産婦人科(産科・婦人科)看護師のお仕事とは?

産科は助産師が中心で看護師の活躍の場がない?婦人科は共感疲労が大きそう?

そんなイメージをもっている看護師も多いのではないでしょうか。

実際に働いているナースに、現場のリアルなやりがいを聞きました。

 

6つのポイントでわかる産婦人科のお仕事内容

産婦人科(産科・婦人科)看護師のお仕事とは?

産婦人科の看護師のお仕事

 

 

 

【1】産婦人科ナースの役割と、婦人科・産科それぞれの役割とは?

産婦人科に共通する役割と、婦人科・産科それぞれの役割を紹介します。

 

【産科・婦人科共通】コミュニケーションによる心理面のケア

産科・婦人科に共通する特徴的な役割は、コミュニケーションによる心理面のケアです。

 

特に産科では、会話ができない状態の患者さんは少なく、入院中の不安を和らげるコミュニケーションの機会は重要です。

 

◆先輩看護師の声

【産科 看護師2年目】

産科に配属されて驚いたのは、病棟がとても賑やかなことです。

入院している妊婦さんと、ラウンド中の助産師さんがあちこちで楽しそうに会話しています。

 

でも、よく聞いているとただ会話しているわけではなくて、その中で妊婦さんの不安をケアしているんですよね。

特に、初産婦さんは初めてのことだらけで不安を溜め込んでいるので…。

私はまだ2年目なので、ベテラン助産師さんの会話に聞き耳を立てて勉強するようにしています。

 

 

一方で婦人科では、入院中の患者さんの中には、子宮摘出術や乳房切除術など受け、心理面でのケアが必要な場合もあります。

 

女性の心理に寄り添ったコミュニケーションが求められます。

 

◆先輩看護師の声

【婦人科病棟 看護師3年目】

乳がん治療のため乳房切除術後の患者さんがボディ・イメージの変化に精神的なダメージを受けている場合などがあります。

新卒で婦人科に配属された当時は、どのように声をかけたらいいか迷うことが多かったです。

「寄り添おう」と力みすぎて、心身ともに疲れてしまったこともありました。

 

経験を積む中で、こちらが心を開いていれば患者さんのほうからポツポツ話してくれることがわかってきて…。

こちらから「話しかけよう」とせずに、「患者さんの話を聞く」余裕をもつ姿勢が大事だなと思います。

 

 

婦人科ナースの役割【1】婦人科がん、婦人科疾患の患者ケア

婦人科病棟で勤務する場合、婦人科がんの患者さんへのケアは欠かせない役割です。

 

子宮がん、卵巣がんなどの患者さんで、手術が必要な場合には、手術前のオリエンテーションや、オペ出し・オペ迎えなどを行います。

 

婦人科病棟には、外科的治療と内科的治療を受ける患者さんが混在しているのも特徴です。

術前術後のケアだけでなく、抗がん剤治療など薬物療法を受ける患者さんのケアも重要な役割です。

 

 

婦人科ナースの役割【2】不妊・避妊相談、不妊治療の介助

婦人科の外来に勤務する場合、妊娠を望む方へのケアをしたり、相談を受ける場面があります。

 

◆先輩看護師の声

【ウィメンズクリニック勤務 看護師13年目】

外来にいらっしゃる患者さんは、赤ちゃんを望むあまり少しの体調の変化にも敏感になっている方が多い印象です。

 

「この変化はこういう兆候なので問題ありません」など、医療者として根拠をハッキリ伝えるようにしています。

「大丈夫ですよ」という声かけだけではダメなんです。

 

みなさん、心のどこかに「もしかしたら妊娠できないかもしれない」という不安を抱えていらっしゃるので、安心感を与えられる口調も心がけています。

 

不妊治療を受ける患者さんには、採血などの検査を行うほか、人工受精の前後の生活について医師とともにオリエンテーションを行う役割があります。

 

 

産科ナースの役割【1】分娩前のアセスメント

分娩を控えた妊婦の全身状態を確認するのも産科ナースの役割。

 

