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2016年04月04日

診療報酬改定で4月から看護現場はこう変わる|インタビュー

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

2016年は2年に1度の診療報酬改定の年にあたり、この4月に様々な見直しが行われる。現場の看護師にとってどのような影響が出てくるのだろうか。改定の議論を行う厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)に、看護職の代表として昨秋まで参加していた福井トシ子氏(日本看護協会常任理事)にインタビューし、今改定のポイントについて聞いた(敬称略)。

(井田 恭子=日経メディカル)

 

日本看護協会常任理事の福井トシ子氏

「看護師の現任教育には今後、『病院の外でも通用する看護師』を育成する視点が必要になる」と話す日本看護協会常任理事の福井トシ子氏。

 

――今回の改定の内容をどのように見ていますか?

 

福井 急性期病床の絞り込みと、病院完結型から地域完結型の医療への移行を誘導するという点では、前回(2014年度)改定の方針を踏襲した内容ですが、これらの実現に向けて、医療現場により一層の改革を促す改定となっている印象です。

例えば、一般病棟で用いられている「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の要件の厳格化。手術や救急患者の受け入れ実績も評価項目に新たに加わり、重症患者の少ない病院などでは7対1病棟の維持がいよいよ厳しくなるのではないでしょうか。

 

――7対1病棟の看護必要度を維持する目的で、重症患者をICU(集中治療室)から一般病棟に移す病院もあると聞きます。

 

福井 一般病棟にドレーン挿入者や人工呼吸器装着者が大勢いる煩雑な環境を改め、安全性と医療の質を担保するためにICUやHCU(高度治療室)を整備してきた歴史があるにもかかわらず、本末転倒な動きです。現場の看護師、そして何より患者さんにしわ寄せが来るのではないかと懸念しています。

仮に一般病棟に重度者を入れるのであれば、7対1よりもさらに手厚い看護配置は必須であり、また、医師を巻き込んで周術期管理に関する徹底したスタッフ教育を行うことも欠かせないでしょう。

 

――病棟看護師の負担軽減策としては、看護補助者との業務分担の内容が明確化されました。

 

福井 4月以降、病棟内で看護職員が行っている書類・伝票の整理・作成の代行、診療録の準備などを看護補助業務の一部として、正式に任せていいことになります。事務作業の多い看護管理者には有り難いでしょう。

もっとも、どこの病院も看護補助者の採用には苦戦しています。現実的には、既に病棟で働いているクラークを看護補助者とみなして体制を構築する方が容易であり、それにより、「急性期看護補助体制加算」や「看護補助加算」などの加算が算定しやすくなるのではないでしょうか。

 

――「看護職員夜間配置加算」の評価の拡充も、現場の負担軽減の観点で見逃せません。

 

福井 そうですね。例えば40床の7対1病棟を2人夜勤体制で回したとしても医療法には抵触しませんが、現実的には2人で入院患者さんの安全を守るのは難しいでしょう。とはいえギリギリのスタッフで回している病棟の場合、3人体制にすると、夜勤のいわゆる「72時間ルール」(看護職員1人当たり月平均夜勤時間数が72時間以下であることが求められる入院基本料の要件)のクリアが難しくなるなどの問題がありました。

 

今回新たに評価された「看護職員夜間16対1配置加算」は比較的算定しやすい点数であり、これを原資に採用を増やすなどすれば勤務環境の改善が可能になります。夜間の看護補助者の配置も評価されたので、「看護師2人+看護補助者1人」で体制を組んでもいいでしょう。

 

もっとも、看護補助者については前述の通り日勤帯の採用でさえ厳しく、ましてや夜勤ができる人となると、そのなり手は期待薄です。看護補助者の夜間配置が評価されても、現実的に算定が進まないことも懸念されます。

 

――夜勤については、「72時間ルール」の見直しに関しても中医協で議論が紛糾しました。

 

福井 はい。最終的には計算式が見直され、7対1、10対1を除く13対1や15対1などの入院基本料を算定する病棟において、月当たり8時間以上の夜勤時間数の看護職員も、月平均夜勤時間数の計算式に含めてよいことになりました。病院経営者の間から、規模の小さい病院を中心に看護師の慢性的な不足により、72時間ルールを満たせないという声が挙がっていたことを受けて見直されました。

しかし要件緩和により、1カ月の夜勤がこれまで70~80時間だった看護職員が90時間の夜勤を課せられるようになるなど、実質的な労働強化になるのではないかと危惧もしています。

 

