肝臓が化学工場と呼ばれるのはなぜ?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は肝臓の機能に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
肝臓が化学工場と呼ばれるのはなぜ?
肝臓には、栄養素の代謝と貯蔵、薬物や中毒性物質の解毒・分解・排泄、血液性状の調節、胆汁の分泌、生体防御作用など、多くの機能が備わっています。こうした機能のほとんどは、物質の化学的な反応によって行われています。
肝臓が化学工場と呼ばれるのは、人体という社会を成り立たせるための化学反応が、休むことなく行われているからです。これらの機能のうち、1つでも支障が生じると、私たちの体の様々なところに影響が現れてきます。肝臓の主な機能は次の通りです。
◎栄養素の代謝と貯蔵
小腸で吸収されたブドウ糖からグリコーゲンを作り、肝臓内に蓄えます。血液中のブドウ糖が不足すると、グリコーゲンをブドウ糖に分解して血液中に送り出します。また、タンパク質を合成したり、不要なアミノ酸を分解して尿素として尿中に排泄します。さらに、脂肪酸の分解、コレステロールの生成なども行っています。
◎薬物や毒素の解毒、分解、排泄
経口摂取された薬物や毒素は、最終的に肝臓に運ばれて解毒(げどく)され、尿とともに排泄されます。解毒は、肝内血管(類洞)に存在するクッパー細胞による貪食(どんしょく)作用と、酵素による化学的分解によって行われます。
◎血液性状の調節
肝臓は血液を貯蔵し、必要に応じて放出する役割を担っていま す。また、鉄を貯蔵・再利用したり(鉄代謝)、ビリルビンとして 胆汁中に排泄します(ビリルビン代謝)。肝臓ではフィブリノゲン やプロトロンビンなどの血液凝固物質の生成も行っています。
◎胆汁の生成・分泌
胆汁は肝細胞によって生成されます。胆汁は、毛細胆管→肝内 胆管枝→肝内胆管→総胆管という順に流れ込み、十二指腸に分泌 されます。
◎生体防御作用
肝臓に存在するリンパ球は、生体の防御に働きます。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版