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2018年12月29日

アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)は有意義か?がん患者と緩和ケア医の安楽死をめぐる本音(3)

写真家・がん患者の幡野広志さんと、緩和ケア医の西智弘さんによる本音のやりとり。

最終回です(第1回第2回はこちら)。

ガラス反射を利用して、対談風景を撮影する幡野さんの写真。

本対談の写真は、ガラス反射を利用した幡野広志さんの撮影による。

 

 

ACP(アドバンス・ケア・プランニング、人生会議)は意味がない?

幡野:西先生は、「人生会議」って意味あると思いますか?

 

西:1回の話し合いでは意味がないと思うんですよね。

「この人はどういう人なんだろう」と興味をもって、患者・家族・医療者で継続的に話し合うことには意味があると思います。

 

人生会議は、終末期の過ごし方や延命治療についてだけが注目されがちですが、本来は「その人がどういう人か」知ろうとするプロセスです。

 

どういう価値観をもって、何が好きで、どんな考え方をする人だから、「最期はこうしたい」と言っているんだと、まるごとわからないと意味がない。

 

あとは、人生会議をファシリテートする人のコミュニケーション能力は、かなり高くないと厳しいですね。ただ、「胃瘻は希望しますか?」と聞くだけでは意味をなさない。

(※編集部注)

- 人生の最終段階に望む医療・ケアについて、家族や医療者らと前もって繰り返し話し合うプロセスを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」という。2018/11/30に「人生会議」という愛称が付けられた。

 

西先生と映るかんごるーちゃんの写真。

 

 

コミュニケーションの訓練は囲碁に似てる

幡野:コミュニケーション能力は、訓練と勉強でどうにかできると思うんだよね。

 

西:コミュニケーションは囲碁に似てると思っていて。

囲碁に「定石」ってあるじゃないですか、「この手にはこう打ち返す」というセオリー。

 

コミュニケーションにも、そういう「定石」はある。

 

でも、定石だけではダメで、それを学んだあとに、実践経験を積んで腕を磨いて変化に対応できるようになる。

 

だんだんと、「ここに打てば、この人は打ちやすくなるかな」と相手に配慮できるようにもなる。

 

「定石を学んで実践して、変化を知る」を繰り返してうまくなっていく。

 

幡野:囲碁と同じで、一人でするものじゃないから、患者側のコミュニケーション能力も重要ですよね。

 

西:下手同士で打ち続けても、上手になりづらいのと同じですね。

 

幡野:もし医師と患者の両方が下手だと、意思決定の場面ではゴールに行きつかないですね。

 

西:看護師がその間をつないでくれると、うまくいったりもします。

 

幡野:つなぐのも大変ですね。

 

西:看護師の提案や助言に、すべての医師が耳を傾けるとは限らないですし。

 

 

何のために生きるか、誰が決める?

幡野:医療者だけじゃなくて、家族と話し合うのも厄介ですよね。

親戚に「頑張ってほしい」と言われて、「あなたのために生きてないんだけどな」と思った経験、ありますもん。

 

逆に、家族からしても、「自分のために生きられる」とか「自分のために死なれる」って負担なんじゃないかと思ったりするんですけど。

 

西:それも人によりけりですよ。

たとえば、年老いた親に対してストレートに「自分のためにもっと生きてほしい」という子どももいます。

 

「子どもがそう言うなら、頑張る」という親もいるし。

「子どもはそう言ってるけど、勘弁してくれ」という親もいて、本当に人それぞれ。

 

僕は、そういう患者さんと話をする時は、「あなたの人生なんだから、あなたが望むように生きていいですよ」と伝えます。

 

そうすると、「家族のために生きることが、私の人生です」とおっしゃる方もいます。

そうじゃないこともあります。

 

幡野:でも、亡くなった患者さんが、最期にどう思ってたかって本人には聞けないですよ。

自分のほんとうの意思とは違う最期を迎えた人、少なくないと思うけどな。

 

西先生の白衣姿の写真

 

 

AIと決めるほうがいい

幡野:意思決定のコミュニケーションについて、僕の中では、実は答えが出てるんです。

医師とは話さずに、AI (人工知能)のドクターと話せばいい。

 

母親から生まれてくる段階から、AIと付き合いはじめる。

要は、生まれてからすべてのデータが蓄積されているAIが、かかりつけ医やホームドクターの役割を果たすということです。

 

スマホのアプリで、AIと対面してフェイスタイムみたいに話をする。

ロボットじゃなくて、本当に人間としゃべっているのと同じインターフェイスで。

 

AIは、患者の表情筋や声のトーンまで全部読み取ってデータを蓄積していく。

 

AIのドクターと人生を歩んで行って、人生の最期が見えてきたとき、そのAI ほど患者のことを理解している存在って他にない状態になる。家族だって及ばないですよ。

 