陣痛促進剤を使用する場合には、モニタリングも重要になります。

薬剤の効果は人それぞれ。モニタリングをしながら変化を医師に報告しつつお産の進行を介助します。

 

 

産科ナースの役割【2】間接的な分娩介助

間接的な分娩介助とは、器械や医療機器の準備、分娩中の妊婦の血中酸素濃度やバイタルチェックのことです。

帝王切開の場合には、オペ前の剃毛や導尿も含まれます。


なお、直接的な分娩介助については医師や助産師が担う役割です。

分娩時の呼吸法の指示や、赤ちゃんをとりあげる行為が直接的な分娩介助にあたります。

 

◆先輩看護師の声

【産婦人科勤務 看護師2年目】

分娩周辺のあらゆる準備、介助が看護師の役割です。

お産の進行は一人ひとりまったく違うので、いつも先読みして動いている感じです。

 

分娩にも入りますが、看護師ができることは限られています。

直接介助ができる助産師への憧れもありますが、少し距離をおいて介助する看護師ならではの役割もあるのではないかなと、最近感じはじめています。

 

 

産科ナースの役割【3】バースレビュー、産褥期の母子相互作用を促すケア

産科ナースは、出産後の母体の全身管理、新生児のケアも行います。

最近では、出産後、お産について振り返るバースレビューを行う施設が増えているそうです。

出産直後は、実は褥婦が一番ケアを必要としている時期です。

その時期に、分娩に立ち会ったナースとともに出産を振り返る時間を設けること自体が、ケアになります。

 

産褥期は母子相互作用が生まれる大切な時期です。

授乳の指導、退院後の新生児の発育に関するアドバイス、また退院後の母体の変化などの指導を父母ともに行います。

 

 

【2】産婦人科ナースの1日ってどんなタイムテーブル?

産婦人科ナースは、どのようなタイムテーブルで1日を過ごしているのでしょう?

産婦人科と産婦人科、それぞれのナースに取材し、とある日勤のタイムテーブルをご紹介します!

 

婦人科(病棟勤務)ナースのある日勤

(約1,000床の大学病院、婦人科病床40床の場合)

 

 

産科ナース(産婦人科クリニック勤務)のある日勤

上記はあくまで一例であり、毎日決まった時間軸があるわけではないそうです。

「授乳」と「お産」がすべてで、妊婦さんと赤ちゃんのタイミングでタイムテーブルが決まるという声が聞かれました。

 

 

【3】新人ナース必見!産婦人科ナースの特徴

産婦人科ナースってどんな特徴がある?

現役ナースへの取材・アンケートからイメージを作成しました!

※あくまでインタビューや取材から作成したイメージです。

 

  • 頭:女性の身体を熟知
    産婦人科ナースは女性の身体を熟知しています。産科・婦人科に勤務すると、自分の身体についても知らなかったことがたくさんあったんだと気づくことが多いという声も聞かれました。
  • 耳:聞き上手
    産科・婦人科ともに、不安を抱えている患者さんが多いことが特徴。何気ない会話の中で患者さんの不安を聞き出し、ケアしていきます。
  • 目:大量出血を見ても動じない
    実は産科は「急変」が多い病棟。大量出血となってしまうことも少なくありません。救急科と同じように大量出血を見ても動じず対処できる能力が必要です。
  • 口:説明がうまい
    産科・婦人科ともに、説明しなければならないことが多いのが特徴。薬の作用機序や治療・入院計画についても気にされる方が多く、きめ細かい説明を理路整然と行う能力が必要です。
  • 手:繊細
    婦人科では婦人科疾患の患者さんへのアロママッサージを日常ケアに取り入れているという声が聞かれました。産科では新生児の沐浴、清潔ケアなど繊細さが求められるケアがあり、指先まで配慮が行き届いています。
  • 胸:高い共感力
    産婦人科ナースに共通して、「女性の力になりたい」という熱い思いがある人が多いようです。婦人科がんの患者さんでは乳房切除によるボディイメージの変化や、子宮摘出による衝撃を受けている場合があります。その気持ちにより沿い、力になりたいという思いが原動力だという声もありました。
  • 腹:専門家としての矜持
    産婦人科の患者さんに共通するのは身体面だけでなく、心理的なケアを必要としていること。
    専門家として知識に裏付けられた説明をすることで、不安の払拭に努めます。
  • 足腰:産褥体操の指導でがっしり
    産褥体操の指導でも体力が必要ですが、お産に立ち会う場合は一晩中つきっきりのことも少なくありません。強靭な足腰が必要です。
  • がま口:ふつう
    産婦人科に特有の手当などはあまりみられないようです。いわゆる“セレブ産院”など、高級志向のクリニックなどでは、給与が大学病院・総合病院よりは高めであるという声も聞かれました。

