動脈疾患の理解に重要な動脈硬化と大動脈のしくみ

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』より転載。
今回は動脈硬化と大動脈のしくみについて解説します。

大久保愛
新東京病院看護部
恩田香織
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

動脈疾患はどんな疾患?

動脈は大きく分けて、太い大動脈と細い末梢動脈に分けられます。動脈は、全身に血液を送り出すために高い圧がかかっているため、血管壁に負担がかかったり、加齢や生活習慣に関連して血管壁が硬化したり脆弱化(ぜいじゃくか)すると、さまざまな疾患を起こします。これらを動脈疾患といいます(図1)。動脈疾患は急性と慢性に分けられます。

急性動脈閉塞症は動脈が急に詰まってしまう疾患です。

慢性動脈閉塞症は、動脈硬化や炎症によって四肢の動脈が狭窄・閉塞するものの総称です。代表的な疾患として、閉塞性動脈硬化症(ASO)や閉塞性血栓血管炎(TAO)があります。

図1代表的な動脈疾患

代表的な動脈疾患

★1 大動脈瘤
★2 解離性大動脈瘤
★3 急性動脈閉塞症
★4 閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)

 

疾患理解のポイント

急性動脈疾患は有症候性(症状があること)、慢性動脈疾患は無症候性(症状がないこと)が多いので注意しましょう。

 

治療のポイント

急性期の場合は死に直結する場合もあるため、早急な治療が必要となります。

 

看護のポイント

動脈疾患では血圧管理が重要になります。場合によっては安静も必要になります。治療後は生活習慣の改善を行いましょう。

 

動脈硬化のメカニズムと引き起こされる疾患

動脈硬化とは、加齢とともに血管壁が厚く・硬くなった血管内にコレステロールや脂肪が蓄積し、部分的に狭くなることで血管のポンプ機能がはたらかなくなる状態をいいます。

動脈は内側から、内膜、中膜、外膜の3層でできています。内膜は、内皮細胞という細胞に覆われており、血液が固まるのを防いだり、血管を拡げるなどのはたらきを担っています。動脈硬化は動脈に傷がつき、その部分に脂肪やコレステロールがたまることで起こります(図2)。

図2動脈硬化のメカニズム1)

動脈硬化のメカニズム

※1 内皮細胞
★1 心筋梗塞(MI)

 

動脈硬化の分類

動脈硬化は発症部位などにより、大きく以下の3つに分けられます(表1)。

表1動脈硬化の分類

動脈硬化の分類

 

動脈硬化の危険因子

動脈硬化の原因は1つではなく、いくつかの危険因子が重なると発症しやすくなるといわれています。

おもに5つの危険因子があり(表2)、危険因子を多くもつ人ほど、動脈硬化の進行が早まります。なかでも、高血圧脂質異常症(高脂血症)喫煙は3大因子ともいわれています(図3)。

表2動脈硬化の危険因子

動脈硬化の危険因子

★1 メタボリックシンドローム

 

図3生活習慣と動脈硬化の関係2)

生活習慣と動脈硬化の関係

 

大動脈のしくみとはたらき

大動脈は、心臓の左心室から出て大動脈弓部を通り、全身へ血液を送り出します(図4)。心臓から上に行く大動脈を上行大動脈、そこから頭や手に行く動脈として腕頭(わんとう)動脈、総頸(そうけい)動脈、鎖骨下(さこつか)動脈があります。


心臓から下に降りるようにして横隔膜まで行く動脈を下行大動脈と呼び、上行大動脈から大動脈弓部を経てここまでが、胸部大動脈となります。さらに、横隔膜の下から足のほうに伸びていく大動脈が、腹部大動脈になります。

大動脈の区分と灌流域は表3の通りです。

図4おもな大動脈

おもな大動脈

 

表3大動脈の区分と灌流域

大動脈の区分と灌流域

 


[memo]
  • ※1 内皮細胞(上へ戻る
    血管の内膜内に存在する。血管を拡げたり、血液凝固を防ぐはたらきがある

文献

  • 1)アステラス製薬株式会社ホームページ:動脈硬化のメカニズム.(2019.09.20アクセス)
  • 2)セルフドクターネット:生活習慣病とは?.(2019.09.01アクセス)
  • 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
  • 4)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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