TC療法（看護・ケアのポイント）／卵巣がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、卵巣がん（卵巣癌）の患者さんに使用する抗がん剤「TC療法（パクリタキセル＋カルボプラチン療法）」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。
第1話：『TC療法（化学療法のポイント）／卵巣がん』
西森久和
（岡山大学病院 血液・腫瘍内科）
〈目次〉
必ず覚えて！ TC療法の注意点
投与前の注意点
投与前には、患者さんの発熱の有無や食事・排便・睡眠の状況、手足のしびれ、むくみ、筋肉痛、関節痛の有無などを確認しましょう。
医師が把握していないことで、看護師さんが気づいたことがあれば医師と情報を共有しましょう。
パクリタキセル（タキソール）は、アルコールの成分が入っているため（ビール中ジョッキ1杯分）、患者さんのアルコール過敏の有無を確認することと、投与後に自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないように説明が必要です。
投与中・投与後の注意点
アレルギー反応の出現には十分に注意しましょう。アレルギー反応が起こった時の対応マニュアルを決めておき、迅速に対応できるよう、院内のスタッフとシミュレーションをしておくことも大事です。
TC療法のポイントA
- パクリタキセルとカルボプラチンに対するアレルギー（過敏症状）に十分注意しよう！
血管外漏出
パクリタキセル（タキソール）は、血管外漏出によって皮膚の発赤や腫れ、痛みの症状から、皮膚潰瘍や壊死を起こす可能性があります。カルボプラチン（パラプラチン）も、漏出部位に痛みや発赤を起こすことがあるため、投与時に痛みや違和感がないかを注意深く確認しましょう。
もし、血管外漏出を発見したら直ちに点滴を止め、できるだけルート内の薬剤を注射器で吸引し、抜針したうえで、主治医に報告しましょう。
TC療法時の申し送り時のポイント
パクリタキセル（タキソール）、もしくはカルボプラチン（パラプラチン）によるアレルギー症状の有無を必ず伝えましょう。もし、症状があった場合には、どのような症状が出たのか、どのような処置を行ったかを伝えるようにしてください。
また、現在の痺れの状態について評価し、必要があれば鎮痛剤などの使用について医師に相談しましょう。
ルート確保で困ることがあれば、必ず医師と確認をしておきましょう。
申し送り例
1サイクル目のTC療法を行った患者さんです。アレルギー症状はありませんでした。ただし、もともとお酒が弱い方で、治療当日はかなり眠気が強かったようです。引き続き、来院時には自分で運転して来ないように説明しています。
経過中、10日目にGrade 3の血小板減少を認めましたが、皮下出血はありませんでした。Grade 3の好中球減少も認めましたが、発熱はありませんでした。両下腿にむくみもみられましたが、一時的でした。今のところ、しびれはありません。
TC療法のポイントB
- パクリタキセルはしびれが出やすいので、注意して観察しよう！
TC療法時の看護記録に記載すべきこと
来院時の発熱の有無、食事・排便・睡眠の状況、手足のしびれ、むくみ、筋肉痛、関節痛の有無などを確認して記載しましょう。
また、抗がん剤投与中の嘔気などの症状とその程度を必ず記載しましょう。
アレルギー予防（ジフェンヒドラミンの内服、デキサメタゾンの点滴）が行われたことの確認、抗がん剤投与中のアレルギー症状の有無、バイタルサイン（血圧や脈拍など）を必ず記載しましょう。また、血管穿刺部位の発赤や疼痛の有無についても確認のうえ、記載しておきましょう。
さらに、皮下出血、点状出血など、出血傾向がないかを確認して看護記録に記載しましょう。
患者ケア・緩和ケアはココを押さえる
TC療法では、アレルギー反応の出現した場合にできるだけ早く発見して対応することが重要です。患者さんと細かくコミュニケーションをとって、アレルギー症状の有無を確認しましょう。
また、TC療法は、好中球減少が比較的高い確率で起こります。そのため、特に、感染症や発熱性好中球減少症には注意が必要です。また、カルボプラチン（パラプラチン）は血小板減少をきたしやすいので、患者さんには、皮下出血を起こしている部位がないかを確認すると同時に、皮膚に点状出血がないか観察して、「出血傾向」の確認をしましょう。
患者さんの来院時には、日々の体温測定、食事量、便秘・下痢、しびれ、むくみの有無などについて、必ず確認します。さらに、可能であれば、「抗がん剤日誌」のようなものに、患者さんが日々の状況を記載してもらいましょう。それを確認すると、より効率的に情報収集を行うことができます。
また、痺れは日常生活に与える影響が大きく、状況によっては抗がん剤の減薬や休薬が必要になる場合もあります。患者さんが困っていることについて医師にしっかりと伝え、内服薬の追加など早期から治療介入してもらうようにして下さい。
TC療法のポイントC
- 副作用の好中球減少、血小板減少に注意しよう！
- 第1話：『TC療法（化学療法のポイント）／卵巣がん』
- ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る
[文 献]
［監 修］
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
［編集・執筆］
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
＊本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。
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