※あくまでインタビューや取材から作成したイメージです。

 

 

【4】産婦人科ナースのキャリアプラン。3つの実例

産婦人科(産科・婦人科)勤務、という経験からどのようなキャリアプランが考えられるでしょうか?

先輩たちのキャリアプランを聞いてみました!

 

1)産科から小児科へ

産科看護師として、間接的な分娩介助を行う中で、出生後の赤ちゃんのケアに携わりたくなり、小児科に転職したという先輩のキャリアです。

産科での経験から、母親の心身の状態について見識が深いことが、コミュニケーションに役立っているそうです。

 

◆先輩看護師の声

産科で看護師をしている中で、徐々に直接お産に携われないことに葛藤を感じていて…。

個人的には、出生後の母子のケアに一番やりがいや適性を感じるようになりました。

 

産後の母子を見ているうちに、純粋に赤ちゃんへの愛おしさが募って子どものケアを専門にしてみたいという気持ちから、小児科に転職しました。

産科でお母さんに深く関わっていた経験が、小児科でも役立っていると感じます。

(転職時、看護師3年目)

 

 

2)婦人科→手術室へ

婦人科病棟で、周術期の患者さんをケアした経験から、手術室に転属した先輩のキャリアです。

 

◆先輩看護師の声

私が勤務していた病棟では、周術期の患者さんがほとんどだったので、毎日オペ出しとオペ迎えを行っていました。

オペ看の人が、術前訪問に来てくれるときに、かっこいいなぁと憧れるようになって、細かい作業も好きだったので、手術室へ転属希望を出しました。

 

オペ前オリエンテーションのときには、病棟で患者さんを看てきた経験が役立っていると感じます。

(転属時、看護師3年目)

 

 

3)産科の看護師から助産師に!

産科に魅せられて、看護師から助産師へのキャリアチェンジを希望する先輩もいます。

 

◆先輩看護師の声

看護師が実際の分娩の際にできる行為は間接介助になります。

お産をお母さんと一緒に進行しているのは、やっぱり助産師さんだなぁと感じます。

赤ちゃんが産まれたときの喜びを、もっともっと一緒に感じられるように、現在は助産師資格の取得を目標に、毎日の勤務を頑張っています。

(産婦人科勤務、看護師3年目)

 

 

【5】現場のリアルがわかる!産婦人科ナースのあるあるエピソード

先輩たちが経験してきた「産婦人科あるある」を集めました。

産婦人科(産科・婦人科)の雰囲気を捉えてみてください。

 

あるある【1】他科の看護師や友だちから婦人科の症状や治療について質問される(婦人科)

婦人科の専門知識が豊富ということで、看護師仲間や周囲の友だちから頼りにされるのが婦人科あるある。

「生理が遅れてるんだけどどうしたらいい?」「夜勤しながらでも不妊治療できる?」など、頼りにされるそうです。

 

あるある【2】昼ドラ顔負けの人間ドラマに遭遇(婦人科)

診察の付き添いに来た男性、お見舞いに来た方男性をてっきり旦那さんかと思いきや、浮気相手だったという昼ドラのような現場に遭遇するのも婦人科あるある。

不妊治療の外来では、嫁姑バトルに遭遇したという声も聞かれました。

 

あるある【3】ジャニーズの話で患者さんと意気投合(産科)