がんになったときに「はじめまして」の医師よりもずっといい。

人間の医師がいなくなるとは思わないけど、手術や研究など、人間が得意な方に集中していくと思う。

 

西:なるほどですね…。

それは私たちにとってはショッキングですが、一部には同意します。

医師の役割は徐々にAIに置き換わっていくでしょう。

 

幡野:医師の役割である診断・治療・薬の処方って、いわば統計ですよね。

データの蓄積から最適解を導き出すのは、コンピューターの方が圧倒的に得意。

 

医師は、AI 化に反発して抵抗してほしくないなと思う。素直に役割分担してほしい。

 

安楽死のことを、医師は知識として知ってるかもしれないけど、考えている人が少なすぎる。

議論してる人もいない状態。

 

そんな人と最期の話なんてできない。

 

AIなら、今後の見通しだって、患者が聞きたければ聞きたいタイミングで気兼ねなく聞ける。

「いま知りたいでしょ」って促す会話だって、AIのほうから持ちかけてくれるかもしれない。

 

医師は「患者に絶望を与えちゃうかもしれないから」と、今後の見通しを何も教えてくれないことがある。

総合的に考えると、AI の方がはるかにいいかな。

 

 

望む死の多様性

幡野:僕が、ライフサークル(スイスの自殺幇助団体)に登録したのは、寝たきりのところを息子に見せたくないからなんです。

せん妄状態とかも見せたくない。

 

西:それは幡野さんの価値観ですよね。

僕は逆に、子どもには見てほしいと思っています。

 

「人が死んでいくってこういうことなんだよ」って見せて死んでいきたい。

 

幡野:価値観って本当に人それぞれですよね。

多様な価値観に対応するために、選択肢の1つに安楽死があっていいんだと思う。

 

対談の風景をガラス越しに撮影する幡野さんの写真。

 

 

安楽死を選択肢にできるか?

幡野:いまの日本では、安楽死を選べないですね。スイスに行くのは自由だけど、スイスまで行って安楽死するのはハードルが高すぎる。

 

西:安楽死を本当に望む方がいるなら、その生き方は肯定されるべきだと思うのです。

ただ、そういった方がスイスに行くのはすごく大変。

結果的に、日本では生き方を肯定されない。

日本に、その手続を支援する民間団体があってもいいのかもしれません。

 

幡野:日本にいたまま安楽死するには、法制化しないと無理だと思う。

 

そうじゃないと、鎮静と同じで、医師それぞれの信条で変わってしまう。

患者にとっては、どんな医療者にあたるか「運」で決まることになってしまう。

 

西:たとえば、アメリカで、オレゴン州では安楽死(医師による自殺幇助)ができることになっている。

日本でも特区を作り、「この場所では安楽死できる」と定める方法も考えられるかもしれない。

 

幡野:それ、殺到するでしょうね。

 

西:とにかく、日本全国で合法化して、「誰でも明日から安楽死できますよ」となると、トラブルが多発すると思うんですよね。

 

「私は絶対に安楽死は行いません」と宣言する医師や、逆に意思決定のプロセスを経ず、安易に安楽死を行う医師が一定数出る可能性が高い。

 

特区であれば、専門のスタッフがいて、「安楽死とはこういうことで、あなたが希望しているのはこういう行為です」と専門家から説明したうえで、検討を進められる。

 

安楽死ができる施設の隣には、緩和ケアの精鋭がいる施設をつくりたいですね。

緩和ケアについても説明を行い、ほんとうに安楽死がその人の望むことなのか、患者・家族と検討を重ねていく。

 

2つの施設の医療者と、患者・家族が一緒に議論をできるとより良い。

 

ただ、どの程度の時間をかければ十分に対話を尽くしたと言えるのか―。それは課題だと思います。

1~2日で、その人が望むことなんて、他人がつかみきれるでしょうか。

 

かといって、1年とか2年をかけて対話をしないと安楽死できないとするのか―。それも現実的ではないでしょう。

その意味で、この案はまだ妄想の域を超えないと思います。

 

対談を終え、笑顔で見送る西先生と、お礼をする編集スタッフの写真。

 

 


●幡野広志(はたの・ひろし)

1983年、東京生まれ。2010年に「海上遺跡」で「Nikon Juna21」受賞。 2011年、独立し結婚する。2012年、エプソンフォトグランプリ入賞。2016年に息子が誕生。2017年多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。

公式ブログTwitter

 

●西智弘(にし・ともひろ)

川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター 腫瘍内科医。2005年北海道大学卒。家庭医療を中心に初期研修後、緩和ケア・腫瘍内科の専門研修を受ける。2012年から現職。現在は抗がん剤治療を中心に、緩和ケアチームや在宅診療にも携わる。「暮らしの保健室」など、院外にも活動の場を広げている。

Twitter

 

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

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1ちい2019年01月20日 08時35分

医師もみるところに載せてほしい
AIは大賛成

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