の解除が治療の要となる。尿管ステント留置や、場合によっては腎瘻造設も選択肢となる。

 

【予防】
膀胱炎などの予防とも重なるが、陰部の清潔を保ち、尿量減少が生じないように十分な水分摂取を行う。

 

 

【引用・参考文献】
1)Kalpana Gupta.Acute complicated urinary tract infection (including pyelonephritis) in adults.UpToDate.
2)James R Johnson,et al.Acute Pyelonephritis in Adults.N Engl J Med.378(1),2018,48-59.
3)清水千華子.腎盂腎炎.日本感染症学会 感染症クイック・リファレンス.

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