切迫早産での入院の場合など、体も心も元気なのにずっと安静にしていなければならない患者さんが多いのが産科の特徴。

テレビや雑誌を見ている様子から、患者さんと趣味の話で盛り上がってしまうのも産科あるあるです。

ジャニーズにかぎらず、共通の話題がみつかると患者さんとのコミュニケーションの機会が増え、看護・ケアにも役立つそうです。

 

あるある【4】分娩中、気分が悪くなってしまった旦那さんの看護(産科)

分娩の立会中に、気分が悪くなってしまう旦那さんに看護が必要になることも産科あるある。

だんだんと、「この旦那さんは脱落するかも…」とあたりをつけられるようになるという声も聞かれました。

あるある【5】患者さんの自立度が高いので、基礎的な看護スキルを忘れてしまう(産科)

産科病棟に入院する妊婦さんは、自分の身の回りのことは自分でできる方がほとんどです。

清潔ケアや体位交換をする機会が少なく、手技を忘れてしまうというのも産科あるあるです。

 

 

【6】産婦人科ナースを目指すあなたへ。先輩からのアドバイス

産科・婦人科ナースの先輩に、新人看護師からの質問をぶつけてみました!

 

Q:産科の看護師に向いているのはどんな人ですか?

A:「毎回違う」ことを楽しめる人が向いていると思います。

お産は一人ひとり毎回違います。

ルーチンで動くことがほとんどなく、毎日予想がつかないことの連続です。

「毎回違う」ことを楽しめる性格の人が向いていると思います。

 

あとは、「気が強い人」ですかね…(笑)

産科は、助産師と産科医が患者さんのためにそれぞれの意見を戦わせている場です。

そこに適応できる人でないと続かない印象はあります。看護師として、自分の意見をもって臨床にのぞめるように心構えをもってほしいです。

(大学病院 助産師2年目)

 

 

Q:産科の新人が最初に学ぶべきことは何ですか?

A:陣痛促進剤の機序・副作用、大量出血のときの対応や分娩時のリスクなどを頭に入れておいてください。

出産の現場は、他科に比べて訴訟につながるリスクの高い現場だと個人的には認識しています。

ちょっとした言い回しの違いで生じる誤解、投薬や対応のミスから訴訟に発展することがないともいいきれません。

そういった事態を招かないため、薬剤の知識や分娩時のリスクについてはしっかりと頭に入れておくべきです。

 

妊婦さんや旦那さんを前にすると、最初は緊張してうまくしゃべれないと思います。

理路整然と落ち着いて説明できるように勉強してみてください。

(産婦人科クリニック 看護師3年目)

 

 

Q:婦人科に向いているのはどんな人ですか?

A:「女性の力になりたい」と心から思える人は向いているのではないでしょうか。

新卒から7年、婦人科病棟で勤務していますが、婦人科に長く勤める人は「女性の力になりたい」という想いが強いように思います。

 

私自身、婦人科がんの患者さんを多く看てきて、それぞれの方が抱えているお子さんや旦那さん、家族への想いを聞いてきました。

 

入院中だけでなく、患者さんのその後の生活や、家族を含めた人生全体をサポートしたい、と思える人は向いていると思います。

 

とはいえ、私も最初からそんなふうに思えていたわけではないので…(笑)

まずは、たくさんの患者さんの生活や背景に関心をもって接することから始めるのがいいと思います。

(総合病院 婦人科病棟 7年目)

 

***

産婦人科(産科・婦人科)看護師のお仕事を少しでも具体的にイメージできますように。

この記事を役立てていただければと思います。

 

★あなたの勤務先のリアルを教えてください!★

実際の現場では、多様な業務やエピソードが満載だと思います。病院規模や種別によっても違いがあることでしょう。

ご感想や意見・質問のほか、「私の病院はこんな感じですよ!」「こんな経験をしたことがあります」「“救急あるある”はこんなのもありますよ~」など「あなたの勤務先のリアル」をコメント欄へどしどしお寄せください。

 


(取材・文)看護roo!編集部、新田哲嗣

(イラスト)明(みん)

 

 

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