腰椎穿刺(脳脊髄液検査)|脳・神経系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、腰椎穿刺(脳脊髄液検査)について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

腰椎穿刺とはどんな検査か

腰椎穿刺とは、腰椎クモ膜下腔よりスパイナル針で穿刺し、髄液の一部を採取することで、髄液の測定および診断を行う検査である(表1)。腰椎穿刺は、治療を行う手段として用いられることもある。

 

表1髄液の検査結果

髄液の検査結果

 

頭蓋内圧亢進が生じる疾患は髄膜炎炎・頭蓋内出血・腫瘍などである。70~150mmH2Oであれば基準値、200mmH2O以上は頭蓋 内圧亢進である。

 

腰椎穿刺の目的

  • 腰椎穿刺は、腰椎クモ膜下腔から髄液を採取し、クモ膜下出血、髄膜炎の診断を行う。また、悪性腫瘍の腫瘍マーカーなどの測定もできる。
  • 髄膜炎や悪性腫瘍の髄腔内播種に対する治療として、薬液を直接クモ膜下腔内に注入するため、腰椎穿刺を行うこともある。
  • 腰椎穿刺は頭蓋内圧を測定する1つの方法でもある。しかし、頭蓋内圧が高い場合には、原則として禁忌である。

 

腰椎穿刺の実際

  1. 検査の説明をする。
  2. 必要物品をそろえる。
  3. 検査の前に排尿を済ませ、バイタルサインの測定をする。
  4. ベッドの高さを調整する。
  5. 患者の体位を整え、腰の下に処置用シーツを敷く(図1)。

図1患者の体位と髄液採取

患者の体位と髄液採取

 

・ベッドの端に患者の身体を寄せ、側臥位をとらせる。
・両膝を曲げ、腹部に引き付けるようにして両手で抱え込み、顎を胸に近づける。
・背はエビのように丸くし、腰椎骨間腔をできるだけ開くようにする。

 

  1. 必要物品を無菌的に準備する。
  2. 医師に消毒薬(イソジン)を渡す。
  3. 医師は滅菌手袋をつけ、穴あき布片を穿刺部位が中心なるようにかける。
  4. 医師に注射器を渡し、局所麻酔薬を無菌的に吸えるように介助する。
  5. 局所麻酔後、クモ膜下腔に穿刺をする。
    ・ 穿刺部位:ヤコビー線上の第4腰椎棘突起を目安に、第3 ・4腰椎間または第4 ・5腰椎間に穿刺する。
  6. 看護師は穿刺中に患者が体位を保持できるよう体を支えながら、声かけや意識状態の観察を行う(図2)。

図2腰椎穿刺時の体位と介助の仕方

腰椎穿刺時の体位と介助の仕方

 

  1. 初圧の確認を行う。
  2. 医師の指示により、クエッケンステットテストの介助を行う。
  3. 採取した髄液を滅菌スピッツに入れる(採取した髄液の量、性状、色調を観察する)。
  4. 終圧を確認する。
  5. 薬剤を注入する際は無菌的に準備をして薬剤を渡す(薬剤注入時は、終圧の測定は行わない)。
  6. 穿刺針の抜去後、滅菌ガーゼを医師に渡し、穿刺部位を圧迫する。髄液の漏れのないことと止血を確認後、医師に消毒薬(イソジン)を渡しガーゼ保護し固定用テープで固定する。
  7. 体位を仰臥位にし、バイタルサインの測定・観察を行う。
  8. ベッドの高さを戻し、ナースコールを患者の手元に設置し、安静時間の説明を行う。
  9. 使用物品の片付けを行う。

 

腰椎穿刺前後の看護の手順

1)患者への説明

  • 腰椎穿刺は患者によって目的が異なるため、医師に確認し、患者に適した説明を行う必要がある。
  • 穿刺時、身体的苦痛を伴う検査である。また検査後も低髄圧症をきたすこともあるため、安静が強いられる検査であり、十分な説明が必要である。

2)検査前の処置

  1. 体位や牽引性頭痛によって嘔吐することがあるため、検査2時間前の多飲多食は禁止する。
  2. 検査の前に排尿を済ませ、バイタルサインの測定をする。
  3. 必要物品をそろえる。

・ルンバールセット ・蒸発皿 ・消毒薬(イソジン) ・穴あき滅菌布片 ・処置用シーツ ・滅菌手袋 ・滅菌ガーゼ ・鑷子 ・5mL、10mLシリンジ ・23G注射針 ・局所麻酔薬 ・滅菌スピッツ3~4本 ・固定用テープ ・膿盆、鋭利物廃棄ボックス

 

  1. 医師が施行しやすい環境をつくる(ベッドと椅子の位置調整や高さ、照明など)。
  2. 滅菌操作で行える空間を作る。

3)検査中

  1. 不必要な露出は避け、保温に注意する。
  2. 患者の体位の介助をし、適時声かけを行い不安の軽減に努める。
  3. 穿刺中の患者の状態を観察し、異常時は医師に報告する(下肢のしびれ、顔色、脈拍呼吸の変化、頭痛、悪心の有無)。

4)検査後の管理

  1. バイタルサインを測定し、意識レベル、瞳孔、頭痛、嘔気、めまいの有無の観察を行う。
  2. 頭部を高くすると、低髄圧性の頭痛を生じるため、枕を外した仰臥位で1~2時間安静を保つよう説明し、ナースコールを患者の手元に設置し、何かあれば押すように説明する。
  3. 安静時間が終了したらバイタルサイン測定・観察(穿刺部位の疼痛、出血、滲出液、発赤、腫脹、ガーゼ上汚染、頭痛、吐気、嘔吐、下肢のしびれ)を行い安静解除とする。
  4. 検査翌日、穿刺部位を観察・消毒し絆創膏を貼る。異常がなければ入浴許可する。

 

腰椎穿刺において注意すべきこと

  • 患者の体位を介助するときは、患者の首と膝を支え、患者の背面が床と垂直になるように抱え込む。圧の動揺を防ぐために力んだりせず、静かに呼吸をするように説明する(や腹圧をかけると髄液圧が高くなる)。
  • 患者の背中側で医師が操作する検査であり、患者は状況が見えず不安を抱きやすい。看護師は検査の進行状況を適時説明し、リラックスするように介助する。

 

腰椎穿刺現場での患者との問答例

これから、腰の所から針を刺して髄液の検査を行います。検査時間はだいたい20~30分程度です。

 

痛いですか。

 

少し痛いと思いますが、痛みを取るように麻酔の注射をしてから行います。でも、痛みが強かったり、気分が悪くなるようでしたら、そばにいますので我慢なさらずにおっしゃって下さい。

 

検査の後は、すぐに動けますか。

 

すぐに動いてしまうと、頭が痛くなったり、気分が悪くなってしまうこともあるので、2時間位ベッドで横になってもらうことになります。何かあれば遠慮せずナースに声をかけてください。

 

わかりました。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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