血圧測定の意義とポイントは?

 

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は血圧測定の意義とポイントについて解説します。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

〈目次〉

 

血圧測定の意義

血圧とは、心臓から拍出された血液が血管壁を押し広げることによって生じる圧力のことです。血圧は心臓が収縮するときに最も高い数値を示し、これを収縮期血圧とよびます。また、心臓が拡張(弛緩)するとき に最も低い数値を示し、これを拡張期血圧とよびます。

 

血圧は、①心拍出量、②血管壁の弾力性、③循環血液量、④血液の粘度、⑤末梢血管の抵抗、といった5つの要因に左右されます。

 

血圧値は血液の循環動態を知る手がかりとなります。とくに高血圧は、脳卒中心筋梗塞を引き起こす重要な要因となります。

 

血圧計の種類

臨床で使用されている血圧計には、アネロイド式血圧計(バネの力を利用したもの)、電子血圧計(半導体を利用したもの)、自動電子血圧計が使用されています(図1)。

 

図1さまざまなタイプの血圧計

さまざまなタイプの血圧計

 

アネロイド式血圧計では聴診が必要となります。電子血圧計が一般的によく使用されていますが、低血圧やショック時に聴診法では血圧が測れないことがしばしばあります。その際にはアネロイド式血圧計を用いると、橈骨動脈や正中皮動脈の触知を確認し触診法で収縮期血圧を確認することができます。

 

自動電子血圧計は、手術後や継続的に血圧測定が必要な場合に使用します。

 

また、以前には水銀血圧計が使用されていましたが、水銀の処分による環境汚染が問題となり現在は使用されていません。

 

聴診器のチェストピース(採音部)には、ダブルタイプ(膜面とベル面)、シングルタイプ(膜面のみ)があります(図2)。

 

図2聴診器の構造

聴診器の構造

 

チェストピースの膜面とは、開口部がプラスチック製の膜(ダイアフラム)でおおわれていて、呼吸音や腸蠕動音、正常心音などの高音が聴き取りやすくなっています。血圧測定の場合、膜面のほうで聴取します。一方、ベル面とは開口部にゴムのリングが付けられていて、異常心音などの低音が聴き取りやすくなっています。皮膚に軽く密着させて使用します。

 

血圧測定の実際

血圧測定時は、以下のことに注意してください。

 

  • 血圧変動をきたすような要因を極力排除し、安静状態での安定した値を測定します。測定値が高い場合は、10分ほど安静臥床してもらい再測定した値を踏まえアセスメントしましょう。
  • マンシェットの装着は、ゴム嚢(加圧部)の中心に上腕動脈がくるようにマンシェットを上腕に巻きます。マンシェットのゴム嚢部分の幅は、上腕長の約2/3とします。成人の場合は、12~14cmのものを使用します。マンシェットの幅が広すぎると、最高血圧が低めに測定され、逆に狭いと高めに測定されます。
  • マンシェットの下端と肘窩との間は2~3cm開けます。マンシェットをきつく締めすぎた場合、加圧前から血管を圧迫していることから、ゴム嚢への圧迫が少なくても血流が止まるため、値は低めに出ます。同様の理由で、厚手の長袖上衣による上腕の圧迫も避けるようにします。
  • 上腕動脈を触知し、その上に聴診器のチェストピースの膜面のほうを皮膚に直接あてがい、軽く圧迫します。チェストピースをマンシェットの中に入れると、正確な値が得られなくなるので注意します。
  • 1拍につき約2mmHgずつ下がるように送気球のねじを緩め、コロトコフ音を聴きます。コロトコフ音が消えたら、ただちに送気球のねじを緩めて圧を0まで下げます。

図3血圧測定の実際

血圧測定の実際

 

①上腕動脈を触知

血圧測定の実際

 

②ゴム嚢の中心に上腕動脈がくるようにマンシェットを上腕に巻く

血圧測定の実際

 

③聴診器のチェストピースの膜面を上腕動脈に当てて、軽く圧迫する

血圧測定の実際

 

④1拍につき約2mmHgづつ下がるように送気球を開き、コロトコフ音を聴く

 

座位時の血圧測定方法

米国心臓協会( AHA : American Heart Association )では、血圧測定は肘を心臓の高さで屈曲させた状態で測定することを推奨しています。血圧測定の測定時は、腕を体幹に直角にするというポジションを守ることが重要です。

 

腕を体幹に平行にした状態では、腕を体幹と直角にした状態に比べて、収縮期血圧、拡張期血圧のいずれも高い測定値となります。それは、立位、仰臥位と姿勢にかかわらず同様です。

 

血圧測定を行う際の禁忌事項

  • 乳がんリンパ節郭清を受けた患者の患側で血圧測定をしてはいけません。リンパ液の還流が悪くなり、患側上肢はリンパ浮腫を起こしやすくなります。そのため、マンシェットによる加圧のため上腕神経が圧迫され、上肢のしびれや麻痺、うっ滞などの循環障害が起こる恐れがあります。
  • 麻痺がある患者の麻痺側で原則として血圧測定をしてはいけません。麻痺側は、末梢の循環が悪く静脈血・組織液がうっ滞しやすい状況にあります。血管の狭窄はなくても、運動量が少なく循環血液量の低下がみられることで、健側よりも低く測定される可能性があります。しかし、最近の研究結果から健側で点滴をしているような場合は、麻痺側で測定してもかまわないとされています。
  • シャント造設をしている側の上肢から血圧測定を行ってはいけません。シャントの血流が保たれ、詰まらせないようするためには、「閉塞・狭窄」「感染」「出血」を予防するために、シャント側での血圧測定を行ってはいけません。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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