退院患者宅への病院看護師の訪問を評価

――一方、地域完結型医療への移行という観点では、入院患者の在宅復帰を促進するため退院支援の取り組みが評価されました。例えば、一般病棟向けに新設された「退院支援加算1」では、退院支援業務を行う看護師または社会福祉士(MSW)の病棟配置を要件として求めています。

 

福井 現在は、院内に地域連携室や退院支援室が1カ所あって病院全体の退院調整をしている病院が多いと思いますが、より実効性を高めるために、退院支援・地域連携業務に専従する看護師またはMSWを各病棟に専任配置することが評価されました。2病棟まで併任でき、入院早期に退院が困難な患者を抽出して退院支援計画を立案し、病棟看護師らと共同して退院調整を実施することなどが要件になっています。

 

今後は看護師が、介護保険制度や地域の福祉資源に関する知識をもっと身に付ける必要性が出てくるのと同時に、それらに関する専門的知識を持ったMSWとの連携が一層求められるようになるでしょう。

個人的には、定年した看護師を再雇用し、セカンドキャリアとして退院調整業務を担ってもらうのも一法と考えます。患者とのコミュニケーション力に長けていますし、ケアの熟練者が病棟にいることで若手看護師教育にもつながり、二重三重の効果があるのではないでしょうか。

 

――退院直後に、入院医療機関の看護師が患者宅を訪問し、療養指導することを評価する「退院後訪問指導料」の新設も目を引きますね。

 

福井 悪性腫瘍の患者さんや、人工呼吸器や中心静脈栄養など各種デバイスを装着して退院する患者さん、中重度の認知症患者さんなどに対して、退院後1カ月間に5回までの訪問が診療報酬上で評価されるようになります。この間に訪問看護師に必要なケア技術を移転することで、在院日数短縮化と再入院予防を図るというのが国の狙いでしょう。

例えば、重症小児に対応できる訪問看護はまだまだ少ないので、NICU(新生児集中治療室)を退院する児の在宅での受け皿整備には、この仕組みが有効に機能するように思います。

 

「認知症患者さん宅に5回訪問したからといって何ができるのか?」という疑問の声も聞かれますが、病棟の看護師が一定期間、在宅の現場を見ることで、より現実に則した退院指導ができるようになる効果があるものと捉えています。「報酬をつけるから、地域を看る能力を養うために病院の看護師にもっと動いてほしい」というのが、国のメッセージなのではないでしょうか。

機能強化型訪問看護ステーションの整備ももちろん重要ですが、一方で訪問看護師の確保が大きな課題となっています。既に病院の看護師が在宅に積極的に出向いて、看取りを行っている地域もあることから、在宅看護における病院と訪問看護ステーションの機能の再配分という考え方も、今後検討が必要になるでしょう。

 

――そのほかに、押さえておくべき看護関連の改定項目は?

 

福井 一つは、「認知症ケア加算」の創設です。身体疾患の治療で入院中の認知症患者に対する病棟での取り組みを評価するために新設された加算で、院内で認知症ケアチームを構成することなどが要件となっています。当協会も要望していた加算であり、現状を改善するための手段として活用できると思います。

そのほか、看護関連の技術としては、「リンパ浮腫複合的治療料」「排尿自立指導料」の新設や、一定の知識と経験のある看護師による「認知療法・認知行動療法」の実施などが新たに評価されました。

 

――2年後には、介護報酬改定と診療報酬改定のダブル改定も控えています。2025年に向けて求められるのは、どのような看護師でしょうか。

 

福井 地域包括ケアシステム構築に向けて、医療機関の機能分化と連携のさらなる推進の流れは今後も変わらないでしょう。

看護師の現任教育プログラムはこれまで、「院内で役割を発揮できる看護師」の養成に主眼を置いてきた病院が多いと思いますが、在宅復帰促進の観点から、今後は「病院の外でも通用する看護師」を育成する視点が必要でしょう。地域の訪問看護ステーションや介護施設などと連携を深め、ケースカンファレンスなどを通じて退院後の生活まで見越した医療提供のあり方を共に学ばないといけません。

 

これからの時代は、食事・睡眠・排泄など生活の基本に関わるケアに強い、暮らしのことが分かる看護師が求められるのではないでしょうか。それには、フィジカルアセスメントをきちんと学び、生活の場で肺炎や脱水の有無、認知症の悪化など適切に判断してかかりつけ医に第一報できるような知識や技術も欠かせません。

「病院の中だけで守られている看護師なんてあり得ない」という時代は確実に訪れます。どこでも通用する看護師になるために、そうした能力を現場の看護師の皆さんにぜひ習得していただきたいと思います。

 

※2016年度診療報酬改定の詳細はこちらを参照。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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