呼吸器疾患と皮膚|全身性疾患と皮膚④

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は呼吸器疾患と皮膚について解説します。

 

八木宏明
静岡県立総合病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1呼吸器疾患に関連する皮膚症状としては、呼吸器疾患が皮膚に症状を引き起こす場合と、膠原病などのように呼吸器と皮膚の両方に症状が発生する疾患がある。

 

呼吸器疾患により皮膚に出現する症状

ばち指

の甲が大きく弯曲して指の先端全体を包み込み、指の先端が太鼓のばち状に丸く肥大した状態である。慢性的な爪部の酸素欠乏に起因すると考えられ、気管支拡張症、肺気腫などでみられる。

 

黄色爪症候群

爪の黄色変化と肺の慢性病変(慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎など)に加え、リンパ浮腫を合併する症候群である。爪は全体に黄色に着色し肥厚する。

 

 

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呼吸器と皮膚に異常が発現する疾患

膠原病

膠原病のうち間質性肺炎を高率に合併するものは、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、皮膚筋炎である。

 

SLEでは、間質性肺炎のみならず胸膜炎を生じやすい。


全身性強皮症では、下肺野の肺線維症が特徴的である。

 

皮膚筋炎では、筋症状の出現しない皮膚筋炎は無筋症性皮膚筋炎とよばれ、皮膚症状のみでの診断が必要となるが、間質性肺炎は高率に合併する。

 

サルコイドーシス

原因不明の多臓器を侵す肉芽腫性疾患である。肺では両側肺門リンパ節腫脹で始まり、次第に肺実質に浸潤する。肺は初期には自覚症状を欠くため、皮膚症状の検査から肺病変を発見することも多い。

 

逆に肺病変で本症を疑ったら、皮膚科にコンサルトして皮膚病変を探し皮膚生検で診断できれば、患者にとってもメリットは大きい。

 

感染症

皮膚にみられる結核や深在性真菌症の多くは、まず肺に病変(肺結核、肺真菌症)をつくり、そこから血行性やリンパ行性に皮膚に散布される。

 

皮膚深在性真菌感染症としてはクリプトコッカス症、アスペルギルス症などがあり、おもに免疫不全患者にみられる。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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