光線療法

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は光線療法について解説します。

 

香取洋子
北里大学看護学部教授

 

 

光線療法

光線療法は、皮膚に光をあててビリルビンを分解させる方法で、新生児黄疸治療として第一に選択される。

 

一般的に使用される光線療法器は、スタンド型光線療法器が主流であるが、最近は着衣にて照射が可能で、母親に視覚的に与えるショックも少なく、治療中も母子同室が続けられるよう寝台部分に光線ユニットが組み込まれたベビーコット一体型(ベッド型)光線療法器(メデラ社製ビリベッド®など)も増えている。

 

目的・意義

青色光、または緑色光(波長エネルギー400~700nm)を全身の皮膚に照射することで、皮下のビリルビンを光異性体化し、化学反応で水に溶けやすいかたちに変化させ、便や尿中に排泄させる。

光線療法の適正基準を図1に示す。

 

図1 光線療法の適正基準

1.出産当日を日齢0とする
2.下記の黄疸危険増強因子のいずれかが存在するときには、一段低い基準線を超えたときに光線療法を考慮する
 [黄疸危険増強因子]
 ・新生児溶血性疾患 ・仮死
 ・アシドーシス(pH≦7.25) ・呼吸窮迫
 ・低体温(≦35℃) ・低タンパク症(≦5.0/100mL)
 ・低血糖症 ・感染症

光線療法の適正基準

(宮崎和子:看護観察のキーポイントシリーズ 母性Ⅰ、p.255、中央法規出版、2004より改変)

 

治療に使用される光線の種類

・ブルーライト
・グリーンライト
・高輝度LED(発光ダイオード)

 

光線療法の副作用

治療の仕組みや副作用を理解したうえでケアをしていく必要がある。また、治療が母親に与える心的ダメージも大きく、母子接触が制限されるため配慮が必要である。

 

光線療法中にみられる副作用
・発熱
不感蒸泄の増加
下痢、緑色便
嗜眠
・哺乳力低下
・皮疹、ブロンズベビー症候群(皮膚・尿がブロンズ色を呈する)

 

長期的にみられる副作用
・網膜の障害
・性成熟
・昼夜リズムへの影響 
・内分泌系への影響
・潜在的細胞障害の可能性

 

 

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光線療法の実際

実施する対象への観察項目

実施時の観察項目
・黄疸の出現時期、進行度、出現範囲
・哺乳力、哺乳量
・排便の状況
・検査データ:血清総ビリルビン値(TB)、アンバウンドビリルビン(UB)、間接ビリルビン・直接ビリルビン、クームス試験(児には直接クームス・母親には間接クームス)、血液一般(ヘマトクリット赤血球数

 

光線療法中の観察項目
バイタルサイン(とくに体温が上昇しやすい)
・水分出納(不感蒸泄が増える)
・便性の変化(ビリルビン便、下痢)
・皮膚所見(日焼け、ブロンズベビー、皮膚の発赤・発疹
・血清総ビリルビン値(光線療法中の経皮黄疸計による測定値は、血清ビリルビン濃度を反映しない)
・児の体動によってアイマスクの位置がずれていないか
・環境温
・神経症状
・哺乳力(低下しやすい)

 

必要物品

・光線療法器(スタンド型またはベビーコット一体型)
コットまたは保育器
・アイマスク(ベビーコット一体型の場合は必要ない)
・おむつ
・光遮断カバー(スタンド型の場合)

 

手順:スタンド型光線療法器(図2)の場合

1児を保育器またはコットに収容し、性腺保護のため、おむつのみ着用とし、裸にする。

 

図2 スタンド型光線療法器

スタンド型光線療法器

 

2網膜を光から保護するためアイマスクを装着する。アイマスクがずれて光が入ったり、鼻呼吸を妨げたりしないよう固定を確認する。

 

アイマスクの交換

アイマスク装着による眼脂の発生が起こらないよう、定期的に観察し、1日1回交換する。

 

3光源と児の距離は効果を高めるため40~50cmとなるようスタンドの高さを調節する。スタンド周囲には光遮断用のカバーをして、他児や看護者への影響を防ぐ。

 

4輻射熱が発生するため、発熱に注意し、体温測定は時間を決めて行う。またコットの場合、処置などで消灯すると急速に体温が低下するので注意する。

 

5照射は連続して行い、全身に照射するため2~3時間ごとに体位変換を行う。

 

6不感蒸泄が増えるため、水分出納、体重減少に注意し、必要であれば水分摂取量を1日あたり10~20mL/kg増やし、脱水を予防する。

 

殿部の保清

光線療法により便性が変化し、回数も増えるため、殿部発赤が起こりやすく、保清に留意する。

 

7光線療法について母親へ説明を行う。照射は、24時間行った後、血清ビリルビン濃度の下降を確認し、終了する。終了から24時間後にリバウンド(再上昇)がないことを確認する。

 

8必要時に、通常どおり授乳を行う。授乳時は、アイマスクをはずし、着衣させて授乳する。

 

光線療法中の授乳

光線療法中であっても母乳を中断する意味はなく、授乳は通常どおり可能である1)
以前は治療中母乳を中止する施設も多かったが、最近では母乳のメリットを重視し継続する施設も多い。

 

手順:ベビーコット一体型光線療法器(図3)の場合

1性腺保護のためおむつは着用し、ビリパジャマ®の前ファスナーを開け、ガーゼでおおわれている照射パネルの上に児の背中があたるように寝かせて袖を通し、ファスナーを締める。

 

図3 ベビーコット一体型光線療法器

ベビーコット一体型光線療法器

 

2アイマスクは照射が胴体部分に限定されるため必要ない。

 

3体温測定は時間を決めて行う。また、授乳のときはパジャマを脱がし、長着などの衣類を着せて行う。

 

4光線療法について母親へ説明を行う。
 照射は24時間行った後、血清ビリルビン濃度の下降を確認し、終了する。終了から24時間後にリバウンドがないことを確認する。

 

5必要なときに、通常どおり授乳を行う。

 

 

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交換輸血

光線療法を行っても血清ビリルビン値が急激に上昇する場合は、交換輸血の適応となる。

 

Rh型血液型不適合で実施する場合は、ビリルビンに加えて感作した赤血球、抗体も除去できる利点がある。

 

交換輸血の副作用として、ヘパリン血を使用した場合は出血、CPD血液使用の場合は低カルシウム血症、低血糖、また、輸血処置による低体温がある。新生児の血液を85%入れ替え、全身管理が必要になるのでNICUなどの施設で行う。

 

 

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引用・参考文献

1)田村正徳:早期新生児黄疸に対する母乳栄養中断の是非に関する検討、新生児誌、(17)、P.374-381、1981

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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