更年期には要注意!「子宮体がん」について|働くナースが知るべき病気【6】

婦人科医の清水なほみが、看護師のみなさんに知っておいてほしい病気についてお知らせします。

 

働くナースが知るべき病気【6】

更年期には要注意!「子宮体がん」について

 

子宮がん」と一口に言っても「子宮頸がん」と「子宮体がん」の二種類があることをご存じですか?


20代~30代の女性がなりやすい「子宮頸がん」と、40代以降の女性がなりやすい「子宮体がん」。かつて日本では子宮頸がんが主流でしたが、食生活や生活習慣の変化などによって子宮体がんが増えてきたため、最近では両者の比率はほぼ同じになっています。
この2つは発生する場所だけでなく、原因や予防法も大きく異なります。


前回は「子宮頸がん」についてお知らせしましたが、今回は「子宮体がん」についてお伝えします。

 

 

【目次】

子宮体がんってどんな病気?

更年期・肥満の人は要注意

月経じゃないのに出血する場合は危険

子宮体がんの進行と治療

 

子宮体がんってどんな病気?

子宮体がんは子宮体部、つまり子宮の奥の方にできるがんのことです。
具体的には子宮の内側を覆っている「子宮内膜」という部分ががんになっていきます。
内膜というと一枚の紙のようなものをイメージするかもしれませんが、子宮内膜は細胞や毛細血管といった組織で構成されています。

 

子宮内膜は月経の周期に応じたホルモンの影響を受け、だんだんと厚くなります。これは女性の体が妊娠に備え、準備をしているしるし。この分厚くなった子宮内膜に受精卵が着床するのです。
妊娠すれば子宮内膜は赤ちゃんのベッドとしての役割を持ちますが、もし受精卵が着床しなければ剥がれてしまいます。この剥がれた子宮内膜が、月経血なのです。

 

子宮内膜がきちんと剥がれずに分厚いままでいると、子宮体がんのリスクが上がります。そのため、毎月きちんと出血しない人や、閉経が近づき月経が不規則になっている人は、子宮体がんに要注意です。

 

 

更年期・肥満の人は要注意

以前は「子宮のがん」というと子宮頸がんが主流で、子宮体がんは少ないのが一般的でした。しかし、食生活の欧米化や晩産化・未産率の上昇などにより、最近では子宮がん全体のうちほぼ半分を、子宮体がんが占めるようになっています。

 

子宮体がんの主な原因は、女性ホルモンのバランスの変化です。卵巣からでるエストロゲンというホルモンは、子宮内膜を厚くする働きがあります。このホルモンが子宮体がんの発生に関係していると考えられています。
また、女性ホルモンの変化が大きい閉経期は子宮体がんになりやすいといわれています。罹患率は40代から増加し50代でピークに達し、60代、70代になるとやや減少します。

 

他に子宮体がんのリスクが高い人は、以下のような女性ホルモンのバランス変化が大きい方が挙げられます。

 

・    妊娠・出産をしたことがない人
・    多嚢胞性卵巣症候群排卵障害の一種)などで月経不順の人
・    閉経が遅い人
・    乳がんのホルモン治療を受けている人
・    更年期の治療でホルモンをエストロゲンのみ補っている人

 

このほか、エストロゲンは卵巣以外に皮下脂肪からも作られるため肥満の方も子宮体がんには注意が必要です。

 

月経じゃないのに出血する場合は危険

子宮体がんの症状で最も多いのが「不正出血」です。
不正出血とは「月経以外に性器から出血する」こと。少量の出血や褐色のおりものも不正出血に含まれます。特に閉経後の方で、不正出血が続く場合は注意が必要です。他にも、おりものが増えるという症状でがんが見つかる方もいらっしゃいます。

 

子宮体がんを発見するもっとも有効な方法は、子宮体がん検診です。
子宮頸がんの検査とは違い、細胞を擦り取る細い器具を子宮の奥まで入れて検査します。その際に多少の痛みや出血を伴うこともあります。40歳以上でリスクが高い方や、若くても不正出血がある方はきちんと検査を受けておいた方がいいでしょう。子宮体がんは性交経験がない人でもなるリスクがあるため、上記に当てはまれば検査が必要です。

 

子宮体がんの予防法は、なんといっても女性ホルモンのバランスを整えることです。
そのためには「適切な体重を保つ」「月経不順を放置しない」「脂肪の多い食事を摂らない」「低用量ピルを飲む」などを心がけましょう。脂肪の取りすぎや肥満に心当たりのある方は、生活習慣の改善に取り組んでみてください。

 

子宮体がんの進行と治療

子宮体がんの治療法は、子宮を摘出する手術が主となります。
子宮体がん検診で「疑陽性」や「陽性」の結果が出た場合は、さらに詳しく調べるために「内膜組織診」という検査を行います。

 

検査の結果が「複雑型異型内膜増殖症」だった場合は、いわゆる「前がん状態」にあります。ちなみに複雑型異型内膜増殖症とは、子宮の上皮細胞に異型があり、細胞の集まりの構造にも異常がある場合のこと。


このケースでは、お腹を開ける手術をして子宮を摘出します。まれに30代の女性がこの病気を発症することがありますが、ご本人が妊娠・出産を希望する際は、子宮を取らないで済むホルモン療法を行います。この療法では黄体ホルモンの働きをする薬を飲み、子宮体がんの増殖や転移を抑えます。

 

いずれかの検査で「子宮体がん」という結果が出た場合は、MRIなどで病気の広がり具合を確認し、子宮や卵巣やリンパ節を取る手術を行います。


病気の広がり具合によっては、術後にさらに放射線治療や抗がん剤による治療を追加することもあります。

 

早期発見・治療のためには、何より検診を受けることが大切です。また、子宮体がんは症状に応じて治療方法もさまざまですから、担当の先生と詳しくお話するようにしてください。


【清水なほみ】

日本産婦人科学会専門医で、ポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。産婦人科・女性医療統合医療を専門に、患者に最適な医療を提供。クリニックのほかに、NPO法人やAll aboutガイドなどでも情報提供や啓発活動を行っている。

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