慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疾患解説

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
より深い知識を習得したい方は、本文内の「目指せ! エキスパートナース」まで読み込んで下さい。
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

 

今回は、気道閉塞性疾患である「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科准教授)

 

タバコが原因の呼吸器疾患では、COPD(シーオーピーディ:慢性閉塞性肺疾患)が有名です。

 

そういえば、落語家の桂歌丸師匠もこの疾患になったってテレビで見た覚えがあります。

 

他にも有名な方々が、この疾患になっています。
いずれは、世界三大疾病の一つになるとも言われているぐらい、患者さんが増加しているんです。

 

臨床現場でも、COPDの患者さんに出会う機会がますます増えそうですね。

 

間違いなく増えると思います。
そのときに落ち着いて対応できるように、ここでCOPDのポイントを押さえておきましょう。

 

〈目次〉

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の基礎知識

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、長年に渡る喫煙歴があり、空気の通り道である気管支が狭くなり、息をすばやく吐き出せなくなる(気流閉塞)疾患です。

 

COPDは、閉塞性の障害で、一度、罹患すると正常な肺の状態には戻りません

 

また、呼吸機能検査を行うと、異常値を示します。

 

memo呼吸機能検査で見られる異常値とは?

深く息を吸って一気に吐き出した空気量(努力性肺活量)に対して、最初の1秒で吐き出した量(1秒量)の割合が70%未満の場合が異常値にあたります。

 

COPDの原因と病態生理

COPDは、息を吐き切る前に気道が閉塞し、空気を肺内に溜めこんでしまった結果、肺が過膨張を引き起こす病態です。COPDの患者さんは、呼気時の末梢気道の早期閉塞を予防するため、口すぼめ呼吸を行い、気道内の圧を高める対処法をとっています(図1)。

 

 

図1口すぼめ呼吸

口すぼめ呼吸

 

A:吸気時、B:呼気時。
口をすぼめて、少しずつ呼吸をします。

 

また、COPDの患者さんは、空気が肺内に残ってしまうため、胸郭がビア樽状に変形していきます(図2)。

 

 

図2ビア樽状に変形した胸郭

ビア樽状に変形した胸郭

 

A:健常者の肺、B:COPDによって大きくなった胸郭(ビア樽状)。
COPDの患者さんは、胸郭が健常者と比べて大きくなっており、横隔膜も下がった状態になっています。
また、心臓も圧迫された状態になっています。

 

肺がビア樽状になると、酸素を取り込むことが大変になります。これは、肺が大きく膨らみきっている状態のビア樽状から、さらに胸郭を動かして肺を広げるのが難しいためです。

 

COPDの症状

COPDの患者さんは、慢性の咳や痰、労作時の呼吸困難感を主訴とします。患者さんの訴えのなかに、長年の喫煙歴や、痰が喉にへばりついてとれないといった訴え、階段昇降時や坂道での息切れなどの訴えがあった場合は、COPDの診断のヒントになります

 

COPDの患者さんは、年に何度か急性増悪という状態になります。急性増悪の原因には、さまざまな呼吸器感染症によるものや、天気・天候の影響、大気汚染など、さまざまなものがあります。例えば、ライノウイルスRSウイルスは、健常人では感冒様症状で治癒することが多いですが、COPDの患者さんでは急性増悪の原因になります。また、インフルエンザウイルスも、急性増悪の原因になるので注意しましょう。

 

COPDの増悪では、閉塞性換気障害が強くなり、酸素とCO2の交換がスムーズに行えず、体内のCO2濃度が上昇し、CO2ナルコーシスと呼ばれる状態になることがあります。

 

COPDの診断

COPDの診断では、呼吸機能検査を行います。1秒間に吐く力(1秒量)が、思いっきり吐いた全体量(努力性肺活量)の70%未満であれば、COPDと診断されます。

 

COPDの治療

COPDの治療法は、COPDの重症度によって異なりますが、一般的には、気管支拡張薬の吸入(抗コリン薬またはβ刺激薬)で治療を開始します。

 

聴診時に気をつけるポイント

基本的には、全肺野をまんべんなく聴取します。前胸部の音も背部の音も、しっかりと聴きましょう(図3)。

 

 

図3COPDの患者さんに行うべき聴診の位置

COPDの患者さんに行うべき聴診の位置

 

前胸部、背部ともに、まんべんなく聴きましょう。

 

memoCOPDの患者さんの呼吸音は聴こえにくい

COPDの患者さんの多くは、長年の肺の閉塞性障害によって、胸郭の前後がビア樽のように大きくなっていることがあります。このため、聴診器を当てる位置と肺実質の距離が遠くなり、呼吸音(肺胞呼吸音など)が聞こえにくくなります。

 

呼吸音が聞こえにくいことも、COPDの代表的な所見の一つです。

 

ナースへのワンポイントアドバイス

COPDの増悪には、細菌とウイルス感染が大きく関わっています。特に、汁や咽頭痛があれば、ウイルス感染後の状態を疑う所見です。患者さんのアセスメントでは、呼吸状態の確認や、血液中の二酸化炭素濃度が著しく上昇するCO2ナルコーシスという状態かどうかのアセスメントが必要になります(表1)。

 

表1CO2ナルコーシスが影響を与える患者さんの状態

 

 

CO2濃度 患者さんの状態
5 Torr程度上昇した場合 高炭酸ガス血症により、手掌が暖かくなる(Hot hand)
15 Torr以上上昇した場合 羽ばたき振戦の症状が現れる
30 Torr以上上昇した場合 意識レベルの低下を起こす
50 Torr以上上昇した場合 腎血流が減少し、乏尿になる

(文献1より一部引用・改変)

 

目指せ! エキスパートナースCOPDと肺気腫は別物

COPDを勉強していると、肺気腫という疾患を目にすることがあると思います。看護師さんのなかには、「COPD=肺気腫」として覚えている方もいるかもしれません。しかし、COPDと肺気腫は、定義が異なります。

 

肺気腫とは、喫煙によって終末細気管支以下の肺実質の破壊が生じた疾患です。呼吸機能に問題があるというより、画像上に問題がある場合に判断されます。そのため、肺気腫の患者さんのなかには、呼吸機能検査では明らかな異常が指摘されない方もいるかもしれません。

 

一方、COPDの患者さんは、気管支拡張薬の吸入治療開始後にも関わらず、呼吸機能検査で明らかな異常(1秒率が70%未満)がみられます。もちろん、肺気腫の患者さんでも、気管拡張薬の吸入後も1秒率が70%未満であればCOPDです。

 

Check Point

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長年の喫煙歴が原因の疾患。一度、罹患すると正常な肺には戻らない。
  • COPDの診断では呼吸機能検査を行い、治療の第一選択薬には気管支拡張薬を使用する。
  • COPDの患者さんを聴診する場合は、全肺野をまんべんなく聴こう。

 

次回は、実際の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんの聴診音を聴いて、特徴をしっかりと覚えましょう。

 

[次回]

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者さんの聴診音

 

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[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


Illustration:田中博志

